難しい判断2-サイレント ネオ-ムーン ソング

そこにシャローンが風を切って、颯爽と家臣団の前に姿を現した。
金糸の刺繍が施されたマントをひるがえすその姿は、威厳さえすでに備えていた。
シャローンはキングダムの提督のみが身にまとうことができるマントを、宝石で装飾されたフィビュラ(ブローチ)で胸元に留めている。風はないのにひらひらとわずかに揺らめいている。

家臣たちは様々な表情で、この新しく初々しい提督を直立不動で迎えた。
子供の時からシャローンを護衛してきた老臣のミトは、その凛々しい姿に思わず目を細める。
シャローンは新しく作られた提督の椅子に座り、居並ぶ家臣を見回した。
「みなの者、大義である。これより朝議を始める」
シャローンの言葉に合わせ、、家臣たちは90度腰を曲げて一礼した後、一斉に椅子に座った。

張りつめた空気の中、真っ先に口を開いたのは、うるさ方で知られる老臣グリフォンだった。
「シャローン様、提督ご就任おめでとうございまする。しかし、シャローン様はまだはたちにもならぬ若君であります。
どうか、私たち重臣を信頼なさり、万事に付けて何事も相談し、血気にはやるようなまねは謹んでいただきたくお願い申し上げまする。
確かに西門奪還は…まあ、初陣にしてはうまくやられたと方だとは思います。されど、私のような経験豊富なベテランから見ると、どうして、どうして、まぐれもいいところでござる。
これからは、メルセデウス家3代に仕えた忠臣、グリフォンに相談をされてから行動するように、せつにお願いたてまつる次第でございまする!」
と大きな目をひんむき、仰々しく言った。
グリフォンは何も相談せずに自分をさしおいて、西門を奪還したシャローンの行動がおもしろくないのだ。
「グリフォン、その通りである。これからは何につけても相談するとしよう」
シャローンは極めて穏やかな口調で言った。
グリフォンは飴をなめるように舌で左右のほほをふくらませ、不遜な態度を取っている。

「カペッロマンJr、始めてくれ」
シャローンにうながされると、隣に立っている軍師カペッロマンJrが手元にあるモニターのボタンを押した。
すると立体の映像が空間に映し出された。それはムーンキングダム周辺の地図だった。
「現在、ムーンキングダムの古今東西を守る門のうち、北門、南門が敵方に握られている状況です。何としても、奪還せねばなりません」
「その通りじゃ。南西にあるテーラバハの日和見主義者、モーリス党が妙な動きをしているとか…これがからんでくると、北閥で手一杯の今、一大事じゃ」
カペッロマンJrの言葉にミトが同調する。
「北閥に目を移すと、北閥は本拠のノーザンライト・シティに加え、すでに領地としているエーテライト、さらにはカフタスにも進出して占領と、大幅に勢力拡大をしています。
北閥と我ら南方に位置するモーリス党が組めば、このキングダム、北と南から挟撃されるやもしれません。
アービン様が守るキンコムは容易にやぶられはしないでしょうが、背後に北門を抱え、アービン様も身動きが取りにくい状況です。
さらに、キンコム北東のルーゼンフェルムは対北閥の最前線。敵が出撃してくるのは時間の問題かと思われまする…」

キンコムはキングダムののど元と言われる小型都市で、すぐ北に位置している。シャローンの叔父にあたるアービンが守っている小型都市である。
その北東にあるルーゼンフェルムはツォング党が守っており、周りを堀でめぐらせ背後には湖があるという中型都市である。攻めるは難しく守るは易しと言われる堅い守りを持つ都市だ。
つづく…

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