UIから生まれる盲目

スマホと二人三脚

電車に乗っているときにふと思ったことだが、電車に乗ってから降りるまでの間、起きている人の大半はスマホをいじっている。

誰かから来たLINEに誰かに返信したり、スマホゲームで暇つぶしをしたり。各々が目的地につくまでの間、スマホを使って時間を消費している。

こんな当たり前のことを、スマホから目を離して顔を上げたときに気付いた。

そういえばこの前、前日に充電を忘れていたせいで会社からの帰りにはもうスマホの電池がなくなってしまった。電車の中ではやることがないので、ただぼーっと突っ立っていたが、こんなに家まで遠いのかと感じてしまった。もはやスマホなしでは時間の使い方が分からなくなっているようだ。

それくらい我々の生活にスマホは入り込んでいる。スマホと二人三脚というわけだ。

それと同時にもうひとつ当たり前なことに気付いた。

どんな仕組みで動いているかはよく知らない

大半の人はそんなこと気にも留めていない。スマホ、特にスマホアプリの仕組みなんて知らなくても、電話は掛けられるし、天気予報も見れるし、目的地のルートも案内してくれる。

要は使えればいいわけだ。

しかもよほど機械オンチじゃない限り、教えてもらわなくても感覚的に操作できる。

googleマップを開いて、どこに住所を入れたらいいか迷う人は少ない。それどころか、途中まで入力すれば、googleマップのほうから「ここじゃないですか?」と提案(サジェスト機能)までしてくれる。至れり尽くせりだ。

こういった感覚的な操作を可能とするもの(ここでは感覚的UIとでも呼称しておく)は、同時に怖いとも思える。

知らない間に誘導されている

感覚的UIというやつは、操作に対する障壁を限りなく下げてくれる一方、そういう操作をするよう誘導されている場合もある。

例えばスマホアプリの画面を設計する場合、利用者の操作感を良くするため、画面デザインだけでなくその画面への導線(経路)も考慮しなければならない。

そして、使いやすさに加え、必ず達成させたい行動(Webマーケティングの世界でコンバージョンと言ったりする)がある。

ネットショッピングのアプリであれば、最終的に商品を購入させるところまで持っていきたい。そのために、おすすめ商品を出してみたり、購入までにかかる画面遷移の回数を減らしたり。こちらが理想とする操作に近づけようと様々な工夫がなされている。

ひどい場合には、途中で操作をやめたりしないよう、「戻る」や「中止する」ボタンを無くしたりする場合もある。

こういった1つの目標達成のため、設計時の涙ぐましい努力が裏にはあるが、利用者目線だとそういう操作をするよう強いられている。

知らない間に情報が抜かれている

ついこの間の日経新聞の一面に、Cookieを使ったWebアクセス解析を顧客の同意なしに実施することを規制するような記事があった。

Cookieってなに?って人もいるだろうが、簡単に言えばWeb上のあるサイトを訪れた際に勝手につけられる名札のようなものだ。それを使えばサイト上でどのような動きをしたか、その名札を尾行すれば分かるようになる。

最近問題になった、就活生の内定自体率を販売していた問題もこの仕組みを利用した話だ。

ここまでやられると気持ちの良い話ではなくなってくるが、現実で起きている話だ。

問題は「よく知らない」ということ

そもそもそんな仕組みも知らずにスマホをパートナーとしている人がとても多い。

もちろんスマホに限った話ではなく、普通の据置きPCやタブレット等でも当てはまる話だ。

私はWebサイトやスマホアプリを設計する仕事をしているが、やはり、顧客をいかに誘導できるか、いかに情報を取れるか、といったことを考えている。

足で稼ぐ昔ながらの営業マンも、お客様のことを考えて作戦を練り、世間話などをしながらお客様の好みを把握し、アプローチをし掛けて商品を買ってもらう。

これも営業マンがお客様の情報を手に入れ、商品購入まで誘導しているが、これと同じことがまさに今起きている。しかも気付かないうちに。


二人三脚のパートナーのことをよく知らない、というのは怖くないだろうか








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