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豊洲のMAGESTIC CASTLEに舞い降りた王子 古川雄大 The Greatest Concert vol.1

古川雄大さんのコンサートに行ってきた。

このnoteを読んでくださる方であれば、『コンフィデンスマンJPプリンセス編』で、昆虫好きのフウ家の長男・クリストファーを演じたあのイケメンと言った方が伝わりやすいだろうか。もしくは、朝ドラ『エール』でミュージックティーチャーを演じた彼、と言えば伝わるだろうか。

一度もここで触れたことのない(いや、『モーツァルト!』の感想を書いたとき触れたか?)古川雄大さんのコンサートを突然観に行ったのは理由がある。

ゲストが敬愛する明日海りおさんだからだ

明日海さんがゲスト出演されると分かってから、いろいろ手を尽くしたがチケットが手に入らず、機材席解放に伴う追加販売でやっと手に入れた。それでも発売開始2分ほどで完売になっていたから、運が良かったとしか言いようがない。

明日海さんを目当てに豊洲まで足を運んだわけだが、嬉しい誤算があった。ミュージカル俳優・古川雄大さんの魅力を発見できたのだ。

城に招かれた観客たち

コンサートは、「MAGESTIC CASTLE」(お名前の雄大(ゆうた)→ゆうだい→MAGESTIC)に招かれたお客様と宴を開く、という設定で行われた。大きなスクリーンに映し出された城の中に誘われ、座席が回転していくと、古川雄大さんが過去に出演されたミュージカルを表す絵が、城の壁にかかっていることに気づく。

観客の私たちを歓迎するかのように、ダンサーの皆さんが踊る。主の登場はまだかと、ワクワクが高まっていく。

カーテンが開く。階段の奥に登場したのは、王子様だった。

造形と声の美しさが紡ぎだす艶

オープニングナンバーは『ロミオとジュリエット』より「世界の王」。白い衣装を着て登場した古川さんの美しさにまず目を奪われた。続いて驚かされたのは、声だ。

わずかな愁いを帯びた美しい声が、会場を包み込む。親世代に反発し、モンタギューの若者たちが集まって団結するところで歌われる「世界の王」は、ミュージカル『ロミオとジュリエット』の中で最も有名で、盛り上がるナンバーである。会場のヴォルテージが、徐々に上がっていく。

続いて、『エリザベート』より「最後のダンス」。"死"であるトートがエリザベートを妖しく黄泉の国へ誘う。明日海りおさんの歌う「最後のダンス」が宇宙一好きな私(ちなみに、他には望海風斗さん他宝塚でトート役を演じた皆さんや、井上芳雄さんの歌う「最後のダンス」を聴いた経験がある)。どうしても基準は明日海さんの演じたトートになる。

「最後のダンス」を聴いて気が付いた。

古川さん、声が艶っぽい上にやさしい。どこまでもやさしい。
トート閣下も、古川さんにかかると少しやさしく感じられた。

もちろん、目の前にエリザベートが居たらまた違うのだろう。

ゲスト・明日海りおさんとの歌の相性

古川さんフェルセン、明日海さんマリーでデュエットしてくれた曲、『マリー・アントワネット』より「私たちは泣かない」。古川さんのやさしい歌声が最大限に魅力を放っていた。

この曲は、愛し合うフェルセンとマリーが、覚悟を決める場面で歌われる。

甘やかな古川フェルセンの歌声と、演ったこともないのに一瞬でフェルセンへの愛と切なさを帯びた明日海マリーの歌声が重なっていく。想像以上にお二人の歌の相性が良い。

フェルセンのやさしさとマリーの愛ゆえの覚悟を感じて放心してるうちに、いつの間にか曲が終わっていた。

古川さんのフェルセンを、ぜひフルで観てみたくなった。もちろん、明日海さんの演じるマリーも。

ガチの「ミリシタン」な側面

ゲストを呼んでのトーク。

実は心配していたのだ。明日海さんは役を演じていない時はゆるふわな人だし、古川さんにも似た雰囲気を感じていたから。

心配をよそに、古川雄大さんはガチの「明日海りおオタク」っぷりを披露してくれた。何回か宝塚時代の公演を観て、コンサートも観たそうで、ご本人は「コンサートを利用して僕がお会いしたかっただけ」とストレートに語る。

「お休みの日は何していらっしゃいます?」「ショートスリーパーとお聞きしたんですが」「甘いものがお好きと伺って」と次々質問する姿は、ただの明日海りおファンだった。

ぜひ共演したいという古川さん。「恋愛ものとかどうですか?」の問いに「イイですね! 殺し屋役とかに興味あります?」と暴投で返す明日海さんが、あまりにいつもの明日海さんで、思わず笑ってしまった。

そして、何事もなかったかのように暴投をあっさり捕球してそのまま会話のキャッチボールを続ける二人に、なんだかほっこりさせられてしまった。恋愛ものをやるなら、ミュージカルではなくて映像系でどうだろうか。その方が、二人の持つ雰囲気が活きた作品になるような気がする。

終わりに 「Waving through a window」は反則でしょ

アンコールの最後は『モーツァルト!』より「僕こそ音楽」。ヴォルフガングと言う役への古川さんの思い入れと、ミュージカル俳優としての決意を感じるラストだったが、思わず涙がこぼれたのは、彼が『Dear Evan Hansen』から「Waving through a window」を歌った時だ。

『Dear Evan Hansen』は映画館で観た。シートに背中をもたれさせながら泣いた。特に心に突き刺さったのは、主人公エヴァン・ハンセンの孤独を歌い上げるこのナンバーだった。

When you're falling in a forest and there's nobody around
Do you ever really crash, or even make a sound?
When you're falling in a forest and there's nobody around
Do you ever really crash, or even make a sound?

『Dear Evan Hansen』「Waving through a window」より引用

ココの歌詞が特に好きだ。彼の孤独が胸を締め付けて痛くなる。

古川雄大さんは、この曲を伸びやかな高音で歌い上げてくれた。気が付いたらマスクの下で口パクしていた。なんだか分からないけど泣けてきた。

もし日本で『Dear Evan Hansen』を上演することがあったとしても、年齢的に古川さんがエヴァンを演じることは無いだろう。無いだろうけれど、つい期待してしまうのだ。

古川雄大さんが、愁いのある美しい歌声でエヴァンを演じてくれるのを。

番外編 明日海さんが披露した他の曲

『エリザベート』より「闇が広がる」を明日海さんトート・古川さんルドルフの組み合わせで歌ってくれたのはとても嬉しかった。

明日海さんのトートが宇宙一好きだからである。

少しくすみのある水色のドレスを身にまとった明日海さんがトートを演じるのか・・・女性そのものだけど?と思ったのもつかの間、私のシロウト考えはどこかへ吹っ飛んだ。

配信で、Blu-Rayで何度も観て、一時ほぼ毎日歌を聴いていたトート閣下が居た。生で聴く明日海さんトートの妖しい色香漂う歌声と、カッコよさと、音圧で卒倒しそうになった。古川さんのルドルフの声量も凄かったが、明日海さんのトートが歌うのを聴いていたら、いつの間にかルドルフとトートの身体の大きさが逆転したかのような錯覚に陥った。

明日海さんにかかれば、服装もメイクも関係なく役が降りてくる。

続いて披露してくれたのは、『ME AND MY GIRL』より「自分のことだけ考えて」。何とジャッキーが降臨。明日海さんがジャッキーを演じるのを観たのは、2008年月組『ME AND MY GIRL』の配信でだけ。14年前の公演だ。

あの時のジャッキーはひたすら可愛かったけれど、大人の色気を増した2022年の明日海ジャッキーが「男の胸を高ぶらせて 私の前にひざまずかせる」と歌うと、本当に男はみんなひざまずいてしまうんじゃないかと思ってしまう。

良いモノを生で見せてもらえて、本当に良かった。

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