コンクリオン家の悲劇3 サイレント ネオ-ムーン ソング
オジャム総督が誕生すると、後見人にソデがつき実質的な権力を握った。
ソデはすぐにレッカに変わり、筆頭将軍にシャギを任命した。
さらに、ソデはレッカを栄転と称して西にある砂漠基地に異動させてしまった。
もはや対抗できる者がいなくなったソデは好き勝手にふるまい、何をするにつけても賄賂の額で物事を決めた。
本性を現したシャギ党は略奪を働くようになり、市民には怨嗟の声がこだました。
何の権力も満たない肥満児のオジャムは、政治の場に姿を見せないこともしばしば、ただ好きなものを食らうだけだった。
ソデ-オジャム体制になると、外交も変化した。
カイバは中立的な立場をとることが多かったが、敵対していた北閥がシャギに目をつけたのだった。
野望の塊であるシャギは、北閥と組むことを得策と考え、ソデを脅して停戦を結ばせた。
家臣の間には絶望感が広がり、心あるものは出奔した。
また、シャギは権力を絶対のものにするため、力ある武将を何かと理由をつけて次々と処罰した。
シャギの権力はゆるぎないものになり、家臣は目を合わせるのも恐れた。
瞬く間に変わっていくカイバの様子を、レッカ・コンクリオンはあ然として見つめるしかなかった。
砂嵐にさらされた基地で、呆然としていたのである。
レッカはカイバに残した一族に害があってはならないと、砂漠基地に呼び寄せた。
しかし、これにシャギが目をつけ、「謀反を起こすつもりか」ととがめてきた。
シャギはレッカに弁明するために、カイバの政庁に来るようにうながした。
だが、息子のレピを始め、一族はみな「虎狼に食われるために行くようなものです」と反対した。
そうこうするうちに、カイバにいるワームの息子、ワームJrが自分の館で挙兵した。
ワームJrは一部の武将と語らい、クーデターを起こすつもりだったのだ。
ワームJrは家臣を砂漠基地に派遣し、援軍を求めた。
それによると、クーデター軍の大将をレッカに依頼するよう頼みにきたという。
しかし、多くの一族が「無謀」だと反対した。
賛成したのは息子のエピだけだった。
それでも、レッカは承諾し、「確かに今、我々は少数に過ぎない。しかし、私が立てばきっと多くの忠臣が目を覚ますことだろう」と一族を説得し、すぐに準備にとりかかったのだ。
使者は涙して喜び、ワームJrの元に帰っていった。
実をいうと、この使者はワームJrの息子だった。
しかし、物事は急展開を迎えた。
挙兵したワームJrに対し、シャギ党は即座に対応して10将を率いて襲いかかった。CAの数、100機。
そのスピードに怖気づいた他の武将は、二の足を踏むのを恐れてワームJrを裏切り、約束通り兵を挙げなかった。
ワームJrは複数の館にこもった仲間と防戦し、レッカ軍を待つ作戦であったが、目論見が外れたのである。
孤立したワームJrの一族はその日のうちに鎮圧され、クーデターは失敗、一族が皆殺しにされた。使者だった息子も同じ運命にあった。
この知らせをコンクリオンの一族は、基地を出発して間もなく知ったのである。
「なんという速さじゃ」と一族にも動揺が走る。
「父上、この上は潔く一戦まじえて、後世に我が一族の名を知らしめましょう」
エピ・コンクリオンが血気にはやって進言する。しかし、レッカは首を横に振った。
「相手はわが軍の何倍であろうか…この上は、基地に戻り対策を考えるべきである」
こうして、コンクリオン一族は基地に戻っていったのである。
西日がその背中を照らしたが、寂しげでないものはいなかった。
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