見出し画像

【覚えている人がひとりでもいる限り、「なかったこと」にはならない】

すう、と膨らませた肺に、新鮮な朝の空気が流れ込む。背後には、川の流れる音。さらさらと穏やかな音をたてて、高きから低きに流れる。
キセキレイの子どもが、水を飲みに岸辺に降り立つ。その上空を、1羽の鷹が低く舞っていた。食う、食われる。流れ、流される。至極ありふれた光景を他人事のように眺めながら、すぐ横でたゆたう水槽の金魚を、ちらりと見やった。安全な囲いと、圧倒的支配。果てしない自由と、死が隣にある日常。ヒトは、この両者の境界線の上に立っている。どちらの幸福を欲するかにより、同等のリスクも背負う。幸福だけを享受したいと誰もが思うのに、その願いは叶わない。

ここから先は

2,849字 / 3画像
いつもより深めのエッセイ、創作インスピレーション、創作小説等を月4本以上、ランダムにお届けします。記事単体での購入もできますが、月2本以上読まれるのなら定期購読の方がお得です。丁寧に想いを綴っていきますので、よろしくお願い致します。

少し深めのエッセイ。創作にまつわるエピソード。時々、小説。 海の傍で生きてきた私のなかにある、たくさんの“いろ”と“ことば”たち。より自…

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。 頂いたサポートは、今後の作品作りの為に使わせて頂きます。 私の作品が少しでもあなたの心に痕を残してくれたなら、こんなにも嬉しいことはありません。