初めてのランドのベンチで9時間待機しました。

2022年の10月、人生で初めてディズニーランドに行った。
朝一入園するやいなやウエスタンランドに入る橋の近くのベンチに座り込み、そこで9時間の時を過ごした。何故初ディズニーランドにしてそのような行動を取るに至ったのか……

それはヴィランズの手下がパレードにて復活するから!

ヴィランズの手下は、2014年〜2018年までのハロウィン期間、東京ディズニーシーで人間界でヴィランを増やすためマスターヴィランズに派遣されてリクルート活動を行うためにやってきたヴィランの手下、という形で活動していた。

私が初めてヴィランズの手下を知ったのは最終年の2018年の秋、初めてディズニーシーに行くことになり、その下調べをしている最中だった。
アトモスフィアで1日6回、不定期にリクルーティングショーを行っているヴィランズの手下たち。
キャラビジュも言動もショーの内容もオタク心をくすぐられにくすぐられ、すぐに虜になってしまった。虜というよりあれはもはや中毒に近い。
しかし、2018年で彼らの活動は終了してしまい、絶望と共に冬を迎えた。

しかし!

2022年の9/15、東京ディズニーランドのハロウィン期間が始まりハロウィン限定のパレードのフロートに予告無しでヴィランズの手下たちが出現したのだ。Twitterは大いに盛り上がり、私もそれを知って即座に東京に住むFFにLINEを送信した。
彼女は舞台俳優界隈で仲良くなったお姉さんなのだが手下たちを必ず気に入るだろうとの算段があってのことだった。
が、向こうは社会人。お休みが合うかどうか……

自分「ディズニーのヴィランズの手下ってご存知ですか?今年のハロウィンからパレードでヴィランズの手下が復活するらしくて、もしよろしければどこかの土日で御一緒しませんか?」

もし駄目なら人生初ランドが一人インパという上級者向けのイベントになってしまう……どうか……

お姉さん「いいよ〜私も気になってたんだよね」
「いつ行く?」

やった〜〜〜〜!!!!

これで一人インパは無事逃れた。しかも仲良しのFFとのランドデート。

お姉さん「ちなみに私ジャックハートが好きなんだけど出るかな??」

出ません!すみません!

兎にも角にも2人でインパすることが無事決まり、その他のホテルや日程の話も、ものの15分でまとまった。
ディズニーランドに行く話が誘って15分で決まることがあるのか、これが関東住みの余裕なのだろうか……

結局せっかくなのでハロウィン期間の最終土日である28.29の2日間でチケットを取った。
人生初ランドに、脳内ではドーパミン噴出、多幸感の嵐にドキドキウキウキしまくっていたのだが一つ問題が生じた。

パレードって早くから場所取らないとみられないのでは……?

Twitterであれだけ盛り上がっている手下たちの復活、ただでさえ注目されるハロウィンのパレード、しかも最終土日……何時に場所を取れば良い位置とされる場所でパレードがみれるのかという疑問が脳内に湧き上がった。
舞台俳優界隈で知り合った自分とお姉さんは、大概の舞台俳優オタクの例に漏れず共に良席厨であるため、人の後ろからちらっとみえる手下たちでは満足できないことはどう考えても明白であった。

そして手下界隈のツイッタラー、絵師等、様々な人のツイートやアドバイス集などを調べて出た、最良と思える結論は朝一から場所を取ることしかなかったのだ。

朝6時前に東京駅鍛治橋に着く夜行バスに乗り込み(ちなみに広島で乗る予定だった夜行バスを乗り過ごし、次の停車地である岡山駅まで新幹線で先回りした。人生で一番無駄な新幹線だった)、7時頃に東京駅でお姉さんと待ち合わせをして、8時過ぎには開園前の列に列ぶことができた。

並びながら時折前に進む列の最中にネイルチップを爪につけるという苦行に身を置いたお姉さんは、チップを地面に落としてみたり、サイズ調節に苦労したりしながらも、無事に可愛い手元に仕上がりご満悦の様子だった。

自分自身も4年前買ったカチューシャを早々にとりつけ、見るからに大はしゃぎの様相を呈した。ちなみに、4年前に買ったアースラ様のカチューシャはメルカリで2万円に跳ね上がっていた。その額定価の約10倍である。恐ろしい。

暫く待って開園したのであろう、ぞろぞろと列が進み、荷物検査を経てTikTokなどでよくみるディズニーVlogのようにQRコードをゲートにぴっとして、無事に入園した。入口からディズニーキャラクターたちがグリーティングをしており、本来ならいよいよ夢の時間の始まりである。
しかし、自分たちには大きな目的がある。パレードを見るのに最適な場所取り。これが何より大切なファーストミッションだ。

入園の高揚と撮影もそこそこに場所取りのため、やや早足で歩いた。
当初はホーンテッドマンション付近での場所取りを考えていたが、シンデレラ城付近のベンチをみて17時まで待つのならベンチでないと尻が持たないのではないかと2人で言い出した。
入園が8:30で17:20にパレードが開始、単純に計算しても9時間以上は待つことになる。
柔らかめの椅子のある劇場の3時間の公演ですら毎度尻を痛めている大人2人、9時間も地面に座れるか?
2人が出した答えはNOであり、迷うことなくベンチに座ることとなった。

17:20までは、空腹を感じる度に代わる代わる食料を調達しに行った。それはチュロスであり、サンドであり、リトルグリーンまんであった。
どれもテーマパークの食べ物とは思えないくらい美味しい。初ランドからベンチを決め込んだとはいえ、食料調達のタイミングは園内を探索する機会でもあり、並びながら夢の国に思いを馳せた。
どこをみても非日常で溢れており、ゲストも皆笑顔だ。自分も自分の食料調達の番が来る度に、にやにやしながら園内を歩き回って食料をベンチへ持ち帰った。
そんなこんなで過ごした9時間はあっという間だった、と言いたいところだが、流石に9時間はそれなりに長かった。
本来であれば9時間は、東京-広島間を新幹線で往復できる時間であり、人間の充分な睡眠時間でもあるのだ。
適切な表現をするのならば、ランドの外で過ごす5時間くらいの感覚だった。
ランドの外よりは時間の進みは早いものの、決して一瞬だったなどといえる時間ではない。

当たり前だが良い場所のベンチを陣取ったが故に、手下たちが出演するお目当てのパレード、「ザ・ヴィランズ・ロッキン・ハロウィーン」の他にも「スプーキー“Boo!”パレード」や「ドリーミング・アップ!」など様々なパレードを間近で鑑賞することができ、ディズニー及びディズニーコンテンツの凄まじさを思い知った。

普段は舞台俳優のオタクとして推しにキャーキャーいっているが、今日ばかりはディズニーキャラクターたちにキャーキャーいわせてもらおうと、食い入るように眼前に繰り広げられるパレードを見つめた。
そんな愚かな自分たちにも、慈愛の目に満ちたキャラクターたちは差別なくこちらを見下ろし手を振ってくれる。
ドリーミング・アップでは幼い頃からスクリーンの中にいたプリンセスが有名すぎる劇中歌とともに幸せそうに踊っているのをみて、不覚にも感動で視界が霞んだ。

肝心の「ザ・ヴィランズ・ロッキン・ハロウィーン」は、突然園内のスピーカーから絶対的に聞き覚えのあるイントロと共に始まった。4年ぶりに園内で聞くイントロに興奮が熱湯の如く体内を駆け巡り収まらない。

そこからはもう一瞬だった。
マルフィとエイトフットの掛け合いとともに眼前に現れた列車は、あまりにも魅力的すぎる2人を乗せて進んでいく。

女海賊ホックとフック船長、マレフィセント様、ファウルフェローとギデオン、クルエラ様とMr.ダルメシア、女王様とアップルポイズンのフロートの順で、それぞれが魅惑的な口上とポーズで続いていき、こちらはヴィラン一人一人に心酔せんばかりにリズムに合わせ手を叩き、ひれ伏すことしかできなかった。

4年ぶりの彼らは相も変わらず美しく、魅力的で、禍々しい求心力を持っていた。4年前と違い手下とマスターヴィランズが同じフロートに乗っていたり、マスターの目の前で忠誠を誓う様子を見せつけられ、こちらもいやおうなしにに盛り上がった。

最後のアップルポイズンが過ぎ去ったあと数秒放心していたが、すぐにキャストさんのアナウンスで我に返り、名残惜しい気持ちを抱えつつ我々はジャングルクルーズへと向かった。

大勢の人のようにアップルポイズンの乗った最後のフロートを追いかけたい気持ちはあったが、何となく舞台界隈における出待ちオタクのような感じがして気が向かなかったのと、翌日もチケットを取っているとはいえ初ランドにてすでに10時間を同じ場所で過ごしているため、せめてギリギリまでアトラクションを楽しみたかったのだ。

お姉さんと口々に手下やヴィランズを褒めたたえながらジャングルクルーズへと爆進した我々はエレクトリカルパレードが始まるまでディズニーランドを楽しみ尽くしたのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?