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タイムパラドックスを聴きながら。

「ヘッドホンをつけるのって、なんか格好つけてるみたいで恥ずかしいんだよね。」
と1年前の私。
私はいつも堂々としているくせに、変なところで恥ずかしがる。

そんな私がヘッドホンで音楽を聴くようになったのは、つい数ヶ月前の話である。

今日はそういう話。

お気に入りのイヤホン

大学2年の秋。ちょうど夏休みが明けた頃。
高校生の頃から使っていたイヤホンが夏の暑さに負けて壊れてしまった。

「え、右耳だけ聞こえないんだけど。曲聴いて帰れないじゃん。」

大きすぎる独り言を吐きながら、
ペダルに体重を乗せ自転車を走らせる。
風を切る音がした。

その日の夜。
お風呂に浸かっていると、
ふと、1年前にヘッドホンを買ったが、
変な理由で放置していたことを思い出した。

探してみるかぁ。なんて思いながら部屋に入ると、壁にかけてあった。

「あれ、こんなところにあった。」
探す手間が省けた。

薄いピンク色のヘッドホン。20歳になってこの色はかわいすぎるか…?
着けてみると、黒髪のショートヘアと可愛らしい色のヘッドホンは、なんだかおしゃれに見えた。

私の美的センスは1年で変わったようだ。

スマホを開くと0時を超えていたので、アラームを8時にセットして布団に入った。 
あー早く音楽が聴きたい。

マイルール。

ある日突然、人といることに疲れてしまう時がある。そういう時、私は決まって本や音楽にどハマりする。

本を読むこと、歌詞を読むことは、
誰かの人生を疑似体験しているかのような気分になれる。

私は頭の中で、
恋する高校生、
バリバリと仕事をする女性、
時には妻や子供を愛する男性として人生を歩む。
自分の人生の悩みがちっぽけに感じる。

「読む」時間は必ず1人で過ごす。
そんなマイルールを作った。

音楽の魅力は、歌詞だけでなくメロディによって一層、物語に色が付け加えられること。

ヘッドホンをつけると、どんなに騒がしい空間にいても一気に1人の空間を作れる。
この事実に気づいてしまってから、私はヘッドホンが手放せなくなった。

毎日、1時間40分かけて大学へ通い、授業を受けて課題を終わらせる。
週3回は部活で河川敷を走り回る。(アルティメット部に所属)
日曜日や授業が午前中だけの日はバイトをする。
これらの合間を縫って友達とご飯に行く。

忙しい。
どれも大切で、1つも捨てるわけにはいかない。
でも、どうしても疲れてしまう。

そんな時、私はヘッドホンを手に取るのだ。

春宵

大学3回目の春が来た。
宵、車通りが少なくなって月が顔を出す時間。

この文章を書きながら散歩をしていると、
vaundyの『タイムパラドックス』が流れてきた。

「今がどんなに辛くても少し先の未来で、君が笑ってるのを見てきたから大丈夫。そのまま進んでいいんだよ。」
こんな風に言われている気がして、なんとなく前を見てみようかなって思える曲。

少し先の未来、私は笑えているのだろうか。
「あと2ヶ月」

そんなことを考えながら、
今日もヘッドホンを身につけ、大学の最寄りへ向かう電車に揺られている。

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