雨が降って来た。駐車場に止めてある白いセダンの車にある鞄からアンは、ビニールのカッパを取り出して、袖を通して元の位置についた。
「そこ、ちゃんとやって!」
「一台、行くよー。誘導して!」70歳くらいの男性が声を荒げて言う。
「あのおじさん、ほんとうるさい」最近は言った若い学生のアルバイト生が言った。
「いいから、ちゃんとして」ここでよく働いている誘導のもう一人の人が言った。
ステーキハウス駐車場の車の誘導も夜の8時にもなると来る車も少なくなって来た。仕事もそろそろ終盤だ。
「足ダルー」少し歩き難くそうにしている誘導のもう一人の男性が言った。そして続けて
「足が悪くて、休もうしたら俺らなんて、じゃあ仕事やめろって言われる。あの爺さん、あの歳でなんでいつまで働いているんだろうと思った。あの爺さんも頑張って働かないと駄目なんだよ」
「どうして?」とアンが訊くと、
「あの爺さん、息子がいるんだけど引きこもろりで爺さんが面倒見ないと駄目らしい」
雨は横殴りの風と共にアンたちの身体に直撃する。時間まで耐えるアンたち。
そんな人たちに視界も入らない、ステーキ肉を食べて満腹げに店から出て車に乗ろとしている人たち。
アンは、ある日スーパーに寄った。
駐車場で日に焼けた車の誘導をする人を見かけた。その人の人生もまた、そこにあるなだな。
アンは車を降りて、店に向かいながらそう思った。
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