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「結論を言おう、日本人にMBAはいらない」遠藤功(@角川新書)を読んでみた

「結論を言おう、日本人にMBAはいらない」遠藤功(@角川新書)を読んでみた

マーケティングマネジメントの小川進先生の別の講座「マーケティング戦略」のシラバスを読んでいたら、最終週の課題図書が本書になっていて、思わず購入してしまいました!そして、読み始めると止まらなくなり、数時間で読了しました!
この遠藤功さんという方は長く早稲田ビジネススクールの教授をされていた方だったのですが60歳になられる2016年3月に早稲田大学を退任されています。もともと、三菱電機から米国留学を経て退社され新たにコンサルティング会社に転職されたという経歴の方です!実務の経験もある方で、こういう方を実務家教員と言うらしくビジネススクールなどでは3割は実務家教員を入れるという決まりになっているらしいです!

本書で遠藤さんがおっしゃっているのは、日本企業では、そもそもMBAを修了したという価値が認められにくく、報酬のアップなどにはまったく寄与していないということ。翻って米国などの海外のMBA取得のためのビジネススクールに来る学生たちは「目の色が違う」ということが書かれています。もちろん年収アップにもつながっていると。海外のMBAに通うには1000万円近くの費用がかかります。(授業料や滞在費なども含めてですが。ちなみに日本のビジネススクールは2年間で140万円~数百万円くらい。国立や公立は安いです。)彼らは、それを負担して、大学の近くに越して来て2年間必死で学びます。課題も多く、読む文献も多く、日々それに追われます!そして、さらに母語が英語ではない学生は英語を読むというさらなる高いタスクが課されます!それに必死でしがみつく学生たち。それと比較して、日本では、2003年に専門職大学院の設置が認可されたことによってますます拡がっていったビジネススクール!そんな状況下なのでビジネススクールも学校によっては受験生の全入に近い状況が生まれて来ています。しかも社会人向けの全日制でないコースは平日夜間と土日のみで働きながら通学するための授業となっています。日本のそんなMBAに通う学生たちはある種の日本の持つ独特の「ぬるま湯」の中で2年間過ごし、結果「MBAホルダー」となるのはいいのだが、そこに何か本質的な価値があるのでしょうか?と言うことをおっしゃっています。

課題などを行うことで、研鑽努力をすることによって物事を捉える視界が拡がり、さらに捉える視点も複眼的になっていく。それを後押しするためにMBAで授業を履修するというそもそもの価値はどこへ行ったのでしょうか?という気持ちが本書にはストレートに記述されています!

また日本のMBAもいくつかの段階があり最初に出来たのが慶応ビジネススクール(1962年)だったと書かれてあります。続いて1989年に神戸大学、1996年に一橋大学、1998年に早稲田大学と続きました!
私の通っている関西学院大学はまさに「専門職大学院制度」が始まった2003年の2年後の2005年に創設されたそうです!
私たちは19期生と言うことになります。

また日本のビジネススクールの中には学びの根幹とも言える「論文執筆」がない学校もあると書かれていました!論文執筆は学生もそうですが教員もガチで向き合いますのでかなりのハードワークです。でもそれを通じて大きな学びや自分で調べて分析し、良く考えるという行為が繰り返されます。その繰り返しを経験することが豊かな学びを得る事であるということが書かれています。海外のMBAの学生に比べて日本のMBAの学生には「ガチで学ぼう!」「退路を断って、何とかしよう!」と言う真剣さが足らないのでは?ということをおっしゃっていました!遠藤先生は早稲田で入山章栄先生とともに学生の論文執筆を指導されたこともここに書かれてあります。

そして1番気を付けないといけないことはMBAホルダーになることがある種の「分析屋」ばかりを生み出していないか?ということ。統計学などを学んで「分析の手法」を手に入れるのですが、それが形だけのものになってあまりにも「表層的」な結果にならないだろうか?という危機意識が本書から強く伝わって来ました!要するにそうしたツールを使って考えに考え抜き自分の経験とも照らし合わせて答えのない課題に答えを出す筋道を見つけていかなければならないというのが真の経営者の姿なのですが、それが出来ますか?ということ。それはビジネススクールが実践の場ではないことからくる宿命的なことなのかも知れません。なので、遠藤先生は社会人に向けて、特に働き盛りの30歳代は現在の業務をとにかく懸命にやることである、という大切さを説かれています!個人的にはそこに量が加わることがいいのではないかな?と思いますがいかがでしょうか?大量の仕事をすると必然的に大量の経験が得られます!そのためにも、自分の仕事の生産性を上げるというのも大きなテーマの一つです。

第5章の「MBAの代わりにいますぐ勉強すべきこと」の冒頭で遠藤先生はこんなことを書かれています

「真に力がある人は、物事を「深く考える」ことができる。全体を掴み、流れを読み、本質を見抜く。そして、そこから自分なりの最適解を導き出す」

と。これが経営や学びの本当の価値なのではないでしょうか?私たちは課題をすることで遠藤先生がお書きになった「力」を身に着けるための繰り返しのトレーニングをしているのではないかな?と思いました。そこには、ある意味でのコピペ論文やCHAT GPTが生成した文章を微修正して提出するなどということは、まったく意味がないということを示唆されています。
同じような意味だと思いますが同じくP204で遠藤先生はこのように書かれています。

「いま求められているのは、データやロジックに偏らず、地に足を着けながらも物事を大局的、全体的に洞察し、変化の本質を見抜いたうえで、「骨太のストーリー」を組み立て、粘り強く実行、実現することができるビジネスリーダーを育てることである。」

と。これは第5章の冒頭の文章とほぼ同じ意味ですよね。
最後に「自社課題解決のために必要な5つのステップ」についても引用します!実はこの引用している部分も同じことを言い換えておられます。
その場の状況などが変わっても、変わらずに課題解決を繰り返しできるためのスキルとプロセスを徹底的に学んでくださいね!そうすればMBAで学んだことは決して無駄にはならないし、社会や会社を良くすることができますし、人生が豊かになりますよ!と遠藤先生はおっしゃっているのではないでしょうか?

最後に「自社課題解決のために必要な5つのステップ」を引用して終わります。

1、自社のビジネスモデルを理解する。
2、自社の経営課題を抽出する。
3、検討すべき自社課題を選択する。
4、具体的な解決策を検討する。
5、実行可能なアクションプランに落とし込む。

本書は2016年11月発行されました。

近所の森
家の前に咲いていました(グーグルレンズによると「オオキンケイギク」)


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