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“触れる”ことで、まずは身近に。fermataが目指すフェムテックの土壌づくり

女性にとって切っても切れないものでありながら、女性同士だとしてもなぜか話題にしづらかった、生理のこと。大なり小なり、今も誰もが人には共有できない悩みを抱えているのではないだろうか。そんな私たち女性のウェルネス課題の解決・支援事業を行う「fermata」では、“あなたのタブーがワクワクに変わる日まで”をコンセプトに掲げ、オンラインのみならず店舗でも世界中のフェムテック製品を販売している。まだまだ圧倒的にウェブストアで販売されることの多いジャンルながら、実店舗での販売にチャレンジするfermata。その想いを直接聞いた。

「フェムテック」はすぐ手の届く場所にある

フェムテックとは、女性(Female)と技術(Technology)を組み合わせた造語であり、一般的にはテクノロジーを用いて女性の健康課題を解決するデバイスやアプリなどを指す言葉。認知は広がり始めているものの、まだどこか敬遠してしまっている人が多いのではないだろうか。そんなフェムテック分野において先駆的存在であるfermataのグローバルビジネスマネージャー・カマーゴ李亜さんに、改めてフェムテックの定義を聞いた。

「テクノロジーと聞くと機械やIT技術のイメージが強く、“自分には難しそう”と距離を感じる人も多いと思います。しかしfermataでは、女性のウェルネスに対する解決策を提案する商品はすべてフェムテックと呼んでいます。例えば吸水ショーツはアナログで「テック」という言葉とは離れた印象ですがモノだけでなく、”女性がセルフケアを重んじる文化””自分自身の体を理解すること”といったムーブメントという意味でフェムテック。“すぐ手が届く場所にある”と知ってもらうためにも、私たちはより広い意味でフェムテックという言葉を定義しています」

実店舗を持つことで、ハードルが高く感じられるフェムテック製品を物理的に“手が届くもの”へと近づけているのもfermataの大きな取り組みのひとつだ。東京・乃木坂にある“未来の日用品”がコンセプトのセレクトショップ「New Stand Tokyo」に、ショップインショップという形で店舗を構えている。

「タブーなトピックを扱うことが、fermataの強みでありチャレンジ。フェムテック製品もかつてはタブーとされ、今もまだ馴染みのない方が多いのですが、将来的にはごく普通のものになってほしい。そんな想いが“未来の日用品”というコンセプトに通ずると感じ、商品を置かせていただくことになりました」

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体験型のサービスで「わからない」というハードルを壊す

fermataでは、実店舗・オンラインストアともに月経からセクシャルウェルネス、更年期に至るまで女性のあらゆる悩みや課題を解決するアイテムをラインナップしている。

「取り扱う商品については、まずサンプルを取り寄せてメンバーが実際に使用し、意見や感想を共有します。まだ日本に存在しないアイテムを多く扱うからこそ、質の良さを重視するよう心がけています。また、fermataのコミュニティなどでアンケートを取り、ユーザーがリアルに抱える悩みも参考にして、ラインナップを増やしたり、仕入れに活かしたりしています。なので今は生理に関するアイテムが多いのですが、1年後にはさらにカテゴリが増えてまた違ったラインナップになっていると思いますよ」

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▲月経カップは現在1ブランド・3サイズをラインナップ。「EVE 月経カップ 3,960円(税込)」

2020年4月にオープンしたオンラインストアはオープンして半年で売り上げが約20倍に増えたそうで、そのなかでも特に人気なのが生理用の吸水ショーツ。実店舗でも2021年1月現在(取材時)5ブランド、15種類を扱う。“ナプキンやタンポン以外に興味はあるけれど、月経カップはまだ抵抗がある”という人にとっても、気軽にトライしやすい吸水ショーツはフェムテックの入り口としては最適のアイテムだ。

「今はボクサータイプやレースのデザイン、Tバックなどバリエーションも豊富で、個人の好みやスタイルにあった商品を選べるのも魅力です。またお店では、実際にショーツの吸水性を試せる体験サービスも常時実施。“本当に漏れないの?”と疑う方がいるのは当然だと思うので、実際にご自身で体験してもらうことで購入までのハードルを壊せるというのも、実店舗ならではの強みです」

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▲米ブランド・proofのTバックタイプのショーツ。「proof The Thong 3,780円(税込)」

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▲店頭に置いても違和感のないお洒落なパッケージが多いのも特長。「Bé-A シグネチャーショーツ 7,590円(税込)」

“いつものルーティン=ベストの選択”とは限らない

女性のカラダの悩みに関する商品を実際に手に取ることができるのは、ユーザーとしてはありがたい反面、どうしても恥ずかしさや気まずさを感じずにはいられないのが本音。そんな我々の気持ちを汲み、実店舗ではフレキシブルな接客を意識しているという。

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「店員とはいえ、いきなり見ず知らずの他人に生理の話をすることに抵抗を感じる方もいらっしゃると思います。なのですぐにはお声がけをせずに、自由に商品を見て、触っていただくようにしています。オンラインではわからない素材感や、実際に手に取った時の自分の気持ちを知ってもらいたいので。興味を持ってくださった方には、より親近感を持ってもらえるよう個人的な使用感なども交えてお話をします。

接客をしていて一番聞くのは『こんな商品あったんだ!』という声。他の選択肢を知らないがゆえに、我慢をしているということにすら気づいていなかったというお客様は多いんです! たとえ商品を購入されなくても、“いつものルーティン=ベストの選択”とは限らない、他にも選択肢があるのだとまずは知ってもらえるだけで、使命を達成できていると感じます」

2019年9月に初開催されたコミュニティイベント「Femtech Fes!」。2020年1月以降は新型コロナウィルス感染拡大防止のためオンラインに切り替え、女性の健康課題をはじめとする多種多様なトピックをテーマにパネルディスカッションなどを行っている。課題の可視化、話しあう場所の提供、商品の購入という、上流から下流まですべてを担っているのもfermataの強みだ。今後はさらにお客様が商品と気軽に出会える場を増やしていきたいという。

「まだ馴染みのないアイテムが多いからこそ、店舗ではただ商品を置くだけではなく、売る側の教育も必要不可欠。“気がつけば色んなところにfermataの製品がある”というのが私たちの目指すところ。数年後には皆さんがいつも行く百貨店やコンビニにも、当たり前にフェムテック製品があればいいなと思います」

私たちの親世代にはおそらく存在していなかったであろう選択肢が、今の日本にはたくさんある。もちろんフェムテック製品だけが最良ではないけれど、こんな恵まれた時代にもなお、毎月の生理をなんとなくでやり過ごすのはもったいない。

取材・文:日笠麗奈
撮影:yoshimi




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