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「真珠女」1話【ビンタ/無職】


真珠女 あらすじ

キャバクラで働いていた奈帆
匿名掲示板で誹謗中傷を受け、精神を病み
「心療内科に行ってしばらく休め」
と、店長に言われ退店した。

引きこもり生活の中
SNSで涼に出会い、強く惹かれ執着していく。

涼の言葉で一喜一憂し、孤独を恐れ
深い海に沈んでいく奈帆が
愛を手に入れるまでの物語。

以下「真珠女」本編

【ビンタ】

何度も平手打ちをくらった右頬が痛い。葵の柔らかくて湿った右手が私の首を強く締める。
「死んじゃうよ?」
殺されたっていい、私の生死は葵が決めるんだ。

冷たくて暗い海の中。世界は私を1人にした、何度優しさに触れても絶望した。
憂鬱を愛し底の知れない暗闇を泳ぎ続けて、肺が潰れるまで潜水していく。

【無職】

時給が高いという理由だけで働き始めた水商売にどっぷりハマり、売上ランキング上位をキープしていた頃、私は匿名掲示板で誹謗中傷を受けていた。
最初は顔も見えない他人から、ブスだの枕営業だの死ねだの言われても「モブが騒いでる」くらいにしか思わなかった書き込みに、私が住んでいるマンション等の事実が混ざり始めて、誹謗中傷しているのが顔の見えない他人だけではない事を知った。関わる人間全員が私の事を憎み嫌い、私の発言行動全てに苛立っているんだと妄信し、店の非常階段から飛び降りようとしたところをボーイが見つけ「心療内科に行ってしばらく休め」と店長に言われそのまま退店した。現在無職のまま5ヶ月が過ぎようとしている。

心療内科には一度も行かなかった。夜職の人間関係を全て断ち切り、無限にある自分時間、丸1日ぶっ続けで狩猟ゲームを周回し、1日眠る。自堕落な生活で私の精神は回復していき、無職生活を楽しんでいた。
ゲームの集中力が切れてくると布団に入りSNSで世間の様子を伺うのがルーティンで、私をボコボコにした掲示板に「あの店は風紀だらけ」と書いてやろうと思った事もあったけど、私を誹謗中傷していた奴らと同じ土俵に立つ事になると思ったら吐気がする。実際私が知る限りあの店に風紀はなかった。それでも私が風紀だらけだと書けばリレー小説のように誰かが便乗し、きっと話しが膨らんでいく。火のない所に煙が立つのがネットの世界なんだと思う。

そろそろ寝るかと思って布団の中でSNSを開き、流れてくるショート動画を永遠と眺めていた時、涼を見つけた。
白い肌に子犬のような顔、くしゃっと笑うイケメン。
普段フォローしているインフルエンサーやモデル、美容アカウントやネイリストにコメントやメッセージを送った事は1度も無かったのに、好奇心で涼にメッセージを送った―――。

#創作大賞2024
#恋愛小説部門

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