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芦田愛菜は天才子役なんかではない 『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』

9歳の芦田愛菜さんの中に、大女優がいた。

『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』。
小説家・西加奈子さんがこの世に送り出し、行定勲監督が映画化した作品だ。

こっこに出会えてよかったと、心から思う。

芦田愛菜さんをはじめて認識したのは、たしかテレビドラマだ。
天才子役。芦田愛菜さんにもたびたび冠される、使い古されたフレーズがふっと浮かんだ。過去に天才子役と呼ばれた俳優の顔が何人も、私の頭に浮かんでは消える。

好奇心旺盛で悪気のないこっこ。おじいちゃんに言われた「イマジン」。
激しい怒りとともに、自身の抱く孤独を強く感じるこっこ。
同級生の家で床に横たわり、涙するこっこ。
ネズミ人間と心を通わせるこっこ。
「イマジン」を繰り返すうち、しだいに変わっていくこっこ。

ヘアゴムについた目玉のオヤジが、まるでこっこ自身の第二第三の目のようだ。いろんなものを良く見て「イマジン」を繰り返し、笑顔になっていくこっこを見つめていると、ふと思った。

芦田愛菜さんに対して「天才子役」という言葉を使うのは、失礼ではないだろうか?

表向きには、褒めている。だが「天才子役」という言葉には、コドモをコドモの枠の中に閉じ込めておきたいという、大人のエゴを感じてしまう。
大人の思うようなコドモを表現してくれたらいいよ、ああいいね。凄く上手だよ、よく出来ました!とでも言っているような気持ちになる。
どうにも、据わりが悪い。

芦田愛菜さんは、そんな私たち観客が「上から目線」で置いたガラスの天井を、軽々と超えていった。9歳の芦田愛菜さんは、まごうこと無き女優であって、子役ではなかった。

行定勲監督に心から感謝したい。
この映画を撮影して、残してくれたことに。
9歳の芦田愛菜をきちんと、一人の女優として撮ってくれたことに。


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