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お気に入りの席

音楽をテーマにしたロベール・ドアノーの写真展を観た。第二次大戦後のパリで音楽文化が花を咲かせた、その表舞台から裏舞台まで(音楽の"場"にもイロイロサマザマな"場"がある)、中心から周辺まで(というのは良い言い方ではないな、でもとりあえず書いておこう)を追った、楽しい展覧会だった。何しろ誰もが楽しそうなのだ。感動して泣いているような人は見当たらない。誰もが楽しそうだ。楽しそうな人を見ると、見ている人も楽しくなるということだろうか。その中に、シャンソンの歌詞も書いたプレヴェールを撮った10枚+αの写真があった。ぼくはその詩人の写真をあまりちゃんと見たことがなかった。すぐそこに彼がいるような感じで見た。その近くに、音楽とどう関係づけているのかわからなかったが、ボーヴォワールがカフェのお気に入りの席で執筆をしているのを少し離れて撮った写真があった。それを見て、かつて大阪の街中(の喫茶店)にあった自分にとっての「お気に入りの席」を思った。現実のその場所は、もう閉まってしまったが、そこのことをぼくは一生忘れないだろう。そして、自分の書くものの中で、まだまだくり返し通いたいと思っている。

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