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とある二人のお話(第一章)

※この物語は、フィクションではありません。
 
私自身と恋人をモデルにした物語です。

第一章

優斗はイギリス行きの飛行機の中で胸を躍らせていた。
この留学では、どんなものが得られるのだろう。
どんな経験をし、いくつの見たこともない景色が見られるのだろう。

優斗は長野県にある国立大学の院生だった。
修士課程の二年目、文科省の奨学金の選考に通り、念願のイギリス留学の切符を手に入れたのだった。

奨学金の選考は政府主催とあり、熾烈を極めた。
全国の大学生が自分の将来の夢や留学計画について語り、質疑応答を受ける。
学識に優れた者、雄弁で説得力のある者、珍しい経験や尖った興味関心を持つ者。
日本トップクラスの実力者や変わり者が集まる中、優斗はその選考を最高評価とともに通過したのであった。壮行会では代表スピーチも行った。

感慨もひとしおだ。
何の財力も名声も持たない一人の地方大学院生が、己の努力だけでこれほどの恵まれた機会を掴み取るなんて。

"Arriving at Manchester Airport soon…"
機内アナウンスが流れた。

(ああ、もうそんな時間か…)
窓から外を覗くと、眼下にはマンチェスターの整った街並みが広がっていた。

さあ、いよいよ夢の留学の始まりだ。
優斗ははやる気持ちを抑えながら、着陸に備えてシートベルトを締めた。

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