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さよなら日和

恩師の葬儀だった。
師の、そのまた師は、西行の歌が好きで、その歌のとおり、桜の季節に亡くなった。
『願わくば花のもとにて春死なん・・・・・・』という、あれである。
そして、その愛弟子であった師もまた、桜のもとに旅立った。
桜の盛りなど、狙って叶うものでもない。
こうもドンピシャに、満開、そして晴天。
見事なものだと思う。
人生を精一杯走り切った人は、最後にこんな奇跡を起こす。
『天晴れ』という言葉は、こういうことを言うのだろう。
それに引き換え、三歩進んで二歩下がり、一休み二休みしては右へ左へ道草三昧で生きてきた自分を、ちょっと反省しようと思う今日。

満開の花を見上げて思った。

―――さよなら日和。

この桜もまた、まもなく潔い最期を迎えるのだ。

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