012エレファント_ソング

#012「エレファント・ソング」

グザビエ・ドラン監督のmommyが良かったので、すぐに観に行った。
ドラン自身が希望して、俳優として主演している作品です。

とにかく全てのディスコミュニケーションが悲しかった。
誰も自分の胸の内を話せなくて、ずーっと会話をしているんだけれど、たった一つのことが言えない。ただ、助けて。と、言えない。
そういうことって積もり積もって誰の間にも沢山あって、世の中の悲しいこととか救われない気持ちってこうだよね。と、映画の間中ずーっと思う。物理的には言おうと思えばどんな言葉も言えるけれど、どう言っても伝わらなかったり、言ったことで自己嫌悪になったり、相手を困らせたりする気持ちが働いて言えない。とか。

ずっと言いたかった事とか、ずっと聞きたかった事を我慢して、一人で苦しんで、それこそ10年とか20年という時間が経ってしまうと、カチコチに固まって歪んで、もう言いたくないこと、聞きたくないことに変化してしまう。という教訓があって、万に一つ40年経つと溶けるのかも知れないけれど、そんなことは無さそうで、今更溶けても辛い。
そのことに関しては、もう考えることを辞めてしまった諦めの手触りだけが残っていて、出来るだけ思い出したく無い。というもの。きっと誰にでもあるよね。もう時間が経ちすぎて、解決も無くて、誰とも分かり合えないし、自分とも分かり合えない領域。ちょっと書いてて追い込まれてきた。

で、映画は、最後に夫婦が、かつて乗り越えられなくて諦めてしまったものを、別の悲しみに直面したことで、もう一度乗り越えようとして終わるのだけれど、わたしは本当に、なんて人間て悲しいんだと思った。
そんな残酷な方法でしかないなら、乗り越えられないで欲しい。と、思った。

この映画は、なんか悲しい!!だけが強烈で、珍しく観た後あれこれ考えなかったので、あれ、あんまり面白くなかったのかな。とか思っていたけれど、そういうこと(私にとってはパンドラの箱)か。と、今分かって衝撃。マグニチュード6越えてきてるね。震源地近いね。という感じ。疲れた。

映画ってやっぱり凄いな。引っ張り出される。そして、ドランは凄い。この上でmommyなのか。
新文芸座のオールナイトで、今月27日に9時間ドラン漬け(いつもに増して長い!!) 5本立てだそうですよ。凄ーく行きたいけれど、怖くて躊躇するなぁ。生きて帰って来られるかしら。