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惑星のかけら 2011

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世界が滅びる夢を見つづけてきた少女の旅の物語。 20年ほど前から、すこしずつ書き直しては手を止めて、書き直しては手を止めて。これは2011年3月のバージョン。
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#龍

026

芳明の風景 その『声』が響いたとき、僕は見た。洞窟に差し込んでいた光がまぶしさを増したのを。
 一体なんなのだ。どこから聞こえているんだ。
 これが、彼女の言う『声』なのか。
 大きな岩の上から注がれている光は、岩を明るく映し出しはじめた。岩の影が背後に映し出されたとき、僕は彼女の腕を取った。
「頼むよ、ひかり」
 僕はそう言って、彼女の腕を掴んだまま出口へ向かって歩きはじめた。彼女はもちろん抵抗

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027

FILE 正体 天から降り注ぐ光は変わらず大岩を照らしていた。
「世界を滅びに導いたものの正体、それをお前は知っている。そのことを認めてこなかっただけだ。だが、お前はそれを既に知っている」
「知っている? わたしが?」
「お前の世界は、お前のこころの投射でできている。なぜこれほどまでに世界は歪んでいるのか、お前はその答えをずっと探していた。
 それは、人々のこころが望んでいるからだ」
「望んでいる

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028

芳明の風景「世界を滅びに導いたものの正体、それをお前は知っている。そのことを認めてこなかっただけだ。だが、お前はそれを既に知っている」
 鍾乳洞の中で聞こえてきた『声』は、僕らにそう告げた。
「僕が、それを知っている?」
 僕らは大岩の前で立ち尽くしていた。
「それよりも、あんたは誰なんだ?」
 闇の中の光は、そっとその力を弱めてしまい、洞窟の中は真っ暗になった。目を開けても、閉じても、その違いが

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