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三浦春馬さん映画「天外者(てんがらもん)」を10倍楽しむために 新・五代友厚伝感想

読了しました。「新・五代友厚伝」。忘れないうちに、五代友厚という人の足跡をたどっておきたいと思います。

五代友厚は幕末に薩摩藩に生まれています。名君島津斉彬が先進性をもって実現していた藩での治世の影響を強く受けています。斉彬公が藩改革を推進しているのと同時期、幕府が海軍の必要性を痛感して開いた長崎海軍伝習所で西洋から学問を学び、幕末にありながら徹頭徹尾開国主義者でした。

薩摩藩出身ということで幕末から明治初めにかけては政府中枢で活躍しますが、その後思うところあって実業界に転じ、「富国の使徒」となります。日本が諸外国に伍していくのに、国を富ませることが最も大切とし、そのためには鉱山の採掘を、と考えたのも斉彬公の影響です。

五代友厚はいくつか会社を興していますが、そのどれもが先進的な組織として作られており、目的は一貫して「国の利益となることをする」。物事の決め方は合議制を取ることが多く、リーダーシップの形としては天外者の予告で見られるような「俺についてこい」タイプではなかったようです。

そして、ここがわたし的に一番のポイントなのですが、「北海道開拓使官有物払い下げ事件」。私が大学受験の時覚えたのは「大阪の政商五代友厚が、北海道開拓使長官黒田清隆から不当に安い価格で官有物の払い下げを受けることが分かり、批判を受け、払い下げ自体が取り下げられた」というもの。

これが、まったくのウソだったことが本書に綴られています。大学受験のためにウソを覚えさせられたのか私は・・・

かいつまんで言うと、最初に報道した新聞が3日にわたってデマを載せ、その後2紙ぐらいでそれはデマであるとの報道(訂正報道)もあったのに、なぜか最初の報道をもとに後世で論文を書いた人がいて、それが定着したままだと。

いやいやいや。教科書にウソ載せるのは問題ですよね。私大学卒業してだいぶたちますけど、今の今まで信じてましたよ。政商・五代友厚説。

本当にこの本の記述が正しいなら、教科書の記述を訂正するよう働きかけるべきですね。どなたか働きかけている方はいるのでしょうか。この事件に対する誤解が、渋沢栄一に比べて不当に五代友厚の評価を下げているように思えてなりません。渋沢栄一はお札にもなるのに。大河ドラマの主人公にもなるのに。

全体を通して、他の五代友厚伝で語られていることの真偽を丁寧に検証しつつ、真の「五代友厚像」に迫る貴重な本だと感じました。本書の記載が誤りであることは一読しただけでは考えにくいように思えるほどです。ぜひ、本書の内容が広まってほしいです。

五代友厚は、薩摩藩の名君島津斉彬公の思想を色濃く受けた実業家で、志半ばで亡くなってしまいましたが、国を富ませ、世界に伍する日本を作りたかった人。その志の大きさ、目指したものを描くため役に命を吹き込むのは、日本に類を見ないスケールの大きさを持つ役者(ファンなので、多少の誇張表現お許しを)、三浦春馬。予告にあった台詞、「東洋のマンチェスターを作るんじゃ」。五代友厚がマンチェスター視察しているのは事実ですので、本当にどこかでそう言ったかもしれません。ますます天外者を観るのが楽しみになりました。

きっと、三浦春馬さんと五代友厚さん、気が合うと思います。天国で二人して、映画の公開を楽しみに待ってくれていると信じたいです。


今度は渋沢栄一との違いを知りたいので、次は「論語と算盤」を読みます。

最後に、五代友厚プロジェクトの活動レポートへのリンクを貼ります。一つの作品で携わった方から、これほどのコメントを頂ける役者のファンでいられたこと、誇りに思います。

本当は、三浦春馬さんと五代友厚さんと、彼ら二人のリーダーシップ論にしたかったのですが、リーダーシップの学びが追い付かず、本日は「新・五代友厚伝」の感想のみです。リーダーシップ論はまた後日。

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