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君はかつて学研の科学でやっていたTRPG「ドラゴンハンター(たぶん)」を知っているか


*この記事はひとしろ氏主宰の「TRPGなんでも Advent Calendar 2022」に向けた記事です。


https://note.com/hitoshiro/n/n77c82507d26a


https://sngsn.hatenablog.com/entry/2022/12/07/072051

*個人の記憶を元にしているため、間違いが多々紛れ込んでいる可能性があります。
思い出話としてお読みいただければと思います。ご存知の方がおられましたら、ご指摘いただけると幸いです。

遡ること80年代。
学研の「○年の科学」で唐突にTRPGの連載記事スタートし、実際に独自システムのゲームも配布してました。
とはいえあまり大ヒット!という感じでもなく(数ヶ月で終了)、ドマイナーな記事なんで軽くググっても情報が見つかりません。
なにぶん○じゅうねんまえのことなので、記憶も所々曖昧です。
もし知っておられる方がおられましたら情報頂けると!
っていうかゲームのタイトルすらうっすらとしか覚えてません。たぶん「ドラゴンハンター」で良かったと思うんですが…。
というわけで、今回はこのTRPG記事と配布ゲームとはいかなるものだったか?をつらつら書いていきます。

それは突然に

時は1980年代後半。ドラクエが社会現象になり、世間にRPG=ロールプレイングゲームというものが知られるようになった時代。
いつものように学研のおばちゃんが持ってきてくれた「○年の科学」をペラペラ読んでいると、こんなタイトルが目に飛び込んできました。

「ドラゴンハンター」

何これドラクエの親戚?とページをめくると、そこにはTRPGのルールブック…ではなくファンタジー漫画が載っていました。
そう。この連載記事、ゲームの導入部分を漫画で数回連載→続きは配布ゲームで!という形だったのです。
学研の科学は月刊誌。つまり肝心のゲームがプレイできるのは数か月後。

ストーリーはこんな感じ。

とある王国を邪竜「キングドラゴン」が襲撃し、姫が攫われた!
王は姫の救出とキングドラゴン討伐のため、三人の勇士を選抜する。
ナイト・武士・忍者である(*個人名はなし)
勇士たちは、モンスターが蠢くダンジョンに潜入する。次々襲い来る敵を倒しつつ、キングドラゴンの巣を目指す。果たして姫を救うことができるか!?

正直当時からしてもかなりオーソドックスというかベタな内容でした。
あと西洋ファンタジーな世界観なのにナイト・武士・忍者って3人のうち2人がモロ日本です。せめて魔法使い入れるとかさあ…。
漫画のクオリティは悪くなかったと思います。作画もしっかりしてて、書き込みもかなりリアル。少年漫画というより、海外ゲームのイラストみたいでした。ここら辺もTRPGの雰囲気を再現しようという意気込みが感じられます。
ただ、キャラデザがかなり渋い…悪く言えば地味でした。
それに加えて、PC三人も殆どキャラ付けがされていません。
全編通して一言二言程度しか台詞がなく、大半がモンスターをやっつけてるシーンだけです(ページ数が2ページぐらいしかなかったので)
1話に出てきたMOB兵士(姫を助けようとしてキングドラゴンにやられる)の方が余程出番も台詞もあってキャラが立ってるというのが何とも。
(ここら辺はTRPGのPC=PLという形式上、あまり強いキャラ付けができなかったという事情もあると思います)

漫画だけでなく、TRPGの紹介記事もしっかりありました。
「TRPGとは何ぞや?ドラクエとは違い、ボードゲーム形式で遊ぶRPGだよ!海外ではよく遊ばれていて、ダンジョンズ&ドラゴンズっていうゲームが有名なんだ!」
…てな感じでD&Dのメタルフィギュアの写真が載ってた記憶があります。
小学生相手にちょっと濃ゆくないか?と思わなくはないですが、自分はこの記事でD&Dというゲームがあるらしい…と知りました。

そんなこんなで勇士達はキングドラゴンの巣に到達! さあ最終決戦だ!
というところで「続きはゲームで!」となります。
続きはゲームで!といっても、キングドラゴンとの対決から始まるわけではなく。よわくてニューゲームです。

肝心のゲームは?

簡単に言うと「すごろく+ゲームブック」
小学生が相手なので、あまり複雑なルールはありません。
サイコロを振って数値比べというぐらいです。

詳細はこんな感じ。

コンポーネント

プレイヤー駒(ナイト・武士・忍者)
エネミー駒
イベントチップ
ステータスカード(プレイヤー・エネミー)
マップ(ヘックス)
シナリオシート

ゲーム進行

  1. スタート地点に駒を置き、6面ダイスを振る。
    出目の数だけマップを進める(出目以内なら移動範囲は自由)

  2. 止まったマスに対応する「イベント」を起こす。
    シナリオシート参照(マスに対応したイベント内容が書かれている)

  3. イベントの結果でステータスを変化させる等処理を行う

  4. これをゴール(キングドラゴンに勝利)まで続ける

イベント

止まったマスには「イベント」が設定されている。
内容はイベントシートを参照。イベントは強制的に起こる。
種類は結構バリエーションが多い。「人に出会う」「何かを発見する」「モンスターと遭遇(後述)」等。
イベントが起ったマスには「イベントチップ」を置き、終了済みであることを示す。イベントチップが置かれたマスに進入してもイベントは起こらない。

戦闘

イベント「モンスターと遭遇」が起こると、モンスターとの戦闘になる。
モンスターのステータスと、自分のステータスを比べる。多い方が勝ち。
→勝利
ステータスレベル」を1つ上げる
→敗北
モンスターのコマをマスに置き、プレイヤー駒を1マス下げる。
(*下がった先でイベントは起こらない)
ステータス「レベル」を1つ下げる

数値処理などはかなり単純で、「レベル」というステータスを上げ下げするだけです。ステータスは固定値+レベル比だったと思います。
小学生でもその場で計算できるぐらいに簡単にしてあります。

良かったところ

なんと言ってもルールが簡単なので、すぐに始められます。
ルール把握が苦手(&小学生)な自分でも、ざっと目を通してすぐに始められました。
ドラクエとはちょっと違う雰囲気・世界観でPCになりきって遊べるのは楽しかったです。
シナリオシートを見ながら進めるので、一人遊びOK。ぼっちに優しい設計。
GMがシナリオシートを管理すれば、GM+PL3人でも遊べます。
シナリオシートを自作すれば、オリジナルのゲームも作れます。
ステータスカードも、升目にいくつか数字が書かれてるだけのシンプルなもの。小学生でも自作可能です。PCやエネミーを増やすことができます。
シンプルな構成で拡張性も高い。なかなかに侮れないものです。

ウーンなところ

シンプルゆえにハマりやすい。
例えばどんなモンスターが出るかは運ゲーなので。
序盤で強いモンスターに当たりレベルダウン→次のモンスターにも勝てず更にレベルダウン→最低レベルでマップをうろつく羽目に
ということが起こります。起こりました。

レベルがシビア。
このゲーム、レベルがかなり重要なんですが、戦闘やらイベントやらで簡単に下がります。戦闘はまだしもイベントは完全に運かつ強制なので、理不尽にレベルを下げられることがあります。

戦略性に乏しい。
一応PCはナイト・武士・忍者と3種あり、ステータスも異なっていたと思います。
ただ、戦闘が単純な数値比べなのであまり意味がなかったような。一番かっこいいキャラを選んでね!ぐらいの。
加えて先に述べた通り運の要素が大きいので、「ものすごくラッキーじゃないとボスまで辿り着けない」ということが多々あります。
ある程度運の要素があった方が面白いと思いますが、あまりに運ゲー過ぎると「自分の力で切り抜ける」感覚がないのですごろくと変わらず。
ここら辺はルールの複雑化との兼ね合いがあるので難しいところですが。

つめあと

正直企画として大成功とは言い難かったんだと思います。
数ヶ月で連載終了というのを考えても。
ファミコンゲームぐらいしか知らない小学生相手にTRPGを紹介するという時点で敷居が高く渋過ぎたと言わざるを得ないです。

そんなわけで、当時のキッズにはあまり刺さらなかったであろうこの企画ですが。
それでも私の心に爪痕を残してくれたものではありました。
ファミコンとは違うゲームがこの世に存在する。その一端を味わえることができたという点で、私の人生に結構な影響を与えたと思います。
散々ツッコんできましたが、「TRPGを子供にも遊びやすく」という工夫は随所に感じますし企画者の本気度は伝わります。
爪痕を刻まれた者として、企画者の方々には敬意を表したいです。
これがなかったら違う人生を歩んでいたかもしれない。
「踏み外さなかった」という意味かもしれないが。

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