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ドキュメンタリー映画「何も知らない夜」(インド・フランス2021年)を見てきました。

ドキュメンタリー映画「何も知らない夜」(インド・フランス2021年)を見てきました。

 昨年、泣く泣く行けなかった山形国際ドキュメンタリー映画祭で大賞を獲った作品。それがOSAKAシネマスケープ2024という映画祭で上映されるのを知り予約した。9月29日1日だけの上映。場所は大阪中之島美術館の1階のホール。梅田から歩くと25分くらいかかる。涼しくなっていてよかった。この日、初めて中之島美術館に行った。新しい建物でおしゃれな外観。美術館の前にはヤノベケンジの巨大ネコがいる。

 空調が効いていて広い空間。こうしたパブリックな空間がたくさんある場所の都市の成熟を感じる。京都の平安神宮の周辺にも似た静かで文化的な場所。川がそのまま残っているのでその上だけ空が広い。大阪は建築物の容積率を緩和してむっちゃ背の高いタワーマンションや高層建築が林立している。この景色はどうなんやろう?神戸市は容積率の緩和を辞め、京都もある制限が行われている。30年後50年後のこの街はどうなるんやろう?と思いながらも、こうした中之島美術館みたいなものがあることで恩恵を受けられるというなんとなくアンビバレンツな気持ちとでも言うのでしょうか?そんな空間。

上映10分前に整理番号順に入場。大きな会場。天井も10メートルくらいある、そこに大きなスクリーンが張られていて、プロジェクター上映という形。インドの映画学校FTIIのお話。創作なのか?事実なのかは語られない。Lという学生が恋人にあてた手紙の朗読から始まる。
 8ミリなのか16ミリフィルムなのか?で撮影された映像はモノクロームで粒子が荒い。まるで森山大道の写真のような映像。なので、映画の映像としてはとても抽象的でわかりにくい。そこからドキュメンタリーが始まるという構成。山形国際ドキュメンタリー映画祭などではよくある手法。そこで描かれるのはインドの現在。カースト制度が残っていて何割かいるイスラム教徒とヒンズー教徒の間には確執がある。さらにはジェンダーの差が激しく、女性が社会に出にくい状況が今も続いていることがよくわかる。高等教育を受けにくい女性たち、高等教育を受けることで自由や民主主義について知り目覚め考え行動を始めるのは当然の流れだろう。そうして学生たちは民主化を目指して運動を起こす。2016年に反政府運動が起きたらしい。これは、日本の1970年前後の安保運動の時代のようでもあり、数年前に起きた香港の雨傘運動のようでもある。
 現在、これがリアルな事実でありそれが起きているという衝撃。警官が学生が潜んでいる場所に突入し外に出すのが監視カメラで撮られている映像が流れるのだが、警官たちがこん棒で学生たちを思いっきり殴りながら外に出そうとしてるという暴力的なシーンを見て息が止まる。また、デモ行進をしている学生たちも警官たちがひっとらえてバスに収容するというシーンなども流される。私たちはその現実を見てインドの様々なことを考える。
 インドは昨年だったかその人口が中国を抜き世界一の人口大国となった。私もインドの料理が大好きなのだが、世界一の大国でロケットの打ち上げなども成功させている国、多くのIT企業のCEOなどに多くのインドからの優秀な人たちが就任している現実とカースト制度やジェンダー差別の制度が共存していることに驚くし、これからどうなっていくんだろう!と考えさせられる。こうして考えるきっかけを与えてくれるのがドキュメンタリーのいいところではないだろうか?そのきっかけを与える動機が強いものが映画祭で評価されているのだろう。上映時間100分。

https://www.yidff.jp/2023/ic/23ic08.html

https://note.com/mishigooka/n/n6db98a98c918

 



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