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歩車共存道路ってなに?

歩車共存道路とは

 歩車共存道路とは歩道と車道の区別をつけることなく、通行空間を歩行者と自動車でお互いにシェアしているような道路です。別名”シェアードスペース”とも言います。

 日本において生活道路の大半が歩車共存道路の形態となっていますが歩道と車道は構造的に分離するという考えのもとで歩道整備が進められてきました。しかしながら、歩道の有効幅員は最低2.0m確保しなければ車いす同士のすれ違いを行うことは困難なため、歩道を設置したくても設置できるような幅員が確保できない道路はたくさんあります。

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 また、有効幅員が十分確保できずに歩道を設置した場合、通行空間として不十分な歩道となってしまいます。このような歩道では車いすの通行は大変困難です。

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 そこで幅員が狭い道路でありながら歩行者の安全性を守りつつ、自動車交通との共存を考え、視覚的に歩行者の空間と自動車の空間を分けた整備手法が歩車共存道路となっています。

歩車共存道路のデザイン

 歩車共存道路のデザイン手法は国土技術政策研究所の資料で以下のように整理されています。

http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1026pdf/ks102609.pdf

歩車共存道路 イラスト

 基本的には全面車道として、緩やかに歩行者の空間と自動車の空間が舗装などの違いで分けられています。また、自動車の速度を抑制するようイメージハンプのデザインなども考えられています。

イメージハンプ

歩車共存道路の課題 

 しかしながら歩車共存道路とは自動車の速度を抑制するようなデザインをしていますが、歩道と車道を物理的に分離しているわけではないので歩行者の安全性を完全に確保できているものではありません。
そのため、警察協議では歩道を設置可能な幅員のある道路は歩道を設置するために、歩道と車道を構造的に分離することが求められます。

 また、歩行者の空間として広く確保するためには歩者共存道路の構造は道路に段差もないため、車いすのバリアフリーとしては優れていますが、視覚障碍者の方は車道の真ん中を通行する危険性があることは課題です。

このように様々な課題のある歩車共存道路ですがこの整備手法をする道路の前提としては「歩行者が優先であり、自動車は遠慮しながら通行する」という考え方が基本的にはあります。

近年では自動車の通行空間を確保しながらも、基本的には歩行者が優先の道路整備が海外では進められています。

写真はニュージーランド・オークランドのエリオットストリートです。ベビーカーと自動車がすぐ近くを通行していますが自動車は速度を緩めてベビーカーが通り過ぎるのを待っています。

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歩車共存道路のこれから

 このような道路を実現するには歩行者以外の交通手段を利用する人々が道路の通行は第一に歩行者であるということをルール付けて、意識づけることが必要だと思います。
どうしても限られた道路空間で様々な交通手段が通行できるようにするためには結局はお互いを思いやる気持ちを持つということが大切になると考えています。

国土交通省が将来ビジョンで掲げている交通事故ゼロの空間を整備していくためには人々の心や行動を動かすハード・ソフトの整備が必要になってくると思います。

https://www.mlit.go.jp/road/vision/pdf/01.pdf

人と車両が空間をシェアしながらも、安全で快適に移動や滞在ができる
ユニバーサルデザインの道路が、交通事故のない生活空間を形成する

歩車共存道路

 今後とも人々が安心して公共空間でお互いを思いやって過ごせる空間を考えていきたいと思っています。

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