【名盤紹介】稀代のジャズピアニストの祖国を想う 『Luys I Luso 』

 どうも、はるねこです。
今回の名盤紹介は、ティグラン・ハマシアンの『Luys I Luso』というCDのお話をします。 

 皆さん、ティグラン・ハマシアンというピアニストをご存じでしょうか。ティグランは1987年生まれのアルメニアのジャズピアニストで、19歳の時にジャズコンペの登竜門ともいわれるセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで大賞を受賞した若き名手といえるでしょう。
 ジャズをよく聴く方ならご存じの方も多いと思いますが、ジャズ以外にも今年9月に公開されたオダギリジョー監督の映画、「ある船頭の話」の劇伴音楽を担当したことも、日本では話題になったそうですね。当の私は全く知らず映画も見てないので、今度見てみようと思っております。

 話は戻って 『Luys I Luso』についてですが、このCD はアルメニア20世紀初頭のアルメニア人の大虐殺から100年の節目として発表され、アルメニアの5世紀からの宗教音楽を現代的な讃美歌として掘り起こすというテーマのもと制作されています。5世紀頃のアルメニアの宗教音楽を再現したというコンセプト通り、モダンジャズとも捉え難い、煌びやかなピアノの音色と静かで重厚な合唱、エスニックな雰囲気を感じられます。
 楽曲によっては複数のアレンジが存在していて、ピアノと合唱の通常アレンジ、ピアノメイン、合唱メインとそれぞれの描く情景の違いも楽しめます。
 コンセプト通り全体のテイストは重々しく、しかしながらその中に光明も見いだせる、一聴の価値のある作品です。
 私の個人的お勧めのナンバー、4曲目の《Hayrapetakan Maghterg》、6曲目の《Hayrapetakan Maghterg》、10曲目の《Voghormea Indz Astvats》なんかは特に好みの曲でよく聴きますね。

 ティグラン・ハマシアンというピアニストについても、もう少し触れておきます。彼はアルメニアのギュムリという町に生まれました。2018年には、For Gyumriという故郷にちなんだアルバムも発表しています。3歳の頃にはツェッペリンやディープパープルを聴いていたという彼の音楽は、ジャズやロックの他、フォーク、ソウル、アルメニアをはじめとする多くの宗教音楽等、多様な音楽を内包していて、ジャンルに囚われない多彩なプレイスタイルが魅力の一つです。いろいろな音楽を聴くアーティストはごまんといるでしょうけど、彼ほど学んできた音楽の歴史が演奏から汲み取れるアーティストはそう多くないと思います。

 ときに、最近はジャズというジャンルの輪郭が滲んできているなぁと感じることが、ままあります。ティグランなんかもその一つの例で、一聴しただけではジャズとは感じにくい音楽も、多くの作品がジャズとして世に出ています。ジャズという言葉が「ジャンル」から「概念」みたいなものに変化しつつあるのかなぁなんて、若輩の私は何とはなしに思うのでした。

 それではさよなら、また今度。

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