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ムサシ、月歌に到着4 サイレント・ネオ-boy meets girl-

「そうだな…CA用の大型トレーラーが一台余ってるな。よければ見てみるか?」
「すまないね」

ムサシは商談成立とばかりに立ちあがった。
さらに、テーブルにチップも入れた金額を置き、おばちゃんに礼を言って店を出た。

ゲンの運営する整備工場は蕎麦屋からあるいて10分ほどの工場や倉庫が立ち並ぶ一角にあった。古びたガレージにはCAや小型陸戦艇など合わせて4~5機あって、10人のほどの整備工が火花を散らしながら作業をしていた。

「おっさん、景気がよさそうだな」

ムサシが言うと、

「月歌はいつ終わるともわからない戦争に明け暮れているからな。しかし、下請けはたいして儲からん。ここいらには、いくつもこんな零細の工場があるから、作業費も安いのさ。それに、これでも今はかなり暇な方なんだ。いつもは倍の作業員がいるぐらいだ。結局、戦争で儲かってるのは政治家と武器商人、資本家だけさ」
「そんなもんかね…」

ムサシも相槌を打つ。

「ところでお兄さん、あんたCAパイロットだってな…若いのに感心だねえ。 実戦経験はあるのかい…?」
「まあな…」

ムサシは少し顔を曇らせ返事をした。
100機を落した第5次地球・コロニー戦争。その記憶は、ムサシに暗い影を落としていた。
ゲンはそんなムサシの表情を察し、もうそれ以上はその話題を続けなかった。

「なあ、お兄さんはあれだろ。夏休戦だから月歌に観光にきた口だろ?」
「夏休戦?」
「なんだ知らねえのか、月歌で最大勢力を誇るムーンキングダムと、戦争に明け暮れている北閥とが、夏の間だけ休戦しているんだ。おかげで、こちとらは暇ができて商売あがったりさ。まあ、とにかくあんたはいい時期に観光に来たってわけだ」

ゲンはムサシの肩をぽんと叩いた。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(先行配信)

サイレント・ネオ-boy meets girl-

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

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