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One Day Series(リリカルなのは)

以前に運営していたBlogで「魔法少女リリカルなのは」の二次創作小説を
書いていました(2007~2010頃)。分野はニッチ(苦笑)な
「ヴィヴィはや=高町ヴィヴィオ×八神はやて」、
公式終了時点(三期)から10年後、
はやてさんが三十路、ヴィヴィオさんが16~18設定です。
なのフェ=なのは×フェイト 前提の世界観、
はやてさんが捜査司令、ヴィヴィオがその部下、という世界設定の
「スピンアウト」。
もし興味がありましたら、三編のショートを纏めてありますので
お付き合い頂けたら幸いです。
なお、本作は一ファンの創作であり、公式とは全く関係のないこと、
作中の恋愛関係は作品には描かれていないことを
ご理解戴きたく存じます。

One Day

空が澄み渡るほどに晴れている。
透明すぎて、余りにも。
少しだけ悲しくなってくる位に。

「……どうしたの?窓際にいつまでも立ってると冷えちゃうよ」

その言葉と一緒に、私の肩にふわりと舞い降りたもの。

「……ありがと、フェイトちゃん」

聞き慣れた優しい言葉と、カーディガン。
そして、それを掛けてくれた人の温もりが、そこにはあった。

「空、青いよね」
「うん……。今日は晴れているから。少し寒いけどね」
「……あのね。変な事、訊いてもいいかなぁ」
「何?言いたい事があるなら何でも聞くよ、なのは」

私の言葉に、聞き慣れた優しい言葉が返された。
その柔らかさに少し心を解(ほぐ)された様に感じて。
そして、

青の向こう側に行ってみたいって、思った事、ある?

そう尋ねたら。
紅い瞳が、困った様に薄く笑った。
小さな笑い声以外は、言葉を告げぬままで。

「多分ね……。贅沢病みたいなものだと思うんだ」
「……うん」
「……先にね、離れてしまいたいって思っちゃうのかも。
 離れていってしまう前に」

私の言葉に返事を返さぬままに、長い腕がそっと伸ばされる。

「……私はここにいるよ。ずっと一緒に。
 なのはが嫌だって言っても。離さない、絶対に」

そう一言告げて、私を抱きしめる腕の力が強くなった。
その腕に、自分の手をそっと乗せる。

「……それ、私の台詞。フェイトちゃんの方こそ、
 すぐにどこかへ行っちゃうじゃない」

それ、言われると弱いんだけどな。

生真面目な顔が、私を背中から抱きしめたままで、
苦笑いを浮かべたのを感じた。
金色の髪が軽く揺れる。

「……なのは」
「……なぁに?」
「行こう?青の向こうに」
「……え?」

私にそう告げると、フェイトちゃんは腕を解いて
隣の部屋へと向かって歩き出した。

   * * *

"だからって、飛行許可、わざわざ取ったの?良く取れたね"
"それは提督権限で。後は名高い空戦魔導師・高町教導官のコネだね"
"嫌だなぁ。何それ。私まで巻き添えなの?魔力、私的行使の"
"巻き添えって……それ、私のほうだと思うんだけどな"

空を翔びながら交わしていた無音の会話を、私は一度停めた。
それから軽く息を吸って、

"……ごめん、ね"

再び告げた念話に、念話は返されずに。
隣を飛ぶ人の顔が近づいてきた。

「……んっ……」

"……こんなところで、するかなぁ?普通"
"普通じゃないから、いいんだよ。……そうでしょ?今日のなのは、は"
"……そう、かも。……ありがと、フェイトちゃん"

私の返事を合図にするかの様に、暫くの間、
私とフェイトちゃんは風に身を任せた。
上昇気流に乗って、雲の近くまで飛翔する。

風が、頬を刺すように吹き過ぎていった。

"どうする?昇ってみようか?雲の上に"

告げられる無音のメッセージに、頭上を仰ぐ。
巨大な積乱雲が高くそびえる、天蓋を。

"……ううん。いいの。もう帰ろ、フェイトちゃん"

告げたメッセージに頷き、金色の光が私を抱(いだ)いて、下降を始めた。

 
  


なのは と フェイト ...and Vivio・Hayate としての習作 
   シーン描写



OneDayAfter


「こりゃまた、豪勢な出で立ちやなぁ」
「……あ、はは……」
「え、えと……。こ、これはね、はやて。その、事情がっ……」

伝説の3エース。その一人の自宅に他の二人がご訪問。
それ自体は問題なんて無い。無いどころか、大歓迎なんだけど。

「あの……。よろしいでしょうか?お三方」

「ん?なんや?ヴィヴィ」
「「……」」

どうしようかな、と思ったんだけどね。
やっぱりこのままじゃ、まずいと思うんだ、普通は。
だから。

「とりあえず、玄関に入ってください。それから……。
 解除した方がいいと思うんだけど。バリアジャケット」

そう告げた私の言葉に、なのはママとフェイトママが顔を赤くして頷いた。


     * * *


「……そら、『愛の逃避行』未遂事件ちゅうこっちゃなぁ」
「ち、違うよ!私達がそんな事する筈ないじゃない、はやてちゃん」
「そうだよ、はやて。私達も責任ある職務に就いているんだからね」

苦笑いを冗談で誤魔化す様に話すはやてさんと、
必死に弁明する「母二人」。
その三人が座る応接セットへ、私はトレーに乗せた紅茶を持って近づいた。

「……どうぞ」

「あ、ありがとう、ヴィヴィオ」
「う、うん。作法が板に付いてきたね。落ち着いた対応だ」

「……二人は落ち着かない様子に見えるんだけどな」

「「あ、はは……」」

私の言葉に苦笑いする二人の前にティーカップを差し出してから、
私は一度小さく息を吸った。
そして、一瞬だけ、はやてさんの瞳を見つめる。
黒い瞳は、黙って見つめ返してくれた。
それを見取ってから、

「……ごめんなさい。なのはママ、フェイトママ」

そう言ってから、二人の瞳を見つめ、頭を下げる。

「え?……どうしてヴィヴィオが謝るの?」
「そうだよ。謝ることなんて何も無いんだよ、ヴィヴィオが」

「……なら。ありがとうございます、かな?」

「「……え?」」

二人そろって疑問系。見事なユニゾンだ。
……からかっている訳じゃない。むしろ心が痛いんだよ、少しだけ。
そう思って、はやてさんの顔を見つめた。
私の視線を受け取って、一度頷いてから、
はやてさんが私の言葉を引き取る様に、言葉を繋いだ。

「……ご心配いただいてるの、分かっとるつもりです。
 せやから、ありがとう、なんですわ。
 ほんまにありがとうな、なのはちゃん、フェイトちゃん。
 黙って見てくれはって、ずっと。感謝しとります」

はやてさんはそういって、自分の膝に手をおいて頭を下げた。
私もそれに合わせて、もう一度頭を下げる。

「……心配は、してないよ。していないって言うか……
 していると言えば、しているんだけどね」

「つまりね、はやて。『取り越し苦労』だって、
 なのはも私も分かっているんだ。私達こそ、ごめんね」

なのはママが言葉を告げ、フェイトママがそれを引き取る。
その後、少しの間、部屋に沈黙が流れた。

それから、4人みんなで顔を見合わせて。

「……ふ、ふふ……」
「あははっ……」

何だか可笑しくなって、みんなで笑った。
勿論、本気で可笑しいと思った訳ではないのだけれど。
笑っていたい。そう思ったから。
そして、はやてさんも。きっと、ママ達も。
同じ気持ちなんだ。そう思った。

「ねえ、ママ達はこれから用事とか、あるのかな?」
「うん。急ぎの用事はないよ。大丈夫だよね?フェイトちゃん」
「そうだね。今日はとりたてて急ぎの用件はない。帰るだけだよ、後は」

私の問いに、二人が微笑んで答えを返してくれる。
その言葉を聞いてから、

「じゃあ、一緒に晩ご飯食べようよ。いいですよね?はやてさん」
「あたりまえや。今ゆおうとおもたんのに、先越されてしもたわ。
ヴィヴィに」

私が告げた言葉をはやてさんが引き取り、締めてくれる。
「私達も手伝うよ」と言い張る二人の母を制して、
私は、はやてさんとキッチンに向かった。

「……ありがとう、はやてさん」
「なんや?私にはそんなん、ゆう必要ないやろ。礼なんて要らへんやんか」
「でも、言いたかったんです」

キッチンのシンクに二人並んで、そんな言葉を交わす。
その後ろから、小さな笑い声が聞こえてきて。

時計の青いシグナルライトが一度軽く点滅して、午後7時30分を告げた。


「なのフェイ」と「ヴィヴィはや」対比的シーン描写・習作


LightRing


「前から……ずっと不思議だなって思ってたんです」
「ん?何、思うてたん?」
「羽。はやてさんだけでしょう。……アインさん、以外では」
「ああ。でもな、飛行魔法なんやから。エフェクトなんやし。
 なのはちゃんのアクセルフィンと理屈はおんなじやで、私の羽」
「理屈・理論は分かるんです。でも……」

たまに、悲しくなるんですよ。
……なんでや?ヴィウィが悲しむ様な事、何もないやろ?
自分でもよく分からないんですけど。……例えば、詠唱を聴いた時とか。
……さよか。あれは静かやからなぁ、詠(うた)う時。

私の問いに答えた後で、黒い瞳が見つめる先が、ふっと遠くなった。
その距離だけは。……埋めることはできない。きっと、ずっと。
でも。それでも一緒に。

「職権乱用、してもらえませんか?捜査司令」
「……は?」
「……翔びたいんです、私達も」
「……なんでそんな事。お母さん達の真似かいな」

私の言葉を聞いて、はやてさんがふっと笑いをこぼす。
そして、

「しゃーないなぁ。……ええわ。惚れた弱みちゅうこっちゃ」

そう言って、通信端末に白い手を伸ばした。

   * * *

"……う゛~。さぶっ。ようこんなんで翔んだもんや。
なんつー物好きなんやろな、あんたの親御さん"
"相変わらず、ロマンの欠片もないし。まあ、いいですけど"
"そんなん、期待したて無駄やで?
酔狂につきおうてんやもん、それで堪忍したってや"

住宅街の外れまで、はやてさんの運転する車で移動した。
そこから夜空のランデブー、って程でもないけど。
とにかく、私とはやてさんは今、夜の空を駈けている。

"……寒いですか?"
"せやから、さっきからそうゆうとるやんか"
"それなら……"

無音でそう告げて「併走」する距離を縮めた。
そして、そのまま腕を伸ばして―

"あ?……て、うぁ……ちょっとヴィヴィ!"

慌て出す人を、組んだ腕で少し自分の方へと引き寄せた。

"……なに、しとんのや……ほんまに"
"いいじゃないですか。この方が暖かいんだし。誰も見てないし。 
嘘付いちゃ駄目ですよ。寒いはず、ないじゃない"

そうだよ。バリアジャケットを装着しているんだから。
この「防御魔法」に守られているのに、寒さなんて感じるはずが無いもの。
……意地っ張りだよね、相変わらず。 

"……ほな、さぶいんは心根のほうやな"
"何ですか?それ。意味分かんないよ。……謎かけ、好きですよね"

私が告げた「言葉」に、組んだ腕の先にいる人の唇が
ふっと笑いをこぼした。
宵闇に広がる巻積雲が深い碧を映して目の前に広がっているのが見えて、
夜風が、私達ふたりとすれ違う様に、前方から後ろへと吹き過ぎていった。

組んだ腕が少しだけ、引かれる。

"……ああ。いま時分でも見えるんやなぁ"

その念話に少し下に視点を落とした。

"……あ。これって……"
"光のベール、みたいやろ?"

返された念話に頷き、そのままリング状に光る雲を見下ろす。

"「巻層雲」でしたっけ。綺麗だけど、これが見えると……"
"お天気崩れる前振りてゆうけどな。ええやんか、綺麗なんやから"

見上げてきた空に拡がる波形の雲と、眼下に薄く光る丸い輪の雲の中で、
私にそう告げる横顔が綺麗で、綺麗すぎて。

"……はやてさん"
"なんや、ヴィヴィ"

こちらに向いた顔の頬へと、自分の顔を近づけた。

"……頬ですましたんのは、あんたの理性やと思うとくわ"
"ふふっ……足りませんでしたか?マム"
"あほう……帰るで、もう。ホンマにさぶなった気ぃしてきたで"

そのメッセージに頷き、中空から地上へと、飛行高度を下げていく。
ふたり、一緒に。
  

「もし、しんどいんやったらな。寝ててもええんやで」

ハンドルを操り進行方向を見つめたままの横顔。
その人が私に静かに声を掛けてくる。
車のヘッドライトと街灯の光が混じり合い、弧を描いて重なり合いながら、
フロントガラスからサイドへと、流れていった。

「いいえ、大丈夫です。はやてさんこそ、疲れてませんか?
 ゴメンなさい。勝手しちゃって、それに付き合わせちゃった」

私が返した言葉に、横で栗色の髪が軽く揺れる。

「阿呆やなぁ。嫌なら、あんなん、ようせんわ。
 したいからしとるんや。いっつもそないにゆうとるやろ?」

「……ありがとう。嬉しかったです、今日は」

返した言葉に、ふっと軽い笑みがこぼれる。

……分かっとらんのやなぁ。今日だけやないで。明日も、や。

柔らかい笑顔と一緒に、その言葉が私へと降り注いだ。
返す言葉も告げる事も、後はもう無くなって。

「うん。……でも、やっぱり。ありがとう、なんだよ。はやてさん」

横にいる人の左腕を一瞬だけそっとなぞって、
私はフロントガラスの向こう側に視線を戻した。

見慣れた灯が、進む先に微かに見えてくる。

車の室内、少し無骨なインストゥルメンタルパネルの、
スピードメーターの赤いランプがチカリと二回点滅して。
私たちを乗せた車が、スピードを少しずつ落としながら
駐車場へと進路を向けた。


 ヴィヴィオとはやての「未来」へ繋ぐ~習作,シーン描写。
一連断片の区切りとして。


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