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寒くても死にたくならない

寒い。寒すぎる。数日前まで暖かくて穏やかな日が続いていたというのに、急にこの寒さである。寒い日は辛くて苦しい気持ちで身体中がいっぱいになる。人生は生きてるだけで辛いから、取り除ける苦しみは出来るだけ取り除きたい。

大学4年生の時、「寒いと死にたくなる」というタイトルのブログを書いたことがある。どんなことを書いたのか今でははっきりと覚えていないけれど、寒くなると「眠いな」とか「お腹空いたな」と同じくらいのテンションでごく自然に「死にたいな」と思ってしまう、というようなことを書いた気がする。あの頃は寒くなくても死にたくて、寒くなると本気で死にたくなった。
全ての苦しみをキャンバスにぶつけるようにして卒業制作を描いていた。授業に出ていなかったから教授に会うことはほとんどなかったけれど単位をもらって卒業することができた。卒業したというより見逃してもらったという言い方のほうが正しいかもしれない。就職活動なんてもちろん出来たはずもなく、卒業後はニートになることが確定していた。
卒業後の春休みに、学内で行われる卒業制作展とは別にゼミの有志のメンバー達で展示会を開くことになっていた。ほとんどのメンバーが今までに描いた作品の中から気に入ったものを選んで展示するようだったが、私はこのために新しい作品を描くことにした。これからの自分の理想の人生を描いた。「私の夢」というタイトルで、本に囲まれた暖かい部屋で女の子が犬と一緒に布団にくるまっている絵だ。この作品は私の一番のお気に入りになったけれど、コロナウイルスの影響で展示会は中止になり、作品は誰にも見てもらえなかった。私は大学4年間で一度も学外で展示会を行わなかった。そもそも真面目に授業を受けてなかったし、やる気がなくてダメな学生だった。

それからもうすぐ2年が経とうとしている。また、冬が来た。私は目標だった大型書店の書店員になって、普通に悩んだり普通に笑ったりしている。寒い中、外に出るのは辛くて苦しいけど、死にたいとは思わない。ここまで立ち直ることが出来たのはたくさんの人に助けられたから。本と羊の店番になって出会った人たちだ。その人たちに出会えたのはあの日迷わず行動した自分がいたから。「本と羊で店番がやりたいです!」と迷わず言った過去の自分を褒めてあげたい。自分の行動次第で人生はいくらでも好転するということをこの2年間でたくさん知った。そのことが今の私の大きな自信になっている。そして、自分にはその行動を起こす力があるということも。
やる気がなくてダメなところはずっと変わらないけれど、未来の自分が暖かい部屋で楽しそうに暮らしているところを想像するだけで、ちょっとだけ頑張れる。人生頑張る理由なんてそんなものでいい。これからまだまだ人生は長いから、また生きるのが辛くなることがあるかもしれないけれど、きっとまた立ち直れるような気がする。もう寒くても死にたくならない。春はもうすぐそこ。

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