『サムライ ハイスクール』第四回 ‟オニガン”とひみこの正体 -ギャル語解析&ギャグ解説〈番外編〉
―深掘り考察記事です
―おもいきりネタバレしますのでご注意ください
―基本的に敬称略/‟春馬くん”だけ例外
侍小太郎がヘタレ小太郎に乗りうつり、いくつもの難題をバッサバッサと斬り捨てていってはや3ヶ月。
その間にヘタレの小太郎も強く大きく逞しく(?)成長し、侍殿も得心して時空のかなたへと去って行った。
さて残るはひみこの謎だけとあいなった。
3人の小太郎ー名称使い分け
🌕侍小太郎=ご先祖様の望月小太郎。真田幸村の家臣。1614年大坂夏の陣にて討死。享年17歳。
🌙ヘタレ小太郎=現代の高校生である望月小太郎。3年生なのに志望先も決まってないお調子者。単に「小太郎」と書く場合も多し。
🌗サムライ小太郎=侍小太郎がヘタレ小太郎に乗りうつったときの小太郎。あぇ?ややこしいなあ。服装はヘタレのときのまま。髪は黒ゴムで雑に結わかれ、侍言葉を話す。めっぽう強い。
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ひみこは人形だった!?
ひみこが小太郎の手をつかみ、必死の形相で「オニガン、オニガン、望月小太郎……クン」と言うあの場面(第一話)。
いったいどういう意味なの~? というのがギャル語を調べるきっかけだった。
でも、ほかの言葉はほぼ解明できたというのに、なんと、これだけがいまいちはっきりしないんです。
「鬼のように頑張って」なのか「鬼のように願う」なのか、はたまたそれ以外なのか…
👹「鬼のように頑張って」説
ヘタレ小太郎が大坂夏の陣についてのレポートを30枚書くことに対して頑張れというだけで、ひみこがあの形相をするだろうか?
否ではなかろうか。
じゃあ、そうではないとしたら、はて? 何を頑張れというのだろう。
👹「鬼のように願う」説
ひみこが鬼のように願うとしたら、それはいったいなんぞや、ってことだよね。
九話の真ん中あたり。
乗りうつっていた侍小太郎と直接対峙したあと、自分なりの義を通すべく刀を持って出て行く小太郎の後ろ姿に、ひみこがマジな顔でつぶやいた「本懐お遂げくださいませ」
あっ、これか! これなのか?
これがひみこの当初からの願いなのか。
だとしたら、ひみこはいったい誰にこれを言ってるのだろう。
鍵はひみこの正体だと思うんだけど…
九話終盤、初陣に出る前の晩。
辞世の句を書こうとする侍小太郎(あれ?実は彼は時空を遡ってしまったヘタレ小太郎じゃな)に許婚が、「本懐お遂げくださいませ」とひみこと同じ言葉を発している。
ということは、小太郎の許婚がひみこなのか。
許婚が小太郎の無念を晴らすために姿を変えて現世に現われ、子孫であるヘタレ小太郎を導いて本懐を遂げさせる――
こう考えるのが一番わかりやすいのだけど、この解釈、なんか腑に落ちないんだなあ。
ひねり、なさすぎっしょ。
ひみこは小太郎に、刀の真の意味や侍の心得、そして人生訓まで語ってるよね。
強い想いのこもった魂だけが現世に来ているのなら、別に許婚っぽくなくてもいいとも言えるけど、ちょっと人格的にちがいすぎじゃね? あの許婚がそこまで言えるかなって、すっごく疑問。
そう言えば八話で、小太郎の持ってきた刀を見て「どうしてこれが…。誰の仕業じゃ」とひみこが言うんだけど、それがすっごく強い言い方で、ギャル語を使うのを忘れて素が出ちゃった感満載の話し方だった。小太郎にそこを指摘され、慌ててギャル語に戻したのもいとあやし。
こりゃあ、許婚本人ではなくて別の誰かなんじゃないか、って。
だけど、許婚じゃないとすると誰なんだっていうと、ヒントはほとんどなくて…
唯一、気になるのがひみこという名前。
ひみこといえば、巫女(シャーマン)だったとも言われる邪馬台国の女王を連想させる名。
ひみこはなぜにこの名前なんだろう。
許婚だったら、もうちょっとちがう名を付けそうなもんじゃないか…
さすればひみこは、侍小太郎と深い縁があり、小太郎の無念をなんとしても晴らしたいと考える謎の力を持った人物だったのかも…、なーんてことを考えてしまうのである。
いったい誰なん?
と、ここまで書いて、あっ、今、思いついた!!!
ひみこって、小太郎だけではなく、悩める人にだけ見える幻想空間の中で彼らを導く巫女、導師と考えたらどうだろう。
小太郎の妄想の中では許婚や主君真田幸村がひみことなって現われ、導き、そして見守る。
ほかの悩める人のときは、それぞれの縁ある者の化身として現われ、それぞれの形で導いていくというとっても重要で頼りになる存在。
侍殿の考えを無視できないと、刀の持ち主の所へ突っ走って義を通すと言う小太郎に、「あんたの義の通し方ってなんなの? 武士はね、いざ戦場に立ったら自分の戦い方で戦うんだよ」といつになくやさしい言い方をするひみこ。
小太郎なりの義の通し方をしろ、とギャル語も封印して最後に大きく強く導いてくれたのではないだろうか。
「本懐を遂げる」とは、もともとの願いを達成するという意味。
戦国の世の侍小太郎の本懐は、「殿のために敵を蹴散らし、誇り高く散ること」であった。しかし、たちまち敵に囲まれてしまい何もできぬまま討死して、無念だけが残った。
その無念を胸に、時空を400年近くさまよい続けてヘタレ小太郎に乗りうつった侍殿の本懐は「義を通して、一度失った誇りを取り戻すこと」
そして、ヘタレ小太郎の本懐は「刀を盗んでいないことを警察でちゃんと話し、ごまかさずに最後まで闘うこと」
ひみこが鬼のように強く願った「本懐お遂げくださいませ」は、現代のヘタレ小太郎を通じて侍殿に伝わり、そしてさらに戦国の世の侍望月小太郎にまでしっかと届いたということなのではないだろうか。
意を決した小太郎が自分なりの本懐を胸に、東雲歴史文庫から出て行くのを見つめるひみこの表情がなんだか切ない。
この願いが成就するまでの年月(としつき)は、ひみこにとってもながく重い日々だったのではなかろうか。
そして、ひみこは小太郎の前に、二度と現われなかった。
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10年前からあるというカフェのカウンターに置かれた人形に、縁ある人物の魂が乗りうつってひみことなり、幻想空間の中で多くの人々の悩みと向き合ってきた。
一緒に置かれた『新版 ギャル語事典1998』と『懐かしの昭和ギャグ大全集』で少し遅れた現代人をマネしながら、ね。
この解釈、いかがかな。いかがかな。
納得できてもできなくても、めんどくさいこと考えずにただただ小太郎のヘン顔と変身の術を楽しむだけも一興なり。
音楽もすごくいいし、秋の夜長(注:初出当時)をみんなで楽しみましょうぞ。
天晴れ、小太郎! 天晴れ、サムライ ハイスクール!
【追記】
時が我に味方したか。
なんとオリジナルサントラ盤が本年(2024年)9月に配信スタートとなっておるぞ。
さらに昨日(12月6日)から、TVerにおいて配信が始まっておる。年末年始は小太郎と一緒だ。
🌕 🌙 🌗
サムライ殿~!! カムバック!
ヘタレの望月小太郎がサムライ小太郎と出会ったことで、いろいろな障壁を乗り越え、自分で考えて自分で行動するようになる。
これぞサムライ効果なり~!
時空を超えて400 年近くもさまよい、着物もボロボロになってしまった侍殿も最後は「おぬしの心の中にも立派な剣がある。安心したぞ」と言って消えていった。祝着祝着。
はてさて、小太郎は大学に無事受かったのであろうか。なにか夢は見つけられただろうか。小太郎の夢が何かちょっと知りたい気がするぞ。
中村はなりたかった看護師になれたのか。永沢あいは夢に向かって邁進しているだろうか。
それぞれ気になるところではあるが、ま、なんとかそれなりに頑張っているのではないかと思う。そして今でも3人で、殿~なんて言いながらワチャワチャと楽しく青春時代を過ごしているのではないだろうか。
それよりなにより、実はほかにどうしても気になることがある。
岩永仁の父、現役の国会議員であるところの岩永浩三のその後だ。
まったくのデタラメで一人の善良なる高校生を盗みの犯人に仕立て上げ、警察まで動かすほどの大騒ぎをした罪は問われたのであろうか。それとも、相変わらず己の地位を守ることのみに腐心しているのであろうか。
あの不肖の息子でさえ、自分の罪に気づいたというのに、この天下の公僕たる父親はなんの反省もしないというのだろうか。
そういえば、つい最近も、そんな人物の噂を聞いたことがあるような気がするぞ。
そんな輩を懲らしめるために、サムライ小太郎にはまた出てきてほしいものじゃ。成敗してもらいたい人があっちにもこっちにもそっちにも…、うじゃうじゃ歩いておる。
サムライ殿~!! カムバック!
ん? それにはまず、東雲歴史文庫を探さなきゃならんのだろうか…
ひみこさま~、いずこ~?
〈つづく〉
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<春馬くん応援宣言>
春馬くんのこれまでの旅路とこれからの長い旅を応援していこう
まだ会っていない人が春馬くんと出会えるよう
世の中が春馬くんを忘れてしまわぬよう
そのきっかけとなれるように祈りを込めて
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