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サシャの秘密12-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「そんなことは当り前ですわ。確かに私の父親と、叔父様は犬猿の仲でしたわ。そのせいで、娘の私もずいぶん、ひどい目にあったものです。
しかし、私と叔父様は血がつながった親族なのですよ。過去のことなど、すっかり忘れてしまいましたわ」

これを聞くと、家臣のリッチモンドもジョセフも驚いたことに、ゲンバは目に涙をためていた。

「叔父様、サシャのことは聞きましたわ! きっと彼女は生きています。ええ、私はそう信じて、毎日のように祈っているのですよ!」
「ああ、レイラよ。ワシはお前のことをずいぶん勘違いして、邪険に扱ったのに、なんと優しい心持の娘であろうか…レイラ、今も家臣たちと話していたのじゃ。
みなはサシャが生きているというのじゃが、ワシにはどうも信じきることができんのじゃ!」

すると、レイラはまず体をそって大げさに祈ると、今度は寝ているゲンバの枕元に歩み寄り老人の手をとった。

「叔父様、強い気持ちをお持ちください。サシャは生きていますとも!
確かに砂漠にはおそろしい毒ヘビやさそり、子供など飲み込んでしまうアリジゴク、悪い人買いがうようよと、うろついていますわ」
「ああ、サシャは、サシャはやはり…!」

不吉なことを聞くと弱気になっているゲンバは、サシャはやはり生きて戻ってくることはないのではないかと、ぶるぶる震えだした。

「それだけではありません。1ヶ月もさ迷い歩いていようものなら、すっかり干からびて骨だけになっているかもしれません。
そうしたら、いくら探しても見つけることなんてできないでしょうね! すっかりサシャの骨は砂漠の砂をかぶっているでしょうから!」
「レイラ、やめておくれ、サシャは生きておるのじゃ、死んでなんかおらん、ああ、ああ……」

ゲンバはこれ以上聞きたくないとばかりに、両耳を手でふさいだ。

「叔父様、これはあくまでも、も・し・ものことでございます。
ええ、サシャはきっと見つかりますとも!」

と、この姪は叔父をなぐさめているのか、おどしているのか、よくわからないことを言った。

つづく…

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