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ベトナムの田舎でおばあちゃんに出会った話

おはようございます。
おび はるです。


私が留学生だった頃、
調査でベトナムのとある村に
通っていました。


1999年のことです。
めったに外国人なんて来ない場所。
かなり警戒されてました。


それでも何とか慣れて、
少しだけ村の人とも
打ち解けた頃に、


あるおばあちゃんに
「帰る前に、ウチに寄ってよ」
と声をかけられました。


何だろう?と、
恐る恐る、でも声をかけてもらったのが嬉しくて、
イソイソと行ってみると・・・


おみやげに持参した
竜眼という果物を


ドンドン食べながら
話し始めるおばあちゃん。


「昔々ね、私は小さな食堂を
営んでいたの。


そう1945年くらいね。
日本兵がね・・・」


と話し始めたので、
ギクっとしました。


第二次世界大戦で、
日本はベトナムにも進駐。


期間は1944〜45年と短いですが、
そこで食糧政策に失敗して、
大量の餓死者が出ています。


ベトナム発表では
その年200万人が餓死。


あのベトナム戦争でも、
犠牲者の数は15年間で
約800万人ですから、


1年あたりの死者は
ずっと少ないです。


どれだけすごい
被害だったかが伺えます。


(この数字自体への議論もありますが、
ここでは取りあげません)


ベトナムの村を回っていると、
時々当時の話を
聞くことがありました。


このおばあちゃんも、
飢饉で大変な目に
あったのでしょうか。


おばあちゃんの話は続きます。


「・・・日本兵がね、
ここにもやって来たときに
私の食堂にも来てね、


ここは今日から日本軍の食堂だ!
って言ったから、


毎晩夕飯を作ってあげていたのよ。
お代は必ず払うからって言われて
信じて何ヶ月も作っていたんだけれど、


結局日本は戦争に負けたでしょ。
逃げるようにいなくなってしまって。
お金も1ドンも払ってくれなかったのよ」


「そうでしたか・・・。」


「まあ、あのお金はあきらめるしか
ないんだろうなあって思っていたのよ。


だけれどね、日本人がこの村に
来たって聞いたからね。


日本政府に、請求書を送りたいの。
あの時の料金、もう50年以上


経っているから利子もつくじゃない?
結構いいお金になると思うのよね」。


飢饉の話じゃなくて、
少しホッともしましたが


ちょっと面倒な話かも。
そんなこと、できるのかな。


ボンヤリと一個人として生きていて、
突然、国と国の歴史的な
問題を出されると、焦りますね。


脳味噌をフル回転させて、
何とか答えたのが、


「おばあちゃん。日本軍はお金を
払わなくてひどかったですね。


おばあちゃんの気持ちは
もっともです。
日本人として、申し訳なく思います。


ですが、日本は一応ベトナム政府に
賠償金を支払ったと聞いてます。


国と国との間のことは、
それで決着がついたことになってます。


なので、請求書を送っても、
お金を払ってもらえないかも・・」。


おばあちゃんは、
ウンウンとうなずいて、


それでも全く引かず、


「でも、せっかくだから送りたいな。
だって、生きているうちに、
また日本人に会えたんだから。


もし送ってみて、返事がなかったら
仕方ないと思うわ。


でも、一度送ってみたいのよ。
送るだけで記念になるから。


あなた、日本に帰るでしょ?
帰ったら手紙を日本政府に
送ってくれない?


あなたは郵便ポストに入れる
だけなんだから、簡単でしょ。」


と言うので、私も断れず、
手紙を後日受け取る約束をして、
受けてしまいました。


それから3ヶ月後。
調査を終えて、何とか日本に帰国。


しばらくして落ち着いた頃に
おばあちゃんの手紙を思い出し、


翻訳して、自分の連絡先を
窓口として書いて、


宛先を調べて、
外務省宛に恐る恐る送りました。


やっぱり返事は来ませんでした。
1年待って、一応おばあちゃん宛に


報告の手紙を書きましたが、
手紙が無事届いたのかもわかりません。
おばあちゃんからも返信はなく。


この時期になると、
(終戦記念日からは
少し経ってしまいましたが)


あのおばあちゃん
どうしているかなと思います。


第二次世界大戦で
日本兵が海外でしたこと。


歴史としては学びますし、
飢饉のことを覚えている人への


インタビューに
同行したこともあリました。
あまりに悲惨な話でした。


ですが、おばあちゃんの話では、
飢饉の話は出てこなくて
(実際にはあったと思いますが)


日本兵が食堂で
時々歌を歌っていたとか、


ご飯を大量に食べるから、
作るのが大変だったとかいう話が出て、


こんなところまではるばるやって来た
日本の人たちの姿を、
初めてリアルに想像しました。


おばあちゃんいわく、
食堂に来ていた人たちは陽気で、
礼儀正しかったし、


お金を払ってくれなかった以外は、
楽しかったよ。


でも、お金が大事だけれどね!
払ってもらわないと困るのよ!
そこが礼儀正しくなかったね!


とのことでした。
その通りですね。


やっぱり平和がいいなと心から思います。


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いかがだったでしょうか?

また明日!
今日も素敵な一日を♪

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