見出し画像

うつになるとは、どういうものか。【物語で説明してみた】

うつになる、というのがどういう状態か、想像がつかない人も多いと思います。
知りたい人向けに一人称の物語にして書いてみました。
(誰のものかは言いませんが、実体験とリサーチに基づくものです。)

◆この記事から学べること
- うつ・パニック障害になる過程、背景にある思考プロセスや感情の動き
- 回復する方法

**

麻衣子は営業部で働く23歳の会社員だった。
新卒1年目。仕事を始めて5か月目に入り、少し慣れが出てきたところだった。
慣れてきたのは良いことではあったが、配属当初から感じていた胃がきりきりするようなストレスは全く減らなかった。さらに全体像が見えてきたがゆえに、今後ずっとこの仕事を続けるのかと思うとげんなりした。


最初の兆候は憂鬱な気分が晴れないことだった。家でも仕事のことを考えてしまってはため息が増え、涙が突然出て、自分を責める思考が止まらなくなった。時には不安や苦しさが膨れ上がり過呼吸を起こすようになった。

次に、きちんとした食事が取れなくなった。食べ物を見たり匂いをかぐと吐き気がするのだ。ただカロリーメイトなどで栄養を補給することはできたため、まだ大丈夫と麻衣子は思っていた。

仕事に行く時は毎日、無理やり気分を上げるためにコーヒーやカフェイン入りのエナジードリンクを飲んだ。結果として夜の寝つきが悪くなり、日中は眠くなるのが不安でさらにカフェインを摂取した。

朝は会社に行きたくなくて毎日とても辛かった。会社でも家でもずっと心を覆っている辛さに耐えかねて、ある時麻衣子は「あ、そっか。心をなくしちゃえばいいんだ」と思った。会社では心を持たない人形になりきり、一切の感情を消すようにした。


この頃には趣味も好きな物もほとんどなくなっていた。以前なら素敵だと思っていたコンテンツも、今では「仕事から逃げられないと思うとこの一瞬を楽しんでも意味がない」「綺麗事や絵空事ばかり言って、現実を見ていないところに苛立つ」と思うようになってしまっていた。

麻衣子はもともと向上心や責任感が強く、真面目な優等生タイプだった。学生時代までは周りから「努力家で何でもできてすごい」と言われることが多く、仕事でも高いパフォーマンスを出せて当たり前だと思っていた。それだけに今は上手く行かない自分が情けなく、感情を消す以外に対処法は思い当たらず、それでも消しきれずに家では泣いてばかりいた。学生時代の積極的で前向きな麻衣子は、もうどこにも見当たらなかった。


そんな日々が続いてしばらくしたある日。会社での昼休みに、急にめまいと体の震えが止まらなくなった。強烈な不安や焦燥感もあった。
「めまいや吐き気がするので、早退してもよろしいでしょうか。」
上司に申し出て、早退させてもらった。

家に帰っても震えと不安は止まらなかったので、心療内科に電話して予約を取った。世の中のすべてが自分に危害を加えようとしているように感じ、怖かった。
布団にくるまり、これからどうなるのだろうと考えた。現実味がなかった。


翌朝、会社へ行く準備はしてみたものの、少し予想していた通り駅までの道で昨日のようなパニック発作を起こした。体が石のように固まって動かず、強烈な不安が心をひゅっと攫った。まるで自分の体が空の上で宙吊りになっているかのような恐怖で、駅に向かって歩くことができなくなった。会社に電話をして休みをもらうことにした。

その日のうちに心療内科の予約をずらして受診すると、抑うつ状態という診断が出た。上司にメールで連絡すると、まずは有給を使って休むようにと返信があった。自分のスマートフォンで調べると、診断は出なかったがパニック障害も併発しているようだった。


結局、麻衣子は15日の有給、その後1か月の欠勤、3カ月の休職を経て会社を退職することになった。幸い、休みの期間中に転職先が決まったので、ブランクなしの転職をすることができた。
仕事を休んでいる間、麻衣子は療養に努めたので、転職先で働き始める頃には体調はすっかり落ち着いた。

療養にあたってしたのは以下のようなことだ。
まず、心療内科で処方された薬を飲み、精神状態を改善させる。
睡眠薬を使いカフェインをやめることで、夜は眠れるようになった。
次に食事。できるだけ栄養のあるものを決まった時間に食べるように心がけた。
また、家事や買い物での外出、運動をして、少しずつ「自分はこれならできる」という自信をつけた。
転職先が決まってからは勉強も始めた。勉強は「これだけ勉強したのだから、前の自分と違って今の自分は大丈夫」と思えるから良い。実際、次の仕事をこなす上での安心材料にもなる。

転職活動にあたっては、自分の適性と志向をよく考えて次の仕事を選んだ。
例えば営業のように変化が多くマルチタスク、かつ高いコミュニケーション力が求められる仕事は、向いていないし好きでもない。というわけで次は対照的な仕事をすることにした。

療養と将来に向けた戦略立て。この二つをきちんとやったことで、麻衣子は
転職2か月目の今も、健康に働き生活することが出来ている。

**
いかがだったでしょうか。
無理をすること、感情全てを消そうとすること等はよくないようですね。

少しでもこのお話のような兆候があれば、ためらわずに心療内科の受診をすることをおすすめします。


※おまけ:こころの病気や状態を学べる動画

  • うつ病について

  • パニック障害について

  • 自律神経について

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?