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amazarashi永遠市大阪。

※※※※※超絶ネタバレ注意※※※※※※※
※※※※※超絶ネタバレ注意※※※※※※※
※※※※※超絶ネタバレ注意※※※※※※※

この記事はセトリ、演出のネタバレを含むので楽しみにしている方は是非全公演が終了してからまた、いらしてください。


↓↓↓本編

目と鼻の先にステージが見える。真正面のど真ん中。手を伸ばせば届きそうな距離。最高の位置である。視界いっぱいに広がるのは紗幕に映る永遠市の文字。その更に後ろにはアンプのライトと照明に反射したドラムセットが見える。会場全体にうっすら広がるスモークがもたらす幻想感とバンドセットがもたらす演奏の現実感。夢と現実が行き来する開演直前。開演10分前になったところで僕はスマホの電源を落としいつ訪れるかわからないその時を待った。場内アナウンスが流れいよいよ始まるんだという高揚感に身体が硬直していた。こんなにも緊張するのはいつ以来だろうか。

アンプの緑のランプがチカチカと見え隠れすることでステージ上を人が行き来し始めた事を悟る。いよいよだ。あそこに秋田ひろむがいる。今ギターのチューニングをしているのか。ストレッチをしているのか。メンバーと最後のコンタクトを測っているのか。すぐそこの見えないステージ上のやりとりの妄想にのめり込んでいた束の間プツンと会場が暗転した。

紗幕に映像が映し出させる。その瞬間イヤホンの中でしか聞こえなかった秋田ひろむの声が耳の中を越えて全身に響いた。ハスキーがかった声が唸るように響く。毎度ここで秋田ひろむは生きた人間なんだと悟る。文字通りの鳥肌を覚えた僕は全身の神経を研ぎ澄まして眼の前の光景にのめり込んだ。

ライブの1曲目はポエトリーソングが多いamazarashi。1曲目は俯きヶ丘。秋田ひろむの「声」が「歌」になる瞬間そのスケールと迫力に僕はただただ圧倒されていた。「ライブツアー2023永遠市グランキューブ大阪、青森から来ましたamazarashiです。」amazarashiのライブの始まりの代名詞。挨拶代わりのその叫びを聞いた時僕の全身の細胞は鳥肌の余りなんかもう分からない事になった。

2曲目インヒューマンエンパシー。紗幕に立体映像が映し出される。amazarashiのアレだ。アイツが秋田ひろむと一緒に踊り暴れている。そのファンタジーと非現実感にまたまた秋田ひろむは本当にこの世界の住人なのかと疑う。それでも本人は目と鼻の先でマイクに向かっているのだから不思議なものである。何度も夢と現実を行き来している感覚がライブを通してずっとあった。

アルバムの曲が続く。下を向いて歩こう。Bメロの韻の踏み方とサビの疾走感が好き。ディザスター。「名シーンだけの人生じゃ居られないな」終始頭の中に居座り続けた言葉。完全にライブで好きになった曲の1つだ。ここまで終始バンドサウンドと紗幕の映像と演出に圧倒されていた。そして1つ惚れ惚れとしていたこと。それはkey.cho豊川さんのコーラスの美しさ。本当に惚れ惚れとする。この美しい豊川さんの声が加わることでamazarashiの楽曲は儚さと美しさが増すんだと思う。

僕はamazarashiのライブにおいて個人的にアルバムの曲も楽しみだけどそれ以上にどのタイミングでアルバムの曲から外れて既存の曲を組み込むかをとても楽しみにしている。その楽しみの幕開け。何処か儚く懐かしいようなギターと流れるようなピアノのイントロが聞こえる。「灰の歌才能不在愛弔い」と歌う。14歳。セトリの驚きと前述のイントロで涙腺が早くもダウンした。個人的にこの曲がすごく好き。何故か好き。amazarashiあるあるで好きな曲を好きになった理由はなんか分かんないけど本能的に好きになる。そのうちの一曲。最後秋田ひろむがオクターブ上げて才能不在を歌う。

アニメーションが流れる。この絵を知ってる。無題だ。ここでこのライブのテーマの1つが生活である気がした。「変わっていくのはいつも風景」。そのとおりだ。売れないながらも好きな人の1番の絵であった男。需要に答えて自分の筆を変えて人の心を掴もうとして彼女の一番を見失った男。絵描きとしての幸せと恋人との幸せ。片方を取ればもう片方は溢れるのだろうか。

秋田ひろむのポエトリーが始まる「辻合わせ」という言葉に身体が震えた。その期待通りに水のせせらぎの音とピアノの美しい旋律が空間を掌握する。つじつま合わせに生まれた僕ら。どこかおとぎ話のような匂いのするこの曲はとてもamazarashiの雨晒しを表現していると思う。

会場の空気が変わるのを感じた。ステージが赤く染まる。不協と悲壮を感じるイントロが流れる。「ヤクザのバイトで密猟溺れて死んだ上級生」。どうやったらこんな出出しが書けるんだランキング上位のスワイプ。暮れる日を止めろ。言葉の力と体感、圧倒的なステージングに言葉を奪われた。カッコいいという表現では表せなかった。

ボーカルマイク近辺の音はかなり拾うらしい。秋田ひろむがチューニングをしたり咳払いをしたりペットボトルの水を飲んだりする音が聞こえてくる。その度にやっぱり秋田ひろむは実在する人間なんだと、ちゃんと呼吸もしてるしチューニングもするし水も飲む。ちゃんと現存の人物なんだと何だか嬉しくなった。

アルバムの曲に戻る。君はまだ夏を知らない。amazarashiの語る夏には物悲しさととてもキレイで鮮明な暑さが見える。決して暑苦しく夏を語らない。amazarashiの好きな部分だ。

学校のチャイムを交えたピアノのイントロに震えた。ここまでのセトリだけで十分に良い意味で期待を裏切られていた僕はもうお手上げ状態だった。脳があまりの贅沢に機能しなくなってきた。月曜日。学生時代自分の存在や立場に悩んだ僕に「コートラインは僕らを明確に区分する」という言葉は刺さる。「好きなこと好きって言うのそんなに難しかったっけ」「嫌なこと嫌って言うのそんなに自分勝手かな」。繊細で難しい学校生活を送っていた僕にとってのこの曲の歌詞は何か自分の事を語っているのではないかと思う。きっとamazarashiを好きな方も同じように思うのかもしれない。似た者同士なら一人じゃないのかもしれない。

再びステージの空気が変わる。再び赤く染まる。不気味さの混じった落ちていくようなイントロが始まる。海洋生命。このダーキーさがたまらない。バンドメンバー全員が全身を揺らしながら音を放つ。ロックバンド全開モードのamazarashi。もはや誰も勝てないのではないかと思うほどの1番の迫力。圧倒された。

超新星。一気に宇宙空間のような浮遊感に包まれる。この曲の語呂合わせは秋田ひろむの言葉の力を醸し出している。次いで自由に向かって逃げろ。何か7月の初夏を匂わせるような始まりと爽快感。またまた空気が変わる。空に歌えば。この辺りからスピード感が増していよいよライブの後半の佳境に向かっているのだと悟る。丁寧に語る秋田ひろむも好きだけどエレキかき鳴らして右に左に揺れる秋田ひろむもカッコいい。

聞き覚えのあるピアノのイントロ。僕はこの日1番の曲にこれを選ぶ。一瞬何の曲か思い浮かばなかった。「忘れたいこと忘れたくないこと」。そうだ。美しき思い出。ただただ美しいと思えた。秋田ひろむの中で過去を振り返る曲。これまでのamazarashiを振り返る事が出来る曲。忘れたいこと忘れたくないこと。この言葉が頭の中を巡る。最後のアウトロアレンジは鳥肌だった。最後まで歌い叫ぶ忘れたいこと忘れたくないこと。秋田ひろむにとって忘れたいことと忘れたくないこととは何だったのだろうか。それでもこの曲はこれまでのamazarashiすべてを包み込んでくれるような気がして僕も好きだし恐らく秋田ひろむも好きなんだと思う。そんな気がする。

「ありがとうございます」
という声。MC。秋田ひろむが手を前や後ろに組んでギュッとしている。あれはズルい。可愛い。ラスト2曲という言葉にいよいよ終わりを感じる。

今回のアルバムの中で1番好きな曲。ごめんねオデッセイ。「ごめんねオデッセイ」という言葉合わせがとても残る。

最後の曲。何か大きな大義の中で葛藤を抱え生きているような物悲しいイントロが流れる。アンチノミー。1番の迫力だった。もうこの辺りはこっちの体力やられすぎてなんかもうちゃんと覚えてない。それでも秋田ひろむなりの生きていてほしいという願いは伝わった気がする。

あっという間の2時間。たしかにamazarashiを実感した2時間。終わった直後の喪失感と突き動かされた感を手に握ったままの帰路。簡単には掛からない自分のエンジンを吹かされたような気分だった。




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