ミュージカル「ジキル&ハイド」感想と柿澤勇人さんの数秘について
3月13日に東京国際フォーラムCでミュージカル「ジキル&ハイド」を見てきました。主演は柿澤勇人くんです。大分日が経ってしまったのですが、とてもクオリティの高い舞台だったので、自分のために感想を書いておこうと思います。
席はかなり良席で2階の2列目のセンター。頭がまっすぐでいられるので、とても楽ですし、舞台全体が良く見えました。見え方はこんな感じです。
配役は下記のパネルにある通りです。これ、とてもわかりやすくて親切ですね。日生や帝劇でもこうして欲しいなと思いました。
公演は主演もヒロイン二人も親友役もWキャストなのです。なので、自分にとってベストだと思う組み合わせに近い日を選ぶのに苦労しましたが、13日はほぼそれに近いものでした。主な配役は下記の通りです。
今回のジキルは好きな俳優さんが目白押し
柿澤くんと栗原英雄さんはNHK大河「鎌倉殿の13人」で実朝と大江広元を演じていましたね。お二人とも劇団四季出身です。真綾希帆ちゃんは元宝塚雪組の娘役トップスターですね。だいもん(望海風斗)と歌ウマのトップコンビで、現役時代は宝塚のクオリティを超えていました。この二人の舞台は熱量がすごいので、観客にも集中力を要求します。特に『ファントム』と『20世紀号に乗って』(東急シアターオーブ)は見終わった後にドッと疲れた記憶があります。畠中洋さんは加藤健一事務所の『詩人の恋』(2008年)があまりに素晴らしくて、大ファンになった役者さんです。音楽座出身ですね。石井一孝さんはミュージカルに欠かせないバイプレイヤーなので、色々な舞台を拝見していますが、『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』のエディ・サウザー警部が印象的です。
大好きな俳優さんが多数出演していた「ジキル&ハイド」、一言でいうと、想像以上のクオリティの高さでした。1階5列目だった友人も、見ず知らずの隣の人と「素晴らしかったですね」と言い合って拍手を送ったそうです。
主演の柿澤くんの声のコントロールが素晴らしい
まず、主演の柿澤くんの歌と演技が素晴らしかった。「ジキルとハイド」って、ヘンリー・ジキルは模範的な好青年、ハイドは邪悪で暴力的な男で、薬を飲むと、善から悪へ、正反対のキャラクターへと変貌するわけです。柿澤くんのハイドは声音が地の底から響くようで、全くの別人なんです。その声の使い分けが実に巧みで迫力がありました。
それから、ヘンリーは精神病を患った父親をどうしても治して薬を開発しているわけです。能天気に明るい青年ではなく、少し影があって、科学者として執念深いというか、決して諦めない。精神病院の理事たちには大反対されるけれど、弁護士で親友のジョン・アターソンに娼婦のいる酒場に誘われ、そこで真綾希帆ちゃん演じる娼婦のルーシー・ハリスに出会い、「自分で試す」(彼女は薬のことを言ったのではないが)という言葉にヒントを得て、患者で試せなければ、自分で試せば良いということに気づいてしまうのです。
悪を内包した繊細で深みのあるジキル
「時が来た」は「ジキルとハイド」で最も有名な歌の一つですが、石丸幹二さんは芸大出身なので、オペラ調で朗々と歌い上げておられますが、柿澤くんは声量はものすごくあるのに、役で歌っているという印象というか、ちょっと屈折したものを感じるんですね。ハイドというのは、その名の通り「隠れていたもの」で、ヘンリーの中にある邪悪なものだけを取り出した人格だから、実はヘンリーの一部なのです。柿澤くんのヘンリーは善良でまじめながらも、そういうものを内包しているかも?と感じさせる役作りをしているんですよね。そこが新鮮でしたし、演技が上手い人なのだと、改めて思いました。
余談ですが、邪悪なものを取り除けば戦争だって起こらないとヘンリーは考える。逆に良いものだけを人に注入すれば、善人だけの平和な世になると。ですが、
それは間違いで、自分でコントロール出来なくなってしまい、ハイドは野獣のように外に飛び出し、恨みのある人を襲って殺していくのです。この良いものだけという発想、サプリメントとか栄養成分に似ているなと思いました。食物で取れば他の食物と相互補完して人体に悪影響もなく、有効成分も機能するのに、サプリで良い成分だけを大量にとると、かえって人体に害が出てしまう。人格も同じで、良いものと悪いものが混ざり合ってバランスが取れているのではないでしょうか。それを薬でコントロールするのは、神の領域に踏み込むことだったのです。
真綾希帆は歌だけでなく演技も上手い
希帆ちゃんは宝塚をやめて2年目なので、本来ならヘンリーの婚約者でお嬢様のエマが妥当な配役だと思うのですが、最初から濱田めぐみさんも演じられていた娼婦のルーシーです。これが良い意味で実に合っていました。ルーシーは踊る場面が多いのですが、踊りがキレっキレで、さすが踊りの花組出身と思いました。また、彼女はメイクが上手なので、泥水を啜って生きる役ですが、華があるんですね。だから、ヘンリーと出会い、彼に恋して歌う「あんなひとが」がとても心に響きます。彼女は歌が上手いことで知られていますが、実は演技もとても上手い。
ミュージカル『ドン・ジュアン』で希帆ちゃん演じるマリアが登場すると、空気感がガラっと変わりました。プレイボーイのドン・ジュアンがなぜ彼女を一眼見て恋に落ちたのかわかる、とても説得力のある演技でした。
「ジキルとハイド」のルーシーは難しい役で、ヘンリーと背中合わせなんですね。吉原の遊女状態にある不幸な女だけれど、実は純粋な乙女の心が残っていて、ヘンリーがその境遇から救い出してくれる人ではないかと、わずかな望みを抱いている。ところが、ヘンリーはハイドに変身すると、ルーシーの前に現れて彼女を虐げる。もちろん、ルーシーはヘンリーがハイドと同一人物だとはわからないので、
ヘンリーに恋をしながら、ハイドを恐れるというジレンマを生きている。そして、ヘンリーは最後に親友のジョンにお金を託し、ルーシーがハイドに殺される前にそれを持って逃げるように言うのですが、時すでに遅く・・・という悲劇的な
筋書きです。希帆ちゃんが演じると、ルーシーの切ない人生が際立って胸に迫ってくるので、やはり配役は正解だったのだなと思いました。
ルーシーと対極にいるのが、Dream Amiさん演じるヘンリーの婚約者のエマです。Amiさんはソプラノがとても綺麗に出ていて、歌はお上手だったのですが、
キャラクター的にはルーシーの方が合っていたのでは?と思いました。少し地味目の印象で、お嬢様という雰囲気が感じられないのです。舞台の演技はそれほど経験がないのかもしれません。友人も「歌は良いのだけれど・・・」という意見でした。この役は、生田絵梨花さんのような少し華やかなアイドル系の女優さんの方が似合う気がします。
感動の舞台にスタンディングオベーション
全体的にはとにかくすごい舞台で、終演後はスタンディングオベーションで拍手なりやまぬという状態でした。一緒に見た親友は鹿賀丈史さんと石丸幹二さんのヴァージョンを見ていて、私に誘われたから来たという感じだったのですが、
大感動して「誘ってもらって良かったわ」と言ってましたね。一つ大きかったのは、ヘンリー・ジキルが若者に戻ったことでしょうか。ミュージカルではこれから結婚する予定の若者なのに、原作と同じ50歳近い大御所が演じてきたのですが、
それを柿沢くんが本来あるべき姿を見せてくれたわけです。と言っても、柿澤くんも35歳なので、20代の若者というわけではないのですが、実朝を見てもわかる通り、繊細な演技をする人なので、20代に見えるんですよね。
柿澤くんは数秘的には直感鋭い啓蒙者で俳優にピッタリの人
数秘術で見ると、柿澤勇人(かきざわ はやと)さんは1987年10月12日生まれで、ライフ・パス・ナンバー(人生の行程数)が「11」、ディスタニー・ナンバー(運命数)「9」の人なんですね。「11 」はマスターナンバーで霊感・直感が
鋭く、自分の信念や学んだことなどを啓蒙するのに向いています。ちょっと繊細で生きづらさを抱える傾向もありますが、俳優はぴったりの仕事です。これから年齢が上がってくるにつれて、「9」の視野の広さや国際性が活かされてくるかもしれません。「9」も自分を表現するのに長けたバイブレーションをもつナンバーなので、その意味でも俳優は天職なのでしょう。ちなみに、「11」は1が2つ並んだ数でもあります。また、インテンシティ・ナンバー(強調数)で最も強いのが、「1」で5個もあることから、せっかく100倍の競争を乗り越えて入団した劇団四季を3年で辞めてしまったのはわかる気がします。スターシステムを取らない四季より、ホリプロに所属して、主演俳優としてスポットライトを浴びた方が彼には
似合っていますし、数秘的にも正しい生き方です。
5月にはデビュー15周年記念LIVE “First And Last”が開催されるようですね。
ゲストは尾上松也さんと平方元基さんで、チケット難は必須でしょうね。3月15日にミュージカルアルバムが発売されたので、まずはそれを楽しもうと思います。