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働くをオープンにすることが北米で義務化-5分で読める初心者向け解説

感度の良いCHROクラスの方々の間で最近少しだけ話題になったのが、SEC Regulation S-Kの修正に伴う、米国の上場企業に対して「人的資本の情報開示の義務化」。なんのこっちゃという人も多いと思うので、原文を漁ったり、米国のニュース記事を読み漁ってみました。(ざっくりまとめたので、間違いがあったら教えて下さい!)

何の話か

簡単に要約すると、以下の通り。
・2020年8月26日の話
・米国証券取引委員会に提出する書類に関する規則の修正が行われた
・Human Captital(人財)に関する方針やその目的の情報開示を求めた
・義務化はされたけど、具体的な定義はなく、曖昧性が残った

これまでも非財務諸表の開示はレギュレーションがあったんだけど、Human Capital(人財)に関する開示が義務化されたよという話。

で、感度の良い日本のCHROの方々が、日本でも人事の役割が変わるぞーという話をしていたというわけです。内向きだったり、お化粧採用みたいなのは通用せず、外に開示しても恥ずかしくない組織・人事戦略の企画と実行が求められるからですね。


何がそんな大事なのか

財務情報だけでなく、非財務情報もあわせて統合的に投資判断をする投資家が増えているのは有名な話です。

非財務情報というのは、
・MD&A(経営者による財政状態及び経営成績の検討と分析)
・ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))
などを指しますが、何を指すのか曖昧だったりもするんですよね。

なので、こんなことを報告してね、と決めている規則の中に、今回「Human Capital」に関しても報告すること!って明言されたから、大きなニュースになったというわけです。


最低限知っておくべき専門用語2点

僕も詳しくないので、原文読み進める中で、最低限知っておいたほうがいい用語だけまとめておきました。2つだけ。時間ない人はこちらで十分かと。

①米国証券取引委員会(SEC)

米国証券取引員会(SEC、US Securities and Exchange Commission)については下記引用に説明を任せるものとします。

米国証券取引委員会(SEC)とは、投資家保護および公正な証券取引を目的として、1934年に設立された、独立の連邦政府機関。
SECの最大の責務は「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」である。つまり、ディスクロージャーの透明性を確保し、公平な市場を実現することがSECの機能である。 「The mission of the U.S. Securities and Exchange Commission is to protect investors, maintain fair, orderly, and efficient markets, and facilitate capital formation.」(SEC HPより引用 "Why?at we do") SECはインサイダー取引や相場操縦など不公正取引に対する処分権限を有しており、司法に準じる権限を持った独立した強力な機関である。 一方、日本では証券取引等監視委員会が同様な機能を期待されているが、現状では金融庁の傘下機関であり、また違反者に対する権限のない機関である。 そのため、日本でもSECのような権限をもった独立機関等による投資家保護策の充実が求められている。
グロービス経営大学院 MBA用語集より引用


②Regulation S-K

SECへの提出書類に関する規則のことみたいです。
Regulation S-X財務諸表に記載する財務情報に関する規定。
Regulation S-K財務諸表に記載する非財務情報に関する規定。
ちなみに、海外のIRみていると10-Kってのもありますが、これは日本でいう有価証券報告書みたいなものだと思います。10-KはSEC提出用なので、大体内容がわかりにくいですよね、Annual reportの方が株主や投資家向けなので見やすくておすすめです。

今回はRegulation S-Kに関するニュース。つまり非財務情報に関する修正方針ってことです。


日本はどうなの

まず、日本におけるSECは、金融庁に属する機関の1つである「証券取引等監視委員会(SESC)」が近いと言われています。残念ながら、人的資本に関する非財務情報の開示義務はありません。

でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資の比重を大きくしているという発信からも、ESGを意識した取り組みや自主的な情報開示は増えてきていますよね。

労働人口が減り続け2030年には644万人働き手が不足することや、第三次産業へとシフトし価値の源泉が人になっていくなかでは、そのうち日本でも人的資本に関する情報の開示が義務化されるのではないでしょうか。てかしたほうが良いですよね。労働市場への適応ができていない会社って、短期的には業績がよくたって、将来の業績には間違いなく悪い影響を及ぼします。投資家にとって間違いなく開示すべき情報なんです。もちろん働き手にとっても。

追記
前職の後輩で、爽やかイケメンで、IR領域のプロである一瀬さんから教えてもらってので転機しておきます!サンキュー!

日本では法定開示(招集通知などの事業報告書など)では人的資本の指標開示義務化までは進んでませんが、IIRCの統合報告のフレームなどには、6つの非財務資本の中にしっかりと「人的資本」が位置付けられており、それをどのように財務(業績)に繋げていけるのかを各社の成長ストーリーとして表現していくことが求められてきています。(開示義務化はされていない)


マニアックな人向け

原文の大事なところだけ抜粋しておきますね。自分の目で確かめたいという方はこちらをどうぞ。簡単な訳もつけておきます。
原文、引用元はこちら(https://www.sec.gov/、SECトップページ)

c. Final Amendment
After considering public comments, we are adopting this amendment substantially as proposed with certain modifications. Under the final amendments, Item 101(c) will require, to the extent such disclosure is material to an understanding of the registrant’s business taken as a whole, a description of a registrant’s human capital resources, including any human capital measures or objectives that the registrant focuses on in managing the business. We believe that, in many cases, human capital disclosure is important information for investors. Human capital is a material resource for many companies and often is a focus of management, in varying ways,
and an important driver of performance.
The final amendments identify various human capital measures and objectives that address the attraction, development, and retention of personnel as non-exclusive examples of subjects that may be material, depending on the nature of the registrant’s business and workforce. We emphasize that these are examples of potentially relevant subjects, not mandates.

(ざっくり翻訳、DeepL+大澤意訳)
c. 最終的な修正内容 
パブリックコメントを踏まえ、以下の通り採択します。
事業全体を理解する上で重要となる、「経営する上で重視している人的資本の施策や目的」の説明を要求します。
人的資本の情報開示は投資家にとって重要な情報であると考えています。人的資本は多くの企業にとって重要な経営資源であり、経営上の重要な課題点となります。そして、業績の重要な推進力となります。
最終的な改正では、事業と働き手の性質に応じて重要となる可能性のある、
・人材採用
・育成
・リテンション
の測定および目的が明記されています。
上記は潜在的に関連性がありそうな項目例であり、義務ではないことを強調します。


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