（*かなり批判です）「WISH」見てきました

ディズニー作品はあまり見ないんですが、賛否両論なのと話題の（？）マグニフィコ王がどんな感じなのかな？ということで映画館に足を運んでみました。
結果は…正直「うーん…」が多い映画でした…。
なので、この記事はかなり批判が多いです。
あとネタバレありまくりです。

◇いいところ

いきなりこき下ろすような真似は何なので、まずは良いと思ったところを書きます。

◎ワンス・アポン・ア・スタジオ

これは本当に素晴らしいです。ディズニー作品をあまり知らない自分でも、歴代のキャラがわちゃわちゃしつつ記念撮影！という内容はとても楽しめました。思い入れのある人なら感激もひとしおなのではないでしょうか。
一度失敗、そこから！のという流れが好きです。失敗するのがグーフィーなのも好きです。グーフィーかわいいよな。

◎声優陣

主演の生田絵梨花さん福山雅治さんの声は、演技も歌も違和感もなく聞けました。アーシャの声は活発で可愛らしく、マグニフィコ王の声は頼りがいのある王様そのもの。
歌うと福山雅治みが増すんですが、そこはあの声が個性でもあるので難しいところです。
山ちゃんは安定の山ちゃんでした。いや本当に安定感がすごいこなみ。

◎「無礼者達へ」

これが歌われているシチュエーションと相まって最高の曲です。
実は本編鑑賞前に、Youtubeで一部聞いたんですが…てっきり自己紹介シーンかと思ってました。
全然違いました。そりゃ皆マグ王好きになるわ。

◇「うーん…」なところ

ここからは批判です。分量もかなり多いです。
この作品の大ファン！という人は回れ右推奨。

一言でいうと「チグハグな映画」です。
あらゆるものがズレています。

◎テーマ

この作品のテーマはこちらです。

「願いは誰かに頼って叶えてもらうものじゃない、自分で叶えるものだ。そして願いは個々人のものだ」

なるほど確かにその通りです。
これを主張している者が「魔法の力でやりたい放題できる存在にノー努力・ノーリスクで懐かれている」点を除けば。

つまり、よりによって主人公がテーマと完全に矛盾してます。
しかも、対になるマグニフィコ王は故郷を滅ぼされてから自力で魔法を習得・一代でロサス王国を建国・賢王として君臨とこちらの方が余程血の滲むような努力をして結果を出しています。
これおかしいと思わなかったんでしょうか？？

テーマのうち「願いは個々人のもの」という部分は？
上滑りしてると思います。
マグニフィコ王＆ロサスのシステムvs主人公の主張という形で描かれますが、マグ王側が(一応）筋の通った説明をするのに対し、主人公側は「こんなのダメだよ！願いは皆のものだよ！」と叫ぶばかりで何のカウンターにもアンチテーゼにもなってません。
最後は返ってきた願いを皆で「わあ幸せ」と体に取り込んで終わり。
スクリーンを見る私の表情はチベットスナギツネみたいになってました。

*ロサスのシステムと合わせて考えても、矛盾や疑問がかなりあるんですが…長すぎるんでまたの機会にします。
この映画、考えるほどにおかしな点が出てきてキリがないです。

◎安直すぎん？

主人公のアーシャですが「なんか歌ったら上手く行く子」です。
歌手になりたくて頑張ってるとかそういう背景も特にないです。
いやミュージカルだからと言われればそれまでですが…歌ったら魔法の妖精が降ってきた！歌ったら王様の悪事を信じてもらえた！歌ったら皆のパワーで大逆転！
こんな展開の繰り返しなのでいくら何でも安直すぎん？もうちょっと主人公の力で解決するとかあったやろ…。
クライマックスも感動のシーン！ってことなんだろうけど、結局歌っただけ？で全く乗れませんでした正直。

◎致命的なシーン

終盤の「革命だ！」と仲間達が盛り上がるシーンで唐突に王妃登場。
やべえバレた！？からの
「私も革命に参加よ！！旦那は悪い奴だったのよ！！」

えぇ？えぇええええ？(大困惑)

実はここまでは安直だなあ…強引だなあ…ぐらいで見てたんですが。あまりの破壊力に心がポッキリ折れました。以後のシーンはただただ事務的に咀嚼するような気持ちで見ていました…。

何故ここまで大困惑したかというと。
ド直球ド真ん中に「お前が言うことじゃねえ」な物言いだったからです。

王妃が掌返しする理由が見当たりません。
冒頭からここまで、王妃がマグ王を嫌ってる描写もないし、マグ王が王妃に後ろ暗いことをしている描写もないです。
確かにワンマンだったり邪険にしたり…というシーンはあります。
しかしロサス建国以前から連れ添ったパートナーをアッサリ捨てるほどか？というレベルです。

加えて、ストーリーの流れ的にマグ王が闇落ちするきっかけを作ったのが王妃の進言になってます。

マグ王：禁書に手を出しかける
↓
王妃「それは危ないわ！国民に協力を仰いだらいかが？」
↓
マグ王「うむ…そうだな」
↓
だが国民は王に甘えるばかり
↓
マグ王「もういい！禁書でも何でもやってやる！！」

…という流れなので、自棄になって禁書に手を出したのは（間接的にしろ）王妃の言葉が一因です。
しかも、王妃はマグ王が闇落ちしたのは禁書の力だと知っています。っていうかご丁寧に「禁書の力に取り込まれるわ」と説明しちゃってます。

ここまでの流れを踏まえ、言うことが「旦那は悪人だったのよ！」
自分を棚上げした上で何故か夫を悪人に仕立て上げてるおかしな人です。
多少のご都合主義や矛盾はあっても良いと思うのですが、ここは映画のキモです。
流石にキモで盛大にやらかされてしまうと気にせずにいられません。

◎キャラクター

全体的に薄味です。
マグニフィコ王は確かにいいキャラだと思います。
ですが、「考察」に助けられている部分が多いです。
本編の描写だけだと、そこまで丹念に描き込まれてるという印象は受けませんでした。
というか、主人公含め他のキャラがあまりに薄味すぎてマグ王が結果的にキャラ立ちしてしまったというのが実のところでは…。

主人公側に圧倒的に描写が足りてません。

・主人公アーシャ
本当に主人公？ってぐらい薄いです。
お爺ちゃんの願いを叶えてあげたいと奮闘する…のはいいんですが、こんなのおかしいよ！王様は間違ってるよ！願いは大事願いは大事！と自己主張を繰り返すだけ。
でもストーリーにはしっかり甘やかされてる。主人公補正で「正しい」ことにされ「勝利」する。
この子に共感しろ？無理です。

・7人の仲間
オマージュのために7人も入れて、案の定持て余してます。
「喋ってるだけ」の子もいるし、裏切る子も裏切る動機やそもそもキャラを印象付ける描写がないんで「ああなんかデカい奴いたな。裏切ったのか」ぐらい。
メインの子に絞るべきだった。明らかに本末転倒です。

・スター
なんなんだこいつ。
何故主人公を助けるのかも語られず、なんか魔法で楽しいショーや悪戯を繰り返しほらかわいいでしょ！ってだけの子です。
いかにも物語のキーパーソンと言わんばかりに登場しますが「マグ王に不安を与える」以上の役割はないです。

・ヤギ
山ちゃん。以上だ。

・王妃
テメーはダメだ。
いやマジでこの人が一番不快感が強いです。理由は既に述べた通り。
っていうかこの人もほぼキャラ描写はないです。
マグ王相手になんかお淑やかに接したりオロオロしたりぐらいです。
なので終盤の掌返しっぷりが際立ってしまったのだと思います。
聞いた話だと、初期の構想ではマグ王と合わせてダブルヴィランだったとか。
もしヴィランだったら夫を用済みとばかりに切り捨てるのもわかります。初期設定の名残だったんでしょうか？
何故残したという話ですが。

対してマグニフィコ王は冒頭から「WISHゼロ　-マグニフィコ王一代記-」のような形で語られ、過去のトラウマ・ロサスのシステム・闇落ちの過程・破滅まで一本筋が通っています。
もうこの人主人公でよくない？

◇じゃあどうすればよかったの？

色々言いましたが、そこまで大工事は必要ないと思います。
少し変えるだけで違和感は大分緩和されます。

◎スターとの関係

「スターに認められるためには何らかの試練や努力が必要」
スターの力を使うためワンステップ設けることで、タナボタ感が減ります。
また、一応努力でスターの力を得ているので「願いを自力で掴んだ」形になります。

◎ロサスのシステム

「願いを差し出すことは周知の事実」「どんな願いを差し出すかは任意」
これら2つの設定を削除。
一番のネックなので。
この設定があるせいで「王様に騙された！って君ら半分同意の上だろ？」と首を傾げてしまいます。
知らないうちに願いを奪われ、しかも奪う願いも王に都合の悪いものだった！とした方がロサスの闇とマグ王のヴィランっぷりが増すのではないでしょうか。
むしろ何故やらなかったのか大いに疑問です。

◎「革命だ！」シーンの王妃登場

「禁書でおかしくなった王を救いたいの。協力して」
王妃とアーシャは面識があり、王妃はアーシャに期待していたことも描かれています。更に禁書の危険性も認識しているので、アーシャと仲間達に王の心を救うことを頼む。
(自画自賛で何ですが）自然な流れになるのではないでしょうか。
少なくとも「私も夫は悪人だと思ってたわ！！」とか言い出すよりは。

◎ラストの王への台詞

「暫く休息が必要ね」「少し頭を冷やしたら？」
やむなく懲らしめはしたものの、夫を完全に見捨てたわけではない。
自暴自棄になってしまった気持ちも理解はしていた…という形になります。
「地下牢へ(ﾄﾞﾔｯ)」→「女王様ばんざーい！！」の流れがあまりに邪悪過ぎたので。

◇まとめ

本音100パーでいうと「ストーリーはまあ無難でチラホラ矛盾もあるけど…ってぐらいだろう。ミュージカルとマグ王だけ楽しかったらいいや」ぐらいで見に行きました。

結果顔面ストレートでぶん殴られ心が折られこんな長文を書く羽目になりました。