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白百合は海を渡る

 <書きたい気持ちの宣言をしたのですが、書けるとこだけ、書いてみたいと思いました。よろしければお付き合いください>

 大航海時代は、プランツハンターたちが世界を股にかけて商売した時代でもあった。
 大航海時代といったら、宝島とか海賊王の話がメインだと思う。
 鉱山を発見したり、ガラス玉と黄金を取引したり(交易)、豊かな積み荷を強奪したりした派手な話、冒険活劇!
 その傍にある、植物の物語は興味深い。

 『明治31年、喜美留沖でイギリス船が難破し、助け出されたバンティング氏が野生のゆりを見つけ栽培を奨励したとの伝承』

とある。

エピソード1

 旅人が島の人から聞いた話はこんな感じだった。印象なので間違っているかもしれない・・・(多少盛っています)

 中国と琉球と南蛮とを行き来する船が、沖永良部沖で難破して、プランツハンターの一人が島に流れ着いた。流れ着いたのは「きびる(喜美留)」という集落だった。
 親切な村人は家と食料を世話してくれて、回復するまで面倒を見てくれた。回復したからと言って、すぐ船にもどれるわけではない。
 プランツハンターだから、島の隅々まで見て回る。小さな島と言っても観察しながらだから、何日もかかる。季節変わりの様子を見に同じ場所を何度も行って、成長を確認する。
 或る日。海岸縁の崖に名残りの白百合が揺れていた。ユリは夏に咲くものだが、秋に芽生えた一株が春先にやっと咲いたものと思われる。

 島の人にとっては意味のない風景。生まれた時から見慣れたうちの島の花だ。愛着はあっても食べれるわけではない、いや、球根を食べることはある。だからと言って、畑で栽培する類ではない。

 だが。ヨーロッパではちがう。イースター(3月末)にマドンナ(マリア様)に捧げる白ユリがあれば売れる!バンティング氏は思った。
 喜美留の徳農家に栽培を頼んで船へ去った。

 翌年(3年後くらいかも?契約は明治35年だから)、バンティング氏は期待半分、だめかもしれない気持ち半分で戻ってきた。そして畑へ行ってみると、なんと、畑はユリの花で真っ白に染まっている。良い香りが彼を包む。
 口約束だったのに、農家の彼は自分の畑にユリを植え(島の崖から一球一球採取した)、周りの忠告もかわしつつ、待っていてくれたのだ。

 花を摘んで球根を太らす(3カ月くらいかかる)と箱に詰めてヨーロッパに持ち帰り、イースターに合わせて花を咲かせて売った。
 ユリの輸出、と書くと、切り花を送ったみたいに勘違いする人がいる(私だ!)が、球根を輸出し、現地で栽培して生花として売ったのだそうです。
 もちろん球根としても売り、庭に植えて楽しむのですが、春に咲かせるためには加温するなどするらしく、素人には難しい。

 みたいな。

補足

 そのユリが逆輸入され、鉄砲ユリの名で全国で愛されています。格式が高いイメージで冠婚葬祭の印象がついてまわってますが。

 バンティング氏は横浜に住んでいて、親の代からプランツハンター?富豪だったらしい。沖永良部島を目指して航海したという話を発見!
※横浜市のホームページ

 !!鉄砲百合は園芸種だと思われています、実際品種改良され、園芸種としての名前も持っていますが、ほぼ原種なのです。あの花が野生でも咲いているのです。海岸、といっても、琉球石灰岩の崖っぷちに土もあるかないかの厳しい環境で、乏しい土に潜るようにして育ち、花を咲かすのです。北海道でも、植えた場所より深い場所にもぐって冬越しします。さすがに球根は毎年痩せ、花も輪数がなくなり消滅しちゃうんですけどね。


ポイント。何故エラブユリが喜ばれたのか。

 白百合であったこと。
 白ユリは、ローマ人にとっては「希望」、キリスト教徒には「マリアの持ち物」とされたそうです。

 形も良かった。
 エラブユリは、ラッパのような咲き姿のユリで、横向きに花をつけるのですが、キリストを呼ぶトランペットを象徴してみえるらしく、そこんところもポイントみたいです。

 イースターに咲いた。
 出荷してヨーロッパについてから畑に植えて咲かせると、3月のいいタイミングで花を咲かせた。

ユリという名前についての拾遺

 調べたところによると、昔はユリとバラが花の代名詞だったそう(オリエンタルの辺り)で、リンドウもあやめもユリ、菊もガーベラもバラだったみたい、乱暴な解説でごめんなさい。

 百合、ルイ王朝のシンボルとかに使われています。下の画像、ユリでなくあやめをシンボル化したものとも言われているそうですが、

 とくにユリ、白いユリはマリア様のシンボルで、古い絵にヨーロッパ種のユリを持ったマリア様が描かれています。
 ところが、このヨーロッパ(中近東かも?)のユリは、夏に咲き、春には咲きません。
 エラブユリは春に咲かせることができました(冷蔵?)。

 マリア様を象徴するものとして、ローズマリーという花があります。聖母マリアが衣を被せたところ、白いローズマリーが青色になったという言い伝え。名前の由来には別のもあって、海の雫のラテン語から。だそう。

奄美群島、南西諸島の植物は独特

 琉球列島、鹿児島以南の島々は、島なので(日本語が変!)。ユリが島ごとに違うそうです。
 甑島のカノコユリは有名です。その美しさ、独自さもさることながら、飢饉のと島人の命を救ったとのこと。救荒植物といえば、ソテツも毒があるのですが(あるゆえに普段は採取しないので飢饉の備蓄になる)、徳之島の大変なときに役立ったとのことです。

タモトユリ:口之島に固有のユリ
カノコユリ:甑島固有
ウケユリ(カサブランカの親と言われている):奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島
請島:ウケユリ
台湾:タカサゴユリ
テッポウユリは、南西諸島まで自生するとある。

 もう一つメモ。
 本州のヤマユリもヨーロッパで園芸種の親になって、その子どもたちはオリエンタルハイブリッドと呼ばれます(未確認情報かも?)。

 

 

 


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