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盆踊りに、溶けたい

気付けばお祭りの季節だ。

でも、もうお盆も終わり。例年やっている近所のお祭りは中止発表すらなく、ただ静かに夏が終わっていく。

私は冬が好き。その裏返しで夏が嫌いだ。だけど、夏祭り、もっと言うと盆踊りはとても好きだ。

夏祭りは私と縁の無いイベントだった。住んでいた場所が新しくできた住宅地だったりして、夏祭りが今まで近くに無かった。

だけど、今の場所に引っ越してきて、近所の団地で夏祭りがあることを知った。

小さい団地なこともあり、広報は団地近くの掲示板のみ。そもそも「団地内の広場で開催」みたいな書き方で、いまいちどこでやってるかもわからない。

だけどこの時期、夏祭りが近づくと団地内にお祭りの提灯がぶら下げられる。

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掲示版に書かれた日に、その提灯を頼りに歩いていくと、だんだん太鼓の音が大きくなる。そして屋台とやぐらが見えて、お祭り会場に着いたことを知る。

まずこの「お祭りへの導入」が好き。わくわくするよね。

屋台、といっても数えるほどしかない。だけど、業者っぽい人はあまりいなくて、おそらく近所の人で協力して出店してるように見える。

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気の良さそうなおばちゃんたちがせっせと焼き鳥を炙り、子供たちが嬉しそうにそれを眺める。そんな景色もすごく好きだ。

やぐらがあるのはお祭り中色んな出し物があるから。だけど特に終盤にかけてはずっと盆踊りのステージだ。

正直に言うと私は最初、この盆踊りは「見る派」だった。盆踊りを間近で見たことすら無かったので踊り方も知らないし、なにより人前で踊るなんて恥ずかしい。

だけど、一緒に行っていた妻が「楽しいから」と言うので、こっそり輪っかの端っこに入ることになった。

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やぐらの上ではベテランの皆様が浴衣を着て優雅に踊っている。私はそれをガン見で真似した。

そしたら、意外なことにすぐ覚えた。

(当たり前なんだろうけど)基本は同じ動作の繰り返しだし、とてもゆっくり。間違えても誰も気づかないだろう。

そもそも踊り方は結構人それぞれで、めちゃくちゃダルそうに踊る人もいれば、別の踊りに見えるぐらいキレてる人もいる。そんな懐の深さも盆踊りの良さ。

盆踊りは基本大きな円になって人が並んで踊るものらしい。途中で輪に入ってくる人もいれば、抜ける人もいる。その度にちょっとずつ輪の大きさを変えながら、でも静かにみんな踊り続ける。

どこが先頭かもわからず、自分の前の人が誰かも知らず、ただ音に身を任せゆっくり踊る。そんな不思議な、とても緩い一体感が好きだ。

ずっとやっていると、だんだん頭が空っぽになる。

似たような音でずっと踊っているからだろうか。「興奮」とは違うけど、でも静かな楽しさに包まれ、何も考えずに踊っていると、自分が盆踊りの輪に溶けていくような心地になる。

この何かに身を任せながら、平和に時間が過ぎていく空気感。たぶんこれがもっとも私が盆踊りが好きな理由だ。

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それから妻と私はすっかり盆踊りが好きになり、帰ってからYoutubeを見ながら練習したり(←正解が少し気になっていた)、わざわざ盆踊りがある都内のお祭りに千葉から出かけていったりした。

それがもう2年以上前..。早く平和な日常が戻ってきてほしいと、切に願う。

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