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フウコと小オアシス20-サイレント・ネオ-boy meets girl-

時計はモーラ一家がくる約束の午後4時をさした。
すると、砂漠の北の方角にもうもうとすなぼこりがたちこめて、30機ものCAが大挙して出現した。
「モーラ一家だ!」
オジャムは叫ぶと、ころげるように自分の宿にむかってかけだした。
「テディ・D、どうか、無事で…」と祈りながら。

20

モーラ一家は力を誇示し、恫喝するために月の初めには、こうして全機を率いてどこの勢力にも属していない小さな村々をめぐっては、人さらいのたぐいや略奪を働いていた。
首領のモーラは落ち武者のように、はげあがった頭のまわりの伸びた髪をゆらしている。
砂漠を本拠としていることもあり、モーラを始め、手下の盗賊たちはみな一様に日に焼けていかつい顔立ちである。
おのおのが、シェルと呼ばれる量産型のCAののっているが、首領のモーラのみパンツァーという通常は指揮官がのる上位機にのっていた。
どの機体も闇の流通ルートで手に入れた中古品で、改造や修理が施されていた。中には継ぎはぎだらけで、様々なパーツで補修して色もまだらの異様な機体もあり、まさにごろつきと呼ぶのがふさわしい軍団を形成していた。

元シャギ10将のモーラは、かつてはシャギ党でも一目置かれた存在であり、腕の立つパイロットでもある。
モーラはいつものようにラム酒を水のようにのみながら、軍団の一番後ろに陣取っている。
「お、お頭、大変です。どうも村の様子が変でさあ!」
通信から家来の1人、副頭のサムソンの声が聞こえた。
「なんだと、どうした?」
寝耳に水とばかりに、モーラはしゃっくりを一つあげた。
しかし、モーラがのるパンツァーのモニターに村の入り口が映し出されると、途端に酔いがさめた。
そこはまるで急ごしらえの城壁のようにトラクターやら家財やらが高くつまれており、完全に封鎖されていたのだ。
「ど、どうなっているだ…!」
モーラたちがあ然としていると、急に警戒音が鳴り、レーダーに機影が映し出された。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(フウコと小オアシス/先行配信中)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。

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