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フウコと小オアシス26-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「どこにいくんだい?」
「……散歩だよ」
「散歩だって!? こんな時に、どこにいくのさ!?」
「こんな時に散歩しちゃいけないって、決まりはないだろ」
「そ、そうだけど…」
「ついでに宿のおっさんに夕飯も作るように頼んでおくよ」
あ然とするオジャム達をしり目に、ムサシは何の動揺もみせずに、ポケットに手を突っ込むと、さっさと部屋を出て行ってしまった。

26-29話追加(ハルカナルのサイトを見ていただく方も増えてきたので、更新した場合、お知らせしていきます)

26

その少し前、西の湿地帯では、20mを超えるCAシェルの膝元まで水につからせたサムソンら5機が、夕陽に照らされながら移動していた。
その姿はさしずめ、巨人の水浴びといったところだが、大きな歩幅であっというまにオアシスをわたりきってしまった。
夕暮れの空は、いわし雲も橙色に染まっている。
その下で村を目の前にしたサムソン率いるCAたちが、獲物を狙う獣の如くそれぞれが武器をたずさえて、殺気を放っていた。
「けけけ…モーラ一家にたてついたらどうなるか、目にものみせてくれん!」

一方、北の入り口ではテディ・Dの攻撃の前にモーラ一家も被害は甚大、すでに10機体以上が撃墜されていた。
しかし、敵将モーラが立ちはだかりてこずる中、徐々にテディ・Dが劣勢になり、追い込まれつつあった。
入り口の方はモーラ一家のCAたちがくわえている猛烈な攻撃になす術がないままでいる。
障害物はかなり壊されており、そこを守る3機の農作ロボットをあやつる村人たちが不安げにたたずんでいる。

「お、おい、あの娘さんがやられたらどうするんだべ!?」
「それより、おらたちが積んだ障害物壊してるやつらをなんとかしないと大変だべ!」
「そうはいっても、おらたちが盗賊たちとまともに戦っても、どうにもならんぞ!」
「うーむ……」
このように妙案が浮かぶわけでもなく、みな押し黙ってしまった。
何せ農作ロボットは戦闘用ではない、急ごしらえのスピアこそ準備したが、遠距離武器さえそなえていなかったのだ。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(フウコと小オアシス/先行配信)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。



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