#017「ダージリン急行」
兄弟、姉妹の記憶は偏っていて、圧倒的に子供の時の記憶に支えられている。仕事で成功したり、家庭を築いて父親になったりしても、社会的な肩書きが全然通用しない。
いつまでも子供同士みたいなところがあって、兄弟の絆を取り戻すぞ!とか言っちゃうダメダメな長男とか、あいつには秘密だ。と打ち明けた話は、次の瞬間に全部話しちゃったり、微笑ましい一方で本人たちはうんざりしている。
でも、大人になったのに全然変わらない兄弟とのけんかや、ちっとも成長しない兄や弟を見て、結局は自分の変わらなさにも居心地の悪さも感じて、でも、そうやって肩書きを剥がされて、日常の生活から遠く離れてこその旅だ!と、思う。
いつも、ウェス・アンダーソンは列車が好きなんだなーと思う。
電車に乗るのは好き。自分が止まっていても、どんどん進むから、安心してぼーっとしていられる。電車に乗ってとりとめもない考えごとをすると、その考えもどこかに辿り着ける気がする。
旅に出るのは、きっと帰る日常があるからだし、自分や価値感が変わった気になっても、結局何も変わらなかったり、またがっかりする様なこともあるけれど、それでも、何度でも旅に出れば良いし、何度でも日常を繰り返せば良い。
今はただ、荷物を捨てて走り出すのだ。