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【#06岡山市3/14】自治体職員のガッツリ伴走!GovTech Challange OKAYAMA

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xG(クロスジー)メディアは自治体とスタートアップの共創に関する有益な情報をお届けするメディアです。
コンテンツ第一弾として、全国の自治体施策の報告会をnoteにまとめていきます。
『自治体施策を活用してみたいけれどよくわからない』と思っているスタートアップの方々の参考になれば幸いです。

読んで欲しい方

・自治体施策を活用したいけど概要がわからない
・実証実験のメリットを知りたい
・どのような成果があるのか知りたい

「GovTech Challenge OKAYAMA」とは

岡山市では、スタートアップの成長支援とデジタル技術等を活用した社会・行政課題の解決を目的とした新たな事業として「GovTech Challenge OKAYAMA」を今年度よりスタートしました。
中四国の市町村としては初めての取り組みとなります。

担当課の職員が伴走し、一緒に課題解決に取り組んでくれます。
経費も前払いで上限50万円(税込)の経費支援があり、交通費などの移動にかかる部分が抑えられます。


採択企業全5社の実施報告レポート


株式会社Solafune

海ごみはどこからやってくる!?
上空からの画像の解析により河川流域をモニタリングしたい!
(岡山市環境事業課×株式会社Solafune)

●地域課題の概要
岡山市内の陸で発生した海洋ゴミが水路や河川を流れ、そのまま海へのごみ流出に繋がってしまう。
海へのごみ流出を防ぐため、岡山市内の河川等のごみ溜まり(ホットスポット)を見つけ、海への海洋ゴミ流出を防ぎたいという課題からこの実証実験を行った。

●実証実験参加理由
Solafuneは、競技形式の衛星データ解析プラットフォーム「Solafune」を運営。
環境事業課の課題は、solafuneを活用してホットスポットの発見に活用できると思い応募。

●実証実験の成果
GoogleMapの航空写真を用いて、ホットスポットをAIで判別できるようにし下。
従来、ホットスポットの検出は航空写真約2万枚の写真を検証する必要があり、手動でやろうとすると2人で2週間の作業となったが、AIを活用することで0人で約2時間で作業が完了。大幅な工数削減の成果が出た。

●今後のアクション
1.精度の向上
2.データ取得コストの縮減
3.航空写真以外での検証

Solafuneは、衛星データ解析のコンテストを運営しており、世界中のAIエンジニアが登録している。コンテストとして運営し精度UPを図る。
また今回は航空写真で検証したものの、今後は衛生データで検証し、より精度が高い分析を目指していく。衛生データは取得コストが高いためコストを下げるための技術開発も必要。
今後は、より精度を向上させ、岡山市だけでなく「海ゴミ」問題に悩む全ての自治体にも活用できるサービスを目指したい。

xGメディア事務局コメント
いま環境で問題となっているプラスチックゴミをAIで判別できるサービスを開発していました。これは日本だけでなく世界でも同様の課題なので、国内の自治体には是非とも早く導入してほしいとプレゼンを聞いてて感じました。
またSolafune社の魅力は、世界中のAIエンジニアがSolafuneに登録していることだと思います。短い実証実験の期間で航空写真をここまで分析したスピードなので、もう少し時間があれば精度はあっという間に向上するのではないかと思いました。
環境省がこのサービスを認め、国内の全自治体に導入してもらう日が来るかもしれません。Solafune社の今後の動きにも注目していきたいです。


株式会社ARTEE

文化芸術と市民の距離を縮めたい!
(岡山市文化振興課×株式会社ARTEE)

●地域課題の概要
岡山市では芸術に関する政策や劇場が新たに開館されるなど岡山市の文化芸術は転換期を迎えている。しかし、現状は岡山市民は岡山市の文化芸術イベントに参加したことが無い人が60%を超えるなど、芸術に関しての意識は低い。
そこで岡山市民の文化芸術イベントへの参加者や関心層の拡大を狙うとともに、岡山市在住のアーティストやクリエイターを支援する仕組みづくりという新しい展開を模索したいという点から実証実験を行った。

●実証実験参加理由
アーティストの作品を投稿しコンテストなど行う事ができるプラットフォーム「ARTEE」にて、岡山市の課題である文化芸術に関しての参加者・関心層の拡大、そして発信力の強化、クリエイター支援の仕組みづくりを解決できると思い、応募。

●実証実験の成果
実証実験では、ARTEE上で「【ARTEE×岡山市】文学創造都市岡山イラストコンテスト」というコンテストを実施し作品を集めた。
応募頂いた作品の中から優秀作品を市民美術館で展示や市内各所で展示。
発信強化をするため、instagramで投稿すると協賛企業から特典が当たるSNSキャンペーンの実施など関心層の拡大を図った。

結果として、市民美術館での来場者はR3年度の269人を大きく上回り418人を達成。
instagramによるSNSキャンペーンを行った事により多くの方にリーチできた!
WebやSNSを活用したことで新たな層にリーチできた点、そして岡山市内のクリエイターのニーズもキャッチできた。

●今後のアクション
今後はイラストコンテストだけでなく、写真や絵画のコンテストなど横展開して幅を広げる。
今回はコンテストだけの検証だったが、クリエイター支援を行いたい企業が多い事もわかったため、クリエイターが独り立ちできるような仕組みも合わせて作っていきたい。

xGメディア事務局コメント
岡山市の今回の課題と、ARTEE社が提供するサービスにまさしくFitする内容だったと思います。岡山市内のまだ知られていないクリエイターを見つけることで、地域活性に繋がる新たな取組みになると感じました。
協賛企業からマネタイズをするモデルなので、自治体連携のハードルは低く(なんなら自治体との連携不要)、他自治体にも横展開がしやすいものと考えますので岡山市の実績を元に他市への展開を応援しています。


株式会社ほいらく

町内会DX!助成金申請の電子化で役員の負担軽減と持続可能な地域づくりを目指す!
(岡山市南区役所総務・地域振興課×株式会社ほいらく)

地域課題の概要
現在紙で行っている町内会の申請手続きを、オンライン化して多様な世代に対応した助成金申請システムをつくる。町内会の意見を取り入れながらオンライン申請システムの有効性や利便性を検証した。

実証実験参加理由
株式会社ほいらくは「ほいらく」という保育施設を探すサービスを提供している。
ほいらくを運営している中で、子育て世代が行政の申請手続きに苦労している事に気づきどうにかしたいと考えていた。
子育て世代だけはなく、高齢者含む多様な世代が地域活動に携わる、活力ある地域を目指したいと思い、応募に至った。

●実証実験の成果
質問形式で回答するだけで申請ができる「LaLINK(らりんく)」のシステムデモ版を構築し、町内会の役員等、参加者26名で検証。
参加者は70代以上が61%以上で、スマフォ利用歴3年未満が27%という状態。

今回の検証では、町内会の方に実証実験に参加してもらう工夫をしたのが一番大変だった。
スマフォの基本操作講座や、学生主導で行う楽しみながら学べるスマフォ教室の開催など工夫。
その成果もあり、参加者からは苦手意識はあるけど便利になるなら使いたい!というお声を頂いて、使い方さえキチンと学べれば使ってくれることが検証できた。

今後のアクション
今後は「LaLINK」を岡山市南区でモデル事業としてスタート、そして他の4区役所で活用してもらうよう進める。
また、自社サービスとして提供している「ほいらく」にも同様に「LaLINK」を連携させて子育て世代の方々にも活用させていきたい。

xGメディア事務局コメント
自社サービスへの今後の展開を視野に入れた良い検証だと思います。
今回の検証で構築した「LaLINK」を自治体へ提案し、そして併せてメインサービスである「ほいらく」を提案する流れができそうです。
また既に市のモデル事業として活用が進んでいるということで、良い走り出しかなと聞いてて感じました!助成金申請の種類がどのように増やせるか、今後の拡張に期待です。



株式会社HYPER CUBE

早めの対策でいつまでも健康に!フレイル健康チェックを広げたい!
(岡山市地域包括ケア推進課×株式会社HYPER CUBE)

地域課題の概要
フレイルとは、病気ではないけれど、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態を指す。
介護予防の取り組みに繋げたいため、岡山市内の高齢者14万人(要介護状態の高齢者を除く)にフレイル健康チェックを受けてもらいたいが、昨年度は 3,400人程度しかチェックを受けていないのが現状。
課題として、以下が挙げられており、実証実験を実施。
①フレイル健康チェックを受ける動機づけが弱い・・・「受けてみたい!」と思うような魅力的なものにできていない
②フレイル健康チェック実施機関の負担が大きい・・・薬局からシートの郵送や、紙に記載されている内容をデータ化など手間と負担が大きい

●実証実験参加理由
「遊び」が「予防」になる社会を創るというミッションの元、この課題解決に応募。

実証実験の成果
従来だと薬局へ行って受付し紙でチェック。アドバイスを受けた後にチェックした紙を市役所に郵送。市役所は紙で受け取った内容をデータ化と手間と労力がかかる。
このフレイル健康チェックを一気通貫で、アバターが質問してチェックしていくアプリを開発。
90%以上の高齢者から「満足」及び他の人に紹介したいと評価された。担当スタッフは約80%が負担軽減を実感したとの結果が得られた。

今後のアクション
個人情報の部分が実証実験期間内では紙での対応となってしまったため、紙記入をなくし全てタブレット入力にしていきたい。
そして、高齢者の「難しい・・・」を少しでも簡単にしていくためUIUXの改善をしていきたい。
また、今回はタブレットを配布し実験を行いましたが、既存のタブレットにアプリを導入してもらう仕様で実施機関を増やしていく。

xGメディア事務局コメント
サービスの質はもちろん、会社の特性を活かした良い新規サービスを作れたなと思っています。特に発表を聞いていると自治体職員の方が、色々と動いてくれていたとのことで伴走の効果が出たんだなと感じました。
また個人情報絡みは自治体は何かとセキュリティに厳しいため、この問題を解消できたら導入はすぐかなと思います。


Intelligence Design株式会社

目指すはまちの活性化!AIを使った通行量調査の有効性を検証したい!
(岡山市産業振興・雇用推進課×Intelligence Design株式会社)


地域課題の概要
街中の賑わいを可視化したいという課題からこの実証実験を行った。
商業支援の施策を検討するデータとしてはデータ量が少なく、効果的に活用できていないのが現状。
また、コロナ禍で街中の人流が大きく変化しているなかで性別や年齢などの属性情報をリアルタイムに把握する必要があった。

●実証実験参加理由
自社サービスとして提供している「IDEA counter」が、この課題を解決できると思い応募。

●実証実験の成果
「IDEA counter」を商店街に入れ、24時間常時接続することで以下の情報を取得。
・時間帯ごとの通行人数
・性別、年代の推定情報
・通行者ごとの通行方向(入場/退場)

実証実験の結果、従来人で計測していた結果と「IDEA counter」で計測した結果が、99%の精度と遜色のない精度で計測ができていることを証明できた。
分析の結果、バス無料運賃DAYのタイミングでは総通行者が23%増、中でも女性の利用者が27%増加していることがわかった。

●今後のアクション
得られたリアルタイムのデータをどのように活かせるの検討が大事。
データを岡山市のオープンデータとして公開し、行政だけでなく民間企業にも活用してもらうように動いていきたい。

xGメディア事務局コメント
従来の交通量調査では、日雇いアルバイトで依頼していた分、人件費としてのコストは削減できたと思われるため効果が見込めたと思います。
ただ、商店街のコメントでもありますが、人流のデータを元にどのような活性化をしていくのかが次の課題になると思うので、次の一手をどのように課題解決していくのかにも今後の拡大に期待です。

全体に質問

Q.GovTechチャレンジ、参加してよかったですか?

行政と取り組んだことにより、営業時に岡山市との取り組みについて聞かれたり、信用獲得に繋がったのでよかったです。

Q. 事業にとってプラスの面、新しい発見はありましたか?

行政とプロジェクトをやるのに、スケジュール感を知れてよかったです。
どのタイミングで予算が必要か?など。

Q.市役所と一緒に動くことで「やりづらい」「 正直つらいな」と思った場面はありましたか?

3ヶ月間という短い期間だと、思っていたような検証ができませんでした。
あとは自治体内のセキュリティ。色々とセキュリティが厳しすぎるので手間がかかりました。

翌年度の予算取りを取るのが大変そうでした。
職員の方には色々と動いてもらったので助かりました。

Q.他のスタートアップにオススメしたい?

業態によると思います。
社会課題解決という視点の場合や、行政と組みたい!と戦略的に考えられている場合は大いにアリですが、行政内のしがらみが多いのでスピード感という点では劣ると思います。
金銭的に余裕があるスタートアップはオススメできます。


xGメディア事務局まとめ


全体の報告を通して、岡山市の成果報告会では担当課の職員と一緒に発表しているのが非常に好印象でした。伴走して、一緒にガッツリ取り組んでいたんだろうなと成果報告会を聞いてて伝わりました。
また、初めに地域課題について職員の方が具体的に背景を交えて話していたので初見の方でも伝わりやすいと感じました。

職員の方も、今回の検証だけでなくスタートアップ視点に立ち、今後どのような拡大戦略につなげていくかを発表している点もあり好印象でした。
岡山市の実証実験は、岡山市以外にも拡大していくための初めの一歩として選ぶのなら非常に有効な施策だと感じました。

一点懸念としては、実際のプロジェクトが、やはり5ヶ月間という短期間では、プロダクトが動いている前提(サービスとして提供できている)でないと厳しいと感じました。
今回ゼロベースで取り組まれた企業もいて無事検証を終えられていましたが、やはり3ヶ月間はある程度プロダクトが固まっていないと十分な検証ができない印象があったのでプレA以降のスタートアップを推奨します。


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