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ムサシ、月歌に到着5 サイレント・ネオ-boy meets girl-

「なあ、お兄さんはあれだろ。夏休戦だから月歌に観光にきた口だろ?」
「夏休戦?」
「なんだ知らねえのか、月歌で最大勢力を誇るムーンキングダムと、戦争に明け暮れている北閥とが、夏の間だけ休戦しているんだ。おかげで、こちとらは暇ができて商売あがったりさ。まあ、とにかくあんたはいい時期に観光に来たってわけだ」

ゲンはムサシの肩をぽんと叩いた。

「今は珍しく戦争がほとんど行われていない状況にあるんだからな…」

ゲンは工場の裏手にある駐車場にムサシを連れて行った。そこには複数の輸送トラックやトレーラーが置かれていた。

「今はこんなにトラックが遊んじまってな…まあ、夏休戦が終われば、こんなこともなくなるだろうが…兄さん、それでどれくらいの日数を使いたいんだ?」
「そうだな…とりあえず、1ヶ月くらいかな」
「そりゃ丁度いい!」

ゲンがこういったのは、夏休戦が終わる期間と丁度、具合よく重なっていたからである。

「そうか…それで、俺は1機運べればいいんだが…?」
「1機用ってのはないんだ…この大型トレーラーは2機用だが馬力もあるし、安くしとくぜ!」

ゲンはそういいながら、良心的な金額を提示した。
ムサシは即答で承諾して、ゲンと力強く握手をした。ムサシの好きな職人のごつごつした手をしていた。

「助かるぜ、おっさん…いや、ゲンさんっていうのか、ゲンさん、サンキュー!」
「いや、俺も助かるさ。無駄が少し省けるからな。ところで、お兄さんの名前はなんていうんだ?」
「俺か、俺はムサシっていうんだ。ムサシ・ミナモトだ」
「ムサシか…まあ、何かあったらいつでも言ってくれ。じゃあ、俺は飯を食いに行くから、道中気をつけてな!」

ムサシにトレーラーの鍵を渡すと、腹を空かせたゲンは蕎麦屋に向かった。その道中…

「ムサシか…若いがずいぶん精悍な面構えだ…どこかで見たことがある気がしたんだが…はて。しかし、性格はさっぱりして悪くなさそうだ。あの金額じゃ赤字だが、気に入ったから安くしてやったぜ……だが、あれは早死にしそうなタイプだな。死なすには惜しいが…」

多くの軍人と付き合いのあるゲンは、会ったばかりのムサシの顔が頭にちらつきしばらく離れなかった。

一方、ムサシは宇宙ステーションにあるトラックヤードのドックでサイレント・ネオをトレーラに積み込むと、アストラルからいよいよ出発したのだった。

つづく…次はムサシ、3都を訪問

サイレント・ネオ-boy meets girl-(先行配信)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。







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