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遺品整理をするということ

随分思い悩んだが、やはり実家を処分することにした。その準備のため、実家の遺品整理や自分が住んでいた頃に残した家財の整理をして、例年以上に猛暑だった 8月をバタバタと過ごした。

遺品整理と言っても、押し入れやタンスに入っているものを取り出して、残すもの、残さないものを決めながら、右にあったものを左に動かす的な作業がほとんどだが、それでも、何十年も使ってきた(仕舞い込んできた)家財量の多さに加え、自分の心が納得するように仕分け作業をしていると思いのほか時間がかかってしまうものだった。ある遺品整理の指南サイトを見ていると「最後は時間切れで諦めることも大切」と書かれているようだし..

実家は、両親が他界してから空き家にしていた。ただ仏壇はそのままにしていたので、祖母の代から(或はその前からかも)何十年も付き合いのあるお寺のご住職には毎月参りに来てもらっていて、少なくとも月に一度のその日は実家に帰ることを続けてきた。

玄関の鍵を開け、もう誰の声も聞くことはできないと分かっていながら「ただいまっ!」と言って部屋に入ると、生前父母が住んでいた頃と同じ実家の匂いがする。その匂いが好きだったし、なんとはなしに気持ちがすっと落ち着く場所として好んできたように思う。

とは言え、人が住まなくなった家をいつまでもそのままにしておくわけにもいかず、一度、不動産会社に処分方法について相談したことがあった。還暦を過ぎた頃から体調不良が続き、人生初めての入院&手術することにもなり、この先自分もいつどうなるか分からない、動けるうちに自分の手でなんとかする方がよいだろう、と思い始めたことがきっかけだった。

TV-CMで流れている大手不動産会社に行き何度か話をしたが、話しをするうちに、その対応に不信感がつのり始め、そのときは処分する決心がつかなかった。
どちらかと言えば、実家を失くすことの寂しさが、決心できずにいた大きな理由だったかもしれないが..

それから数年。古い家のため傷みが急に進み出すこともあるだろうし、遅かれ早かれ処分する日が来るなら早い方がよいだろうと思い始め、もう一度処分について考えることにした。昨今の猛烈な台風が直撃すれば屋根が飛ばされるかもしれない..など古い家故の心配事が多くなってきたこともあるし..

相談する業者選びから再び始めたが、特にアテがあるわけでもなかった。郵便ポストに入っていたダイレクトメールの不動産会社に問合せようとも思ったが、前回のこともあり、リスクが大きそうなため一旦保留。先ず、今住んでいる自宅を購入した工務店に相談してみた。新築だけでなく中古物件を扱う事業も展開しているとのことで、担当者と何度かやり取りした結果、この工務店に引き取ってもらうことで話が進んだ。

家財整理をしていると、祖父母や父母は、確かにこの家で精一杯人生を過ごしていた、そして自分自身もここで育ったんだ、ということが今更ながらによく分かる。特に遺品整理は故人が使っていたモノを単に片付けるだけでなく、モノに触れることで、この家で故人と過ごしてきた時間が自然と思い出され、自分の気持ちを整えさせてくれる作業であることに改めて気付かされた。

引渡し日までに、なんとか自分の気持ちを納得させる形で家財整理を済ませることができた。ただ、押し入れに仕舞い込まれていたアルバムはその場で分別できず、持ち帰ることにした。

アルバムを見ていると、これは誰だろう?と思うものから、自分が赤ちゃんの頃のものまで多種多様多量にある。
こうした紙の写真だと、家族が積み重ねてきた時間のある瞬間を切り取った目に見えるものとして後世に引き継がれるんだな、と今更ながらに気づかされる。
そして、スマホに撮り貯めた写真や SNS に投稿した写真だけになると、もし自分がこの世にいなくなれば、その瞬間にデジタルゴミとして忘れ去られるか、ネット上で彷徨い続けるのだろうな.. と余計なことも思ってしまう。

変色しかけた白黒の古い写真を一枚一枚手に取り、父母の若い頃は意外にシュッとしたスタイルでなかなかの美男美女?だったのかも.. 祖母も若い頃は結構活発に行動していたんだ.. 子供の頃に両親と旅行したのはどこだったんだろう.. と心の時間を巻き戻しながら分類整理して、残したいものはスキャン保存するなど、後世の人が手間にならない形で引き継げるようにだけはしておこうと思う。(後世の人が引き継ぐかどうかは、後世の人に一任ということで^^)

以上


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