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「生きてゆかれてください」

カーテンコール。
演劇やミュージカルの舞台が終わった後、舞台に出演者が出てきて挨拶をする。お辞儀だけの時もあれば、主演俳優が何か言う時もある。公演しだいだ。
わたしにとって、それは至福のとき。

「生きてゆかれてください」

あるミュージカル俳優がカーテンコールで口にする、この言葉が好きだ。

2020年からの新型コロナウイルス流行は、演劇界にとって大逆風となった。
あらゆる公演が中止になった。
演じる側の皆さんは、「不要不急」の烙印まで押され、自分たちの心を保つだけでも大変だったと思う。

そんな中、毎回毎回、カーテンコールに出てくるたび、その人は「生きてゆかれてください」と言うようになった。
わたしには、こう聞こえる。

舞台との出会い、役者と観客の出会いは、一期一会。
どうか、今日この場で自分からエネルギーを受け取った皆さんが、この先も健康でありますように。願わくば、またどこかでお会いできますように。

「生きてゆかれてください」

演劇でもミュージカルでも、好きなお芝居を観るために、ウキウキしながら劇場へ向かう。幕が下りて、余韻がまだ残る中、まだ役を身に纏った演者の皆さんが出てきて、わたしたちに謝意を示してくれる。
感謝したいのは、こちらの方だ。

伝えたい笑顔は、マスクの下に隠れている。
だから、ありったけの拍手をカーテンコールに贈っている。

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