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人間ヴェルディ

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彼の音楽と人生、そして その時代
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2022年10月の記事一覧

人間ヴェルディ:彼の音楽と人生、そしてその時代 (3)

著者:ジョージ・W・マーティン 翻訳:萩原治子 出版社:ドッド、ミード&カンパニー 初版 1963年 第一部 目次 第3章:ブセット町  その2 マンゾーニと彼の小説「許婚者」 ヴェルディは16才の時、マンゾーニの小説「許婚者」を読んだ。この本は彼に絶大な印象を与え、53才の時、彼は友人にマンゾーニについてとその時のことを、若いころの情熱を持って、手紙を書いている。「多分君も知っているように、私はあの作家に最高敬意を持っている。彼の小説は我々の時代の人間の頭脳が生み

人間ヴェルディ:彼の音楽と人生、そして その時代 (2)

著者:ジョージ・W・マーティン 翻訳:萩原治子 出版社:ドッド、ミード&カンパニー 初版 1963年 第一部 目次 第2章:ブセット町 その1 アントニオ・バレッツィ氏 カルロ・ヴェルディが最初に相談した相手は、アントニオ・バレッツィという人で、カルロがいつもロンコレ村で売り歩く商品を仕入れている食料品とワインの店をやっているビジネスマンだった。バレッツィ氏は今風にいえば町のデパートを経営し、自分で醸造した特別ワインを売っていた。商売はうまくいっていた。世の中が乱

人間ヴェルディ:彼の音楽と人生、そして その時代 (1)

著者:ジョージ・W・マーティン 翻訳:萩原治子 出版社:ドッド、ミード&カンパニー 初版 1963年 第一部 第1章:ロンコレ村 ヴェルディの誕生 ヴェルディの生家 1813年のロンコレ村は、百人くらいの農民家族が住む村で、20くらいの小さな家が聖ミケール教会を中心に散らばっていた。村はその地域で一番大きいブセット町と、パルマ公国首府のパルマ市を繋ぐ街道筋にあった。18世紀末から19世紀にかけてのナポレオン侵略のお陰で、封建制度から解放され、農民は所有者として農地