【映画感想】しあわせのパン(2012)
絵本のような浮き世離れした夫婦の日常
※今回ちょいと辛口です。
北海道の中心地ではなく、湖の畔にひっそりとカフェベーカリーを開く夫婦の四季を彩ったお話し。
東京で疲れた生活を送っていた原田知世扮する妻を誘って、北海道にやってきたというところからしてすでに浮き世離れしているのですが、妻が原田知世と、くると一層妖精めいているなぁと初手から思ってしまったわけです。
全編シンプルなおしゃれに彩られていて、合わせてみていた『リトルフォレスト』の泥臭さ(あれも車無しで生活しているヒロインはちょっとファンタジーじみてますが)とは対極にいるわけです。
毎日二人で散歩するのがたのしみ。散歩途中で立ち寄る農家は、家族仲良くて、しかも売っている物はおしゃれ野菜。なんとも必死さを感じない店舗経営だなーという部分でまず、ストーリーの中に入り込めなかった。
三島有紀子は現在公開中の『Red』(2020年3月現在)が気になる監督ではあるのですが、物語の場を提供するこの夫婦がどうにもリアルに存在するような気にならない描写にしたのは何故なんだろう?と思いました。
水島くんの欲しいものは?
どこか浮き世離れしている夫婦って思ってはいるんですが、心の闇のような描写はついて回るんですよ。この作品。
初っぱな絵本の描写からはじまります。このカフェの店名マーニにもなっている絵本。妻の初恋はマーニだったというところで、心ここにあらずのような妻をずっと追いかけている夫、水島くん。
彼の欲しいものはなんなのか?
表だって語られないんですよね。欲しいものがあるって言葉は出るんですが、何が欲しいのか。——だが何となくわかる。ただ東京でのこの二人の話が全く描写として出てこないので、まったくその感情に寄り添えない。
正直そこがストレスだなぁとおもうんですよね。
どうしてこうなったんだろうと考えると、四季を描いていますが、3つの季節はそれぞれベーカリーカフェマーニを訪れた人の話だからなんです。
しかも普段から付き合っているのではなく、たまたまやってきた人たち。他の常連たちは本当に心の底から善人で、相手のことを考えていて……みたいな、ここは妖精国(ティル・ナ・ノーグ)かムーミン谷か?と言う気分になるわけです。
語り部は水島くんがよかったんじゃないだろうか?
好みの問題なんですけど、水島くんが語り部だったらいいなぁって見終わって思いました。
そしたら彼が出してくる料理やパンの意味などもっと観客側に寄り添えたんじゃないのかなぁ〜?と思います。
なぜ、ふつうのケーキではなく、クグロフつくったんだろうか?
善良だけどみんなどこかさみしくて、それをどうすれば埋めることが出来るのか? なくすことが出来るのか、満たされるのかを探している。
欠けていく月、満ちていく月、ストーリー上気をつければそんなメッセージは受け取れるけど、それぞれ(この場合は水島夫婦)の寂しさ、満たされたいと願う心はどこから来ているのか? ってところがちゃんと見たかったかなぁ。
監督・脚本:三島有紀子
出演:原田知世、大泉洋
Netflixにて鑑賞。
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