シャローンの初陣6-サイレント ネオ-ムーン ソング

西門を守るのはシュミット大佐である。
シュミットは戦争での功績はほとんどなかったが、内政…特に経済面で貢献し、西門を任せられるまでになった。
そんなシュミットには副官としてライガ・ノイエがつけられていた。
ノイエはエビルの親衛隊として活躍した軍人であり、忠臣の1人として知られる武骨な男である。
シュミットは北閥に寝返ることは、当然ノイエが反対するとわかっていた。
そのため、基地にある地下の独居房にノイエを幽閉してしまったのである。
代わりに北閥より顧問としてアガシを招きよせていた。
50機の精鋭をひきつれてやってきたアガシの軍を加えたため、西門には80機ものCAが集結していたのである。
アガシは北閥でも上位5人に入ると言われるエースパイロットの1人だった。

西門にシャローン強襲の報がもたらされると、シュミットら西門の兵士に動揺が走った。
シュミットはレビルが恐ろしいほどに強かったのを知っているからである。
その娘は「鳳凰の雛」と言われており、戦の経験はないものの油断できないことを、アガシに伝えた。
しかし、腕に自信があるアガシは、最初から高をくくってシャローンのことを軽く見ていた。
「鳳凰の雛じゃと。まだ戦にも出ていない小娘に対し、なにをそれほどお恐れなさる!
しかも、相手はたかだか40機ほどというではないか。我が軍の半分である。
安心しなされ。この私が出陣し、その小娘の首を間もなく持ってまいりましょうぞ!」
これを聞き臆病なシュミットも少しばかり安心したが、まだ心配は消えない。
「アガシ殿、しかし、シャローンはともかく、父親のエビルは月歌一といわれた将軍です。あまり油断せずに対峙するべきです」
「シュミット殿、私を何者と心得る。北方で名が通っているアガシとは私のことである。私が全軍率いてあっという間に敵を蹴散らしてやりましょう」
「全軍ですか…スパイの報告によると、森林から10機ほどのCAがこちらに向かっているとのこと。敵の来襲に備え、一部の兵は残していただきたい」
「シュミット殿、聞けば貴君は戦の経験が乏しいと聞く。森林は木が進軍の障害物となり、ここまでくるのに半日はかかる、心配はご無用。しかも相手はたかだか10機ではないか。その10機とは敵の陽動作戦ですよ。多数である我が軍を分散させようという企みでしょう」
「しかし…」
「シュミット殿、臆病風に吹かれては戦はできませんぞ! だが、それほど心配なら10機ほど守備のために西門のCAを残していこう」
こうして、話し合いも終わり、アガシは70機を率いて出陣したのである。

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