フウコと小オアシス31-サイレント・ネオ-boy meets girl-

オジャムはさっと木の後ろにかくれて、やりすごそうとしたが、村の建物を前にしたサムソンたちはマシンガンをかまえて、すぐでも攻撃を始める勢いだった。
「テディ・Dが1人で戦ってるんだ、僕が助けるんだ！」
オジャムは心の中でつぶやくと、何も考えずにCAの前にぱっと飛び出した。

30-32話追加(更新した場合、お知らせしていきます)

フウコと小オアシス-サイレント・ネオ-boy meets girl-

31

しかし、いざＣＡを目の前にするとあまりに圧倒的で、絶望的だった。
蟻が人間を見上げるかの如く、5機の巨人を前にオジャムは呆然と立ち尽くすしかなかった。
そのオジャムに気付いたCAたちが静止すると、サムソンがスピーカー越しに叫んだ。
「なんだお前は、このチビが！　踏み潰してやろうか！？」
一瞬、逃げようと考えたオジャムだったが、頭をぶるぶるっとふった。
「逃げちゃだめだ、僕がテディ・Dを助けるんだ！」

「お願いだよ、これ以上、村の人をいじめるのはよしてくれよ。子供だってかわいそうじゃないか。なんでそんなことをするんだ！」
これを聞くと、CAにのった盗賊たちは野卑た笑い声をあげた。
「小僧、ヒーローのつもりか！？　お前に頼まれてはい、わかりましたといって、何か得でもあるというのか！？」
「得って、損得で君たちはそんなひどいことをするのかい！？」
「ああ、そうだ、だから俺たちは盗賊なんだ！」
話し合ってどうにでもなる相手ではないのだが、オジャムは戦う術を持っていない。

絶望的な気持ちになるオジャムだが、それに追い打ちをかけるようにテディ・Dから通信が入る。
―オジャム、早く村の人たちを避難させて…北の、北の入り口が……
別人のように弱々しい消えそうな声でテディ・Dが言い終わるまでもなく、北の方で轟音が響き、火柱があがった。
「ひひひ、北の入り口も決着がついたようだな、小娘1人にずいぶんてこずらされたもんだ、たっぷりお礼をしないとな。まずは、小僧、お前をありのようにぺしゃんこにしてやろう！」
サムソンの勝ち誇る声を聞くと、オジャムは悲しげにつぶやいた。
「やっぱり、僕はてんで弱い役立たずだ…」

サイレント・ネオ-boy meets girl-（フウコと小オアシス/先行配信）

フウコと小オアシス-サイレント・ネオ-boy meets girl-

ＢＧＭ

-登場人物-

テディ・D：ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム：お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ：誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…！？

ムサシ：地球（テラ）・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のＣＡリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック：ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ：極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー：月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え５０機を率いる。

ガスズ：ムサシのライバル。ＣＡリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いＣＡヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。

マギー教授（おねえ）とみなみちゃん（アイドル）：一年前に地球（テラ）から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。