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shinri313
翳し、散る。弾ける。
1. 散る。
彼の写真を月に翳してみる。
朧気にも、その心を見透かせないかと考えていた。
誰でも包み込んでしまうような優しい雰囲気に小さじ一杯の哀愁。周囲の人を一目で惹き付けてしまう彼。
真面目で寡黙。容姿端麗だが伏し目がちな彼。
眼鏡の奥の彼の眼は、よく見ると微かに昏い。
水底のように。宇宙のように。
見れば見るほど深く、そこには未知の世界が広がっていた。
「…。」
月の光が眩しい。
結局その日、彼の心やその未知に潜む何かを見ることは叶わなかった。
いつか知れたらいいのに。
淡い期待は誰にも言わず、星とともに夜空へ散らした。
2. 弾ける。
太陽に彼女の写真を翳してみた。
彼女のほうが眩しく見えるのは、きっとこの眼鏡のせいだ。…知らんけど。あんま自信ないけど。
裏も表もない、というのは彼女のことだと思った。
どこまでいっても真面目でポジティブな彼女。
優柔不断なところもあるが、それを含んでもなお真っ直ぐに目を見つめてくる彼女。
彼女の眼は澄んで明るい。
春の日向のように。鳥が巡る青空のように。
「…。」
さっき買ったサイダーをひとくち飲む。
気づけば炭酸は抜けて、ぬるくて甘いジュースになっていた。
彼女への淡い期待は心の中でしゅわりと弾けて、青く爽やかな音を立てていた。
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