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ソック、サシャにたかる5-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「さてと、砂漠の夜は冷えるねえ。お嬢ちゃん、風邪をひいちゃだめだよ。おじさんはね、ちょっと急ぎの用があるから…」とソックが荷物をまとめてそそくさと逃げようとするが、ムサシは当然ながら逃がさずに首根っこをひっつかまえ、「おっさん、今、何してた…」と怒り呆れ果てていた。

5

空中に持ち上げられたソックは足をバタつかせながら、思わず右手に隠し持っていた小銭10枚ほどを落としてしまった。
「最低ね、このおじさん」
テディ・Dが横目で見ながら言った。
「き、君たち、話せばわかる、話せばわかる。ね…このお金はもちろん、返そうと思っていたんだ」
「いったい、おっさん何者なんだ…」
「私はジャック・ソックと言ってね…まあ、話せば長くなるが…」
こうしてソックは、テディ・Dの一向に遭遇したのだった。

4歳のサシャにたかり、怒ったムサシたちに取り囲まれているソック。
ソックをにらむムサシたちの眉間にしわが寄っている。
一方、背を丸くさせてみじめな姿をさらしているソックは、内心こんなことを考えていた。
『なんだこの子供たちの集まりは…よくわからない集団だな。それにしても、この目の前の背が高い青年さえいなければ、どうにでもなるんだがな…
しかし、本当にいったい何なの集まりなんだろうか…そうか、わかったぞ!
この子供たちは夏休みということもあり気が大きくなって、家出でもしたんじゃないだろうか…そうだろうな、そうに決まってる。きっと、ぼんくらの放蕩息子たちがぷち家出に出たに違いない…そうとわかれば…』

ソックは何かをひらめいたのだろう。
急に腹をかかえてうずくまった。
「どうした、おっさん…」
ムサシが驚いて言った。
「腹が急にね…ああ、ちょっとまずいなこれは。
おじさん、もしかしたら死んじゃうかもしれない」
「おっさん、腹が痛いのか!?」
「いや、ちょっと腹がな、その何というか…あああ…」
とソックの演技に、ムサシ、オジャム、サシャは素直に信じて心配している。
しかし、冷静沈着なテディ・Dは腕組みしながら斜に構えて、
「なんかあやしいのよね、このおじさんが言うことは…」
としっかり見破っていた。
思わずソックの額から汗がたらりとこぼれるが、
「お嬢ちゃん、人を疑っちゃよくない。他の子どもたちを見てごらん。
素直ないい子たちじゃないか、おじさんの言うことを信じてくれるんだから」
「おじさん、お腹が痛い割によくしゃべるわね」
「え…あ、お腹が…」
ソックは思い出したように再び腹をかかえてうずくまる。

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。

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