見出し画像

今年行った展覧会ベスト3(2023年)


訃報

2023年もあと一ヶ月で終わりです。
今年忘れてはならない事は江戸絵画のコレクターとして知られ、2019年にはご自分のコレクションから多数の作品を日本に返還してくださった、ジョー・プライスさんがお亡くなりになった事です。奥様のエツコさんも後を追うように亡くなってしまわれました。忘れ去られていた伊藤若冲や鈴木其一が再評価されるきっかけをつくられた方でもあります。       合掌

ベスト3

「パリ・オペラ座ー響きあう芸術の殿堂」展 2022年11月~2023年2月    アーティゾン美術館

年をまたいではおりますが去年に引き続きアーティゾン美術館の企画展を入れました。
総合芸術としてのバレエを舞台美術や衣装、音楽などから、その魅力に迫ったもので、大量の展示物に圧倒されました。何と言っても私にとってはマネの作品を見れた事が大きかったです。

エドゥアール・マネ「オペラ座の仮面舞踏会」1873年 46.5x38.5 アーティゾン美術館蔵
エドゥアール・マネ「オペラ座の仮面舞踏会」1873年 59.1x72.5 ワシントン、ナショナルギャラリー蔵

そして、常設展には特集コーナー展示として、最近収蔵されたらしいマルセル・デュシャンの「トランクの箱」が何点か展示されていた。デュシャンは自分の作品のミニチュアをこの箱に入れて持ち運んでいたらしいが、その中に「大ガラス」を見つけた。大作の「大ガラス」はフィラデルフィア美術館にあるがそのレプリカは何と日本の東大駒場美術博物館にもあるのだ。これは、ある方に教えていただいて見に行ったが↓

マルセル・デュシャン「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」1915~1923(通称「大ガラス」)東大駒場美術館

誰も知らないような場所にひっそりと展示されていた。そして見出し写真にしているのが、そのミニチュアでグリーンボックスという箱にメモなどと一緒に入れている作品である。デュシャンというと難解というイメージで取っ付きにくかったが、この作品でちょっと親しみが湧いた。

土方久功ひじかたひさかつ柚木沙弥郎ゆのきさみろう」展
9月~11月 世田谷美術館

去年に引き続き、大人気の翁の展覧会が把握しているだけで3つあった。
まず1月~4月に古巣の日本民藝館で開かれた「生誕100年ー柚木沙弥郎展」
古民家を再生した会場に作品がよくマッチして、美術館の会場では味わえない雰囲気を醸し出していた。次は9月に日本橋高島屋本館8階ホールで開かれた「柚木沙弥郎と仲間たち」展、こちらは、柚木作品だけではなく共に切磋琢磨してきた陶芸家や染色家の作品や翁の愛用の品々も展示され、規模の大きな作品展となっていた。そして、極めつけが世田谷美術館のこの展覧会。土方久功(この方も初めて知りました。)という、第二次大戦中に植民地となっていた南洋の島に住んで絵や彫刻を制作し、日本のゴーギャンと言われた人物との二人展でした。
美術館の広いスペースに広幅布の注染が何枚も翻る様は圧巻でしたが、残念ながら撮影禁止。手作りの人形まであって、そのデザイン感覚には脱帽!

柚木沙弥郎「町の人々」2011年(絵葉書を複写)

また、並行して開かれていた「雑誌にみるカットの世界」展(8月~11月)が穴場的に面白かった。岩波書店の月刊誌「世界」と暮しの手帖社の主婦向け総合生活雑誌「暮しの手帖」の挿し絵が細かく年代を追って展示されているのだが、特に「世界」のカットは昭和を代表する高名な画家達の手によって描かれたものであることを知って、つい見入ってしまった。「暮らしの手帖」は、花森安治がほとんどのカットを手がけている。詳しい展示品目録まであって、世田谷美術館では、こういう地道な仕事もなさっているんですね。

「やまと絵ー受け継がれる王朝の美」展 10月~12月 東京国立博物館

去年の「国宝展」に続き、東博では大規模展が相次いでいる。これだけの規模のやまと絵展はもうできないだろうと言われているくらい国宝、重文ザクザクの凄さでした。東博さん、頑張りましたね‼ 混むのを覚悟で行ったけど④期の、平日の午後は思ったより空いていて、四大絵巻の内三つと地獄草紙、餓鬼草紙、三大装飾経、お目当ての日月四季山水図屛風(大阪・金剛寺)などをゆっくりと観る事ができました。これはベスト3に入れないわけにはまいりません。

番外編

今年は数えてみたら26の展覧会に足を運んでいます。
その中のベスト3ですから、見ていない展覧会も多くて信憑性に欠けるアバウトな感想に過ぎませんが、その中でも特に印象に残った展覧会はこの他に
「テート美術館展」7月~10月 国立新美術館国立西洋美術館の常設展示室の一角で開かれている「もうひとつの19世紀ーブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」展 9月~2024年2月でした。
テートの方は、ターナーなど古い作家ばかりかと思って行ったら意外にもマーク・ロスコやジェームス・タレル、オラファー・エリアソンといった現代作家の作品も見れて良かったです。
西洋美術館の方は印象派が対峙したサロンの作家の作品とは、どういうものだったのかを収蔵品から選んで見せてくれるという目の付け所がマニアックな企画展でした。私も長らく見たいと思っていたアカデミックな作品を見れて満足でした。来年2月までやっています。

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー「音楽」1855-56 国立西洋美術館小企画展
マーク・ロスコ「黒の上の薄い赤」1957年 テート美術館展

あとがき


今年も独断と偏見のベスト3にお付き合いいただきありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。去年のベスト3はこちらです。