涼を希《こいねが》う 【シロクマ文芸部|お題「夏の雲」参加記事】
夏の雲、その形が変わってきた。夏も終わりに近づいてきたというのに、今年はまだ入道雲を一度も見ていない。雨の降り方も変わってきたように思う。今日の午後、急に豪雨が降ってきた。弾丸のようにバチバチと音を立てながら、暴力的に大きな粒が地面へと打ち付け、小一時間でピタリと止んだ。
「もう少し長く降ってくれたら、涼しくなったかもしれないのに」
思わず零れ落ちた独り言は、雨粒に似ていた。
ピトっ。そんな擬音を立てるかのように、私の左頬に冷たい雫が当たる。雨粒ではない、ここは室内だか